公開日時 2025年12月14日 05:00

沖縄 対立前線、負担増も 首相「存立危機」発言 高まる日中緊張 衝突回避、相互通報重要に
11月7日の衆院予算委で答弁する高市首相。「台湾有事は存立危機事態になり得る」とした

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琉球新報朝刊

 高市早苗首相の「台湾有事は存立危機事態になり得る」との発言を発端に、日中間の緊張が高まっている。中国軍機による航空自衛隊機へのレーダー照射問題にまで発展し、この間、双方が主張の正当性を内外に訴える応酬を繰り返すなど泥沼化の様相を呈する。中国国内では沖縄の「帰属問題」も持ち上がる。沖縄の地政学的な宿命か。観光などの経済面や文化交流への影響が広がる中、政治面への拡大も懸念される。
 レーダー照射問題は6日に発生した。沖縄本島南東の公海上空で、中国海軍の空母から発艦した戦闘機が二度にわたって航空自衛隊の戦闘機にレーダー照射を実施した。
 11日の衆院安全保障委員会で小泉進次郎防衛相は航空自衛隊は領空侵犯の恐れがある場合に「緊急発進している」と説明。中国の戦闘機が発艦した場所は沖縄本島、北大東、南大東などがあることから領空侵犯措置を実施したことは「当然のことだ」と強調した。
 この間にも事前連絡の有無など、情報発信の在り方を巡って、批判の応酬が続いた。
 安保委で質問した屋良朝博氏(立民)は「情報戦をやっている。全体像が把握できない。偶発的な衝突や不毛な情報戦を防ぐ必要がある」と提起した。
 政府関係者らも認識を誤らせたり、分断をあおったりする「認知戦になっている」と指摘し、中国共産党系の国際紙「環球時報」が11月に沖縄の日本への帰属について「論争が絶えず存在している」とする社説を掲載したことも、その一環とみる。関係者の1人は帰属問題の論調を「簡単に放っておけない」と警鐘を鳴らし、地理的、歴史的背景から沖縄への余波を危惧する。
 南西地域の防衛体制強化が叫ばれる中、中国側が訓練を活発化させるなど、さらに日中間の緊張が高まれば、対立の前線に立たされる沖縄の負担感が増すことは必至だ。
 一方、レーダー照射問題を巡っては、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を回避するため、防衛当局幹部間のホットライン(専用回線)が機能しなかったことも事態を悪化させた一因になっている。
 衆院安保委で沖縄近海での事案が頻発する可能性を指摘した屋良氏は、2018年に運用を開始したホットラインを含む相互通報体制「海空連絡メカニズム」について具体的なルール作りの必要性に言及した。小泉氏も「海空連絡メカニズム」は相互の信頼醸成や不測事態の回避を図る上で「大きな意義を有している」と語っており、今回の事態を受け、実効性のある運用ができるよう働き掛けていくことも重要になっている。(謝花史哲)

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