2025年12月9日 午前7時30分

 【論説】杉本達治氏が知事を辞職し、知事選の日程が1月8日告示、25日投開票に決まった。杉本氏のセクハラ問題は、特別調査委員の報告書公表前ではあるが、県会が全会一致で辞職に同意した。福井県で不祥事による任期途中の知事辞職は、1947年に公選制となって以降で初めてだった。

 知事の辞意表明以降、何があったのか県外などで質問を重ねられたり、心配の声をかけられたりした県民も多いはずで、残念な事態である。杉本氏が送ったという不適切な内容のテキストメッセージは一切公表されていない。返答に窮した人もいるだろう。

 杉本氏が初当選から6年半あまり重ねてきた業績には、福井の今後をこれからも託したいと感じていた県民は少なくなかったはずだ。コロナ禍の対応では危機管理の手腕を発揮し、北陸新幹線整備では県外に対して福井の主張を堂々と、そして理路整然と訴えて存在感を発揮した。地域に短期滞在したり、SNSを使ったりして、県政を身近で親しめるものにしようと努めてもいた。

 だからこそ、突然の退場に不満を募らせる人はいるはずだ。「知事が辞めたけど、何があったのかさっぱり分かっていない」。今はそうとしか言えない県民の戸惑いに杉本氏は思いを致すべきだ。

 知事不在の中で開かれている12月県会は、極めて重要だ。年明けの2月県会では来年度予算を決めなければならない。そのために今は施策を交通整理すべき時期だ。新幹線やアリーナ整備、使用済み核燃料の県外搬出などといった重要課題はもちろん、これから加速する少子化・人口減社会への備えはひとときもゆるがせにできない。一瞬の無為が10年、20年後に大きな差を生むことがあるからだ。知事不在という異常事態を乗り越えるため、県議、理事者の双方が建設的な議論に努めなければならない。

 新しい知事にゆだねなければならない案件はあるにせよ、決して諸問題を先送りせず、県政の政治空白を最小限にとどめる努力をしてもらいたい。理事者はもちろんだが福井を背負う議会人にとっても今は正念場だ。

 福井全体を見渡した未来への有意義な提案を、議会がどれだけ提示できるか。理事者側は「今は判断できない」と逃げを打たずに、どれだけ議会からの提案に刮目(かつもく)し、新たなリーダーが決まるまでに議論を整理しておけるか。やるべきこと、やれることはたくさんあるはずだ。厳しい局面ではあるが、議会の存在価値を改めて実感させてくれるような、そんな12月県会になれば、知事不在という事態にも意味はあったことにできるのではないか。

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