高知県内有数のコメどころ、四万十町・窪川地区です。
■ON
「精米した方がこちらです。この中に、白いのが見えてるでしょ。これが香り。香り米」
竹内正文さん(80歳)は、約2ヘクタールの田んぼでコメを作っています。この地域で生産されるコメは、「仁井田米」のブランドで親しまれ、甘味と香りが強く日本一の評価を得たこともあります。
■インタ 竹内さん
Qことし一年は?「やっぱり厳しかった。コメの騒動で色々話を聞いて、値段の事もあり、先が全然読めてない状態」
日本の食卓に欠かせないコメ。2024年の夏から価格が高騰し、2025年まで続く「令和のコメ騒動」が起きました。
■ 消費者2人
「高いなと思いますね。うかつに手が出せないというか」「びっくりしますよね。ごはんが無いとお腹が持ちません」
全国のスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格は、2025年3月に4000円台となり、2024年の同じ時期の2倍の水準になりました。
高騰の要因は、主な産地である東北地方や新潟で高温障害による不作が続き、品薄になったためです。
コメ不足で、2024年秋以降の新米の取り引きも早まり品薄の状態が長引きました。
急激な値上げに、竹内さんは、消費者のコメ離れを懸念して、取引する業者に苦言を呈したといいます。
■インタ 竹内さん
「こんな値段は、消費者が絶対いつまでも続く単価じゃないということ、私は業者に直接自分の方から言いました。生産者の方が。あんまり値段が高すぎるもんで」
国は、コメの流通を増やして価格を抑えるため、コメの不作や災害時に備えてためていた「備蓄米」の放出を始めます。
■林記者
「開店前から、店の入り口には、備蓄米を買い求める人で、長い列ができています」
6月から、県内でも本格的に備蓄米の店頭販売が始まりました。5キロあたりの販売価格は、税込みで2160円。一般のコメの半分の価格です。
消費者はようやく安いコメを手に入れる機会ができました。
■インタ 購入客2人
「救世主、とりあえず救世主」「(一般のコメの)値段も前みたいな値段ぐらいで買えれたら、一番良いですけどね」
備蓄米の供給が全国的に広まり、コメの平均販売価格は、3000円台まで下がりました。
一方で、竹内さんなどコメの生産者は、機材や肥料などの高騰に頭を悩ませてきました。このコンバインは、竹内さんが6年前に購入した時と比べて、50万円以上、値上がりしたといいます。
■ON 竹内さん
「もうすでにことしの秋の収入は、ほとんどここへ入ってます、メンテナンスに。もう、新しいのをよう買い替えていかんけん、やっぱり大事に、大事にして使うしかないんでねえ」
物価高によるコストの上昇と手ごろな価格を求める消費者との間で翻弄されてきたコメの生産者。竹内さんは、厳しい現実に憤りを隠せません。
■インタ 竹内さん
「私らコメ作りにしてみれば、一生懸命汗水たらして、こうして作った良いコメがそこそこな値段でしか売れない。これじゃ、とても採算がたたん。肥料代もない。機械代も払えん。もう、辞めようか。結局、答えはそれじゃないですか。そうなってくると、狭い日本の国で、この農業をする人がどんどん減っていって、これは、日本はかつえますよ」
コメの価格や生産者への対策は、2025年夏の参議院選挙の大きな争点になりました。備蓄米の流通を積極的に推し進めた当時の小泉進次郎農林水産大臣は―。
■ON 小泉農水相(当時)
「生産者、消費者ともに安心して、コメを作れる、買える環境を実現しています」
8月、当時の石破政権は、国が長年続けてきたコメの減産を止めて、増産に切り替えることを表明。農林水産省は、2025年に収穫される主食用のコメの量は、718万トンで2024年と比べて66万トン増える見通しを示しています。一方、備蓄米が放出され、3000円台だったコメの価格は、新米が出回り始めた8月以降に再び上がり、4000円台に戻ります。現在、スーパーで販売されるコメの平均価格は4321円で2025年で2番目に高い水準です。
JAなどの集荷業者と卸売業者の間での玄米60キロあたりの新米の取引価格が3万円を超え、前の年と比べて1万円以上高いことが背景にあります。
石破政権にかわって10月に発足した高市政権は、物価高対策やコメの消費を促そうと「おこめ券」の配布を打ち出しました。政府は、自治体に交付金を出し、「おこめ券」の配布を進めようとしていますが、コストの悪さなどから批判の声が出ています。
竹内さんは、政府に対し「おこめ券」にお金をかけるより、生産者の支援を手厚くしてほしいと訴えます。
■インタ 竹内さん
「(おこめ券は)意味がないと思う、生産者には。ただコメが高い高いという評価ばかりじゃなくて、今はすでに何もかもが高い。農家を生かすために、(補償などで)3年なり4年なり税金を払う必要がない。農家がやっとありついた頃に、ちゃんとした支払いができるような経営をやらしてもらいたい」
また、高市政権は、前の石破政権が進めていたコメの増産路線を見直し「需要に応じた生産」へと修正する方針を示しています。コメをめぐり二転三転する政府に竹内さんは、怒りや不安を隠せません。
■インタ 竹内さん
「この間、こんな言うたことが、はや、手のひら返したように話が変わる。なかなかそれほど振り回されては農家がついていかんと思う。(生産者としては)高く売れたことにこしたことはない。それはありがたいけど、消費者が食べてもらわんと、(コメが)たまったから、また値を下げる。そうすると、もう農家に負担がくるようになる。どの単価で(生産者と消費者の)両方がうまくいくかいうものが分からん」
生産者と消費者が、ともに納得ができる価格に落ち着くのはいつになるのか。コメの動きに翻弄されたまま年の瀬を迎えようとしています。

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