木更津市に贈呈されたヒョンデのスモールBEV「インスター」

 ヒョンデ(Hyundai Mobility Japan)と木更津市は12月15日、「電気自動車を活用したまちづくり連携協定」の締結式を木更津市役所朝日庁舎で実施した。2026年1月5日に開庁する朝日新庁舎では、スモールBEV(バッテリ電気自動車)「インスター」の贈呈も行なわれ、木更津市は公用車やイベント、災害時の電源などに活用する。

 締結式では、木更津市の企画部長である品川昭和氏が、今回の協定締結について、「ヒョンデさんは国内ではBEVとFCEV(燃料電池車)を中心としたラインアップで、持続可能な未来に向けた価値あるモビリティサービスの提供に取り組むほか、近年は横浜市をはじめ全国の自治体と連携し、災害時の電力供給から公共交通の脱炭素化など、地域の課題解決にも取り組まれています。そして木更津市が掲げる“オーガニックなまちづくり”と、ヒョンデさんが推進する持続可能な未来やゼロエミッション車の普及という理念に対して相互に賛同し、今後は連携しながら取り組みを進めようと協定を締結する運びとなりました」と今回の経緯を紹介。

今回の締結式の経緯を説明する木更津市 企画部長 品川昭和氏ヒョンデ(Hyundai Mobility Japan)の参列者木更津市からは大勢が参列した

 続けて協定締結後の主な取り組みとしては、「協定書に掲げている連携事項に基づき、オーガニックな街づくりの推進。具体的には地域の脱炭素化に向けた公用車のBEV化ならびにBEV普及促進の2つの分野で、相互に連携した取り組みを進めていきます。また、本拠点にヒョンデのスモールBEV“インスター”を1台提供していただき、平常時には市の公用車として使用し、災害時には避難所や災害対策本部における非常用電源として活用するなど、今後もますます相互の連携を強化しつつ、安全で持続可能なオーガニックなまちづくりを推進していきます」と締めくくった。

 なお、木更津市 資産管理部長の兵頭雅宏氏によると、木更津市の公用車は2025年4月時点で65台あり、うち8台がBEV。今後は毎年4台ペースで残りの公用車もBEVに入れ替えていく計画だという。

締結式ではお互いに協定書に署名を行ない、協定が締結されたインスター(目録)の寄贈も実施

 続いて、ヒョンデ モビリティ ジャパン代表取締役社長である七五三木敏幸氏は、「木更津市でいろいろな形でヒョンデのインスターを使っていただけると思うと、夢の広がる本当に素晴らしい協定だと考えています」とあいさつ。また、ヒョンデが一度日本市場から撤退していることをお詫びしつつ、「販売面ではまだ大きなプレゼンス(存在感)を見せられていませんが、日本の皆さんにヒョンデのクルマを理解していただき、使っていただくことで、結果的にカーボンニュートラル実現という点で、日本や日本のユーザーさんに貢献していくという観点で活動していますので、今回の素晴らしいまちづくりをしている木更津市と一緒に市民の皆さんに貢献できる。日本の皆さまのために貢献し、仲間の1人として迎え入れていただきたいというのが、大きな目標です」と締めくくった。

ヒョンデ モビリティ ジャパン代表取締役社長 七五三木敏幸氏。12月13日が誕生日だったことから、締結式の冒頭では木更津市からお祝いのコメントが寄せられた

 また、今回インスターを寄贈した理由は、「公共交通のバスも考えましたが、現状で日本に導入しているバスは一番小さくても全長9mで、木更津市では10人~11人乗りのバスがちょうどいいと考えていましたが、まだ日本に導入されていないため、今回は日本の道路や立体駐車場など、コンパクトで取りまわしがよく制約がない、どこでも使いやすいといった理由からインスターを選びました」と説明。

 加えて、神奈川県横浜市、愛知県豊橋市、富山県舟橋村、滋賀県大津市・栗東市、鹿児島県屋久島町と、これまでに6市町村との協定を結んできた結果、「カーボンニュートラルに貢献するのと同時に、限界地域への乗り合い車両や地域の足として使ってもらえていること、また市町村との意見交換や困りごとのヒアリングができるようになったことで解決策を提案できるなど手応えを得ている」と話した。

2026年1月5日に開庁する木更津市 朝日新庁舎の駐車場で贈呈寄贈記念撮影も行なわれた

 木更津市は、2016年12月に「木更津市人と自然が調和した持続可能なまちづくりの推進に関する条例」、通称「オーガニックなまちづくり条例」を施行するとともに、地域社会を構成する多様な主体が一体となり、市民のチャレンジが育まれ、人・もの・文化が循環する自立した地域づくりを推進し、共生と循環で地域が円熟する中で、木更津らしい豊かさの確立に向けた各施策を重点的に推進すべく「オーガニックなまちづくりアクションプラン」を策定。第1期、第2期を経て、2024年度からは「第3期オーガニックなまちづくりアクションプラン」が始まっている。

木更津市 渡辺芳邦市長

 木更津市の渡辺芳邦市長は、「木更津発の脱炭素プロジェクト、災害対策プロジェクトなど、対応が複雑化する地域課題に柔軟に対応していくほか、公用車への電気自動車導入は、温室効果ガスの排出削減に直結するだけでなく、市民の皆さまの啓発にもつながる取り組みの1つです。また、避難所などでの電源としての活用もありますが、木更津市が主催する屋外イベントではほぼ電気自動車を活用し、これからはインスターも前面的に目立つところに置いていきたいと考えています」と締めくくった。

 また、木更津市の充電インフラの現状について渡辺市長は、「まだ遅れているが民間企業と協定を結んでいるので、少しずつだが前に進めていきたい」との展望を語った。

記念撮影後には朝日新庁舎の駐車場で試乗会が行なわれ、市長や副市長がインスターの走りを体感していた屋上駐車場へのスロープでパワフルな走りを確認していた

 ヒョンデの今後の展開として七五三木社長は、「最終的には、どこでも見られて、乗られて、30分~1時間以内で行ける場所に整備拠点があるように整備したい。まずはショッピングモールなどに試乗拠点を構えるのが理想的」とビジョンを示していた。

木更津市長の試乗の様子

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