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普段、日常生活のなかで政治の影響を感じることはほとんどありませんが、今年はラーメン雷神の運営を通じて、政治の動きが外食の現場にどれほど影響するのかを強く実感する一年になりました。ふり返ってみると、外食産業全体が政治や外交の動きと密接にからんでいたように思います。そこで今回は、政治がどのように飲食に影響をもたらしたかをたどりながら、2025年をふり返ってみます。

今年は、昨年からつづいた連邦政府による外食の税金免除、いわゆるTax Holidayから始まりました。外食のGST/HSTがまるごと消えるという珍しい政策で、売り上げを押し上げ、雇用を増やし、倒産件数も抑制されました。その一方で、外食は贅沢なのか、それとも忙しい現代人を支える生活インフラなのかという、外食の役割そのものを問い直すきっかけにもなりました。

ラーメン雷神が、誰に対して、どんな価値をいくらで提供しているのかを見つめる上では、とても示唆に富んだ政策だったと思います。

年初の予測では、外食市場は3〜4パーセント程度の成長と言われていましたが、実際には5パーセントを上回る伸びとなりました。この予想外な成長の背景には、やはり政治と外交があります。

トランプ関税を巡る緊張や心情的な反発、そして為替の変動が重なり、カナダからアメリカへの旅行者は3割近く減り、反対にアメリカからカナダへの旅行者が増えました。国内旅行も増加し、結果として観光地の外食は大きな恩恵を受けたわけですが、店側が特別なことをしたわけではなく、環境がたまたま追い風を作ったと言えるでしょう。

数字だけを見ると景気が良さそうに見えますが、現場の肌感としてはまったく逆で、人件費や保険がじわじわと上がり続け、固定費の壁は以前より高くなりました。
売り上げが伸びても利益が残りにくい構造はむしろ強まったように感じます。

移民政策の引き締めやワーホリ制度の緩和もあり、人材確保も依然として大きな課題です。

さらに、2025年のデータが示す重要な点があります。メニュー価格は3パーセント以上上がったものの、客単価の伸びは2パーセントほどにとどまりました。値上げをしても、その分がそのまま売り上げアップにつながるわけではなく、ドリンクやサイドを減らすなどして、お客さんの側で単価が調整されているのです。

これを見ると、価格を上げれば売り上げが伸びる段階は終わりつつあり、むしろ上げた分だけ頻度やボリュームが削られる段階に入ったと言えます。

飲食店を運営していると、どうしても原価高騰をそのまま価格に転嫁したくなりますが、そうすると市場の需要がついてきません。結局のところ、価格は原価から逆算して決まるものではなく、市場の需要と供給のバランスで決まります。原価を抑える企業努力があるからこそ、価格を戦略的に抑え、客数を増やして売上をつくるという打ち手が取れるわけです。

今年は、ラーメン雷神がアメリカや中国に種をまいた年でもありましたが、やはり為替の変動や文化の違い、そして政治的な緊張を強く感じた一年でした。これについては、また別の機会にあらためて報告したいと思います。

2026年は、外食市場の成長率1~2パーセント程度に減速すると予測され、物価高や可処分所得の圧迫から、すでに半数以上の人たちが外食やテイクアウト、デリバリーの頻度を減らしており、この傾向は続いていくと言われています。だからこそ、政治の動きに期待するのではなく、自分たちはどんな価値をつくり、どこを目指すのか。その原点にもう一度立ち返る1年になるのだと思います。

「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史
ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営のことや子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。

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