公開日時 2025年12月17日 05:00
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インタビューに答える田中均元外務審議官
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琉球新報朝刊
―高市早苗首相は、中国が台湾に侵攻する台湾有事は集団的自衛権の行使が可能になる「存立危機事態」になり得ると国会で答弁した。
「あらかじめ特定の地域を想定することは、防衛の範囲を狭めてしまう。歴代政権がつくり上げてきた安全保障体制を脅かすもので、首相の発言は軽率だ。外相や防衛相ポストを経験していれば分かったはずだ」
―中国は強く反発した。
「日本は1972年、中国と国交正常化する際に調印した共同声明で、台湾ではなく中国を唯一の合法政府と認めた。台湾を不可分の領土とする中国の立場を『十分理解し、尊重』するとした。台湾問題は中国にとり最重要課題だ」
「97年に日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定する際、中国に説明に行き、外務省アジア局長だった王毅氏(現外相)と会った。彼らの関心は『台湾は周辺事態の対象に入るのかどうか』。私は『事前にどこが対象だと言えない』と答えた」
―中国は首相答弁の撤回を求めている。
「本来、存立危機事態は特定のケースを想定したものではなく、現実に起きた事態の性格によるため『台湾有事を想定した答弁は誤解を与えたので撤回する』と言えばいい。これで実際の台湾有事に適用ができなくなるわけではない。個別のケースが存立危機事態に当たると言うと、相手を怒らせてしまう。特定の国に向かって『あなたは敵だ』と言うことが、いかにナンセンスな話か」
「米国は実力行使できる力を持っている。力もないのに拳を振り上げた日本は空騒ぎだ。首相は力を持ってから発言してほしい。本当に日本を危うくする」
―11月の共同通信世論調査で、首相答弁を踏まえ、台湾有事での集団的自衛権行使に関し賛否を尋ねたところ「どちらかといえば」を合わせ「賛成」が48・8%、「反対」が44・2%だった。
「首脳は国内世論をつくっていく最大の媒体だ。日本の世論が反中傾向になっている中、そう聞いたら『賛成』と回答する人は多くなるだろう。ただ集団的自衛権を行使すればどうなるか、存立危機事態に十分な知識を持って答えているとは思えない。十分説明せず質問を発するのはメディアの怠慢だと思う」
「客観的に中国を見ようとした途端『媚中(びちゅう)』と言われる。こうした見方は変えていかないといけない。中国のレーダー照射は危険な挑発行為だと思うが、巨大な中国と未来永劫(えいごう)、角を突き合わせていくのか。米国や欧州が自己利益のため中国との関係構築に向かっている時、日本は、どう立ち回っていくのだろう」

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