パリ(CNN) 20日間で、213ページ。
フランスのニコラ・サルコジ元大統領が、パリのサンテ刑務所での獄中生活を綴(つづ)った新著を発表した。刑務所で過ごした24時間ごとに10ページ以上の分量を書き上げた計算になる。
「(刑務所は)ビジネスホテルと言っても差し支えないかもしれない。覗(のぞ)き穴付きの装甲扉さえ目に入れなければ」。10日に発売された新著「Le Journal d’un Prisonnier(囚人の日記)」の中で、サルコジ氏はそう回想している。発売日は先月10日の釈放からちょうど1カ月後に当たる。
サルコジ氏の記述によれば、刑務所は「地獄」だった。同氏は2007年の大統領選をめぐり、リビアから資金提供を受ける計画に関与したとして有罪判決を受けた。当該の著書には世間の強い関心と注目が集まっている。
サルコジ氏は禁錮5年の判決を受けたが、11月に控訴審を待つ間の釈放が認められた。
収監中、窓からの景色はプラスチックのパネルで遮られ、空を見ることも天気を知ることもできなかったという。夜になると、刑務所構内に響き渡る他の受刑者の野次(やじ)に悩まされた。ある夜などは、近くの監房に受刑者が火を放ったことで目が覚めたと記す。
過酷な日々
獄中生活は、フランスの国家元首として07年から12年まで享受していた贅沢(ぜいたく)とは程遠いものだった。
「ベッドメイキングもされていないベッドに腰掛けてみて、衝撃を受けた。軍隊にいた時でさえ、マットレスをこれほど硬く感じたことはなかった。テーブルの方がまだ柔らかいだろう」と、サルコジ氏。それでも、18の独房からなるいわゆるVIP棟の他の受刑者と同様、専用のテレビやシャワー、冷蔵庫、調理コンロは使用可能だった。

サルコジ氏の新著「Le Journal d’un Prisonnier(囚人の日記)」の表紙/Gonzalo Fuentes/Reuters
獄中では、元同僚で現法相のジェラール・ダルマナン氏が面会に訪れ、フランス国内の多くの人々から厳しい非難を浴びた。本書によると、各国首脳や大使からもメッセージや支援の電話が届いたという。
サルコジ氏は少なくとも1日置きに家族と面会しているが、刑務所内のいわゆるVIP棟や隔離棟の受刑者の生活は、これとかけ離れていた。「誰も彼らに会わない。面会者は皆無だ」と、同氏は書いている。
再生
サルコジ氏にとって、新著は自身のイメージを浄化する試みに他ならない。
著書の中では、刑務所に入る数日前に10代の癌(がん)患者をサッカーの試合に連れて行ったことや、レストランで拍手喝采を受けたことを詳細に描写している。サッカーファンからは支持を表明され、刑務所への護送の際には人々が街路に並んで見送ったと振り返る。大統領選挙の夜にも、群衆による同様の応援を受けたという。
刑務所職員は、サルコジ氏の支持者からの郵送物に圧倒された。中身は聖書が20冊、受賞歴のある同じ小説30冊など。手紙は毎日何百通も届いた。「大統領の任期中にも、これほど多くの手紙を受け取ったことはない」(サルコジ氏)
受刑者としての日々を過度にドラマ化しているのではないかと疑う向きもあるかもしれないが、本書の冒頭には「これは小説ではない」との警告文が記されている。

読者が購入した自身の著書にサインするサルコジ氏/Bertrand Guay/AFP/Getty Images
大統領への有罪判決
自ら無実を主張するサルコジ氏は著書の半章を費やし、最終的な有罪判決につながったジャーナリストによる調査を非難している。同氏は現代の政治指導者の中で受刑者として刑務所の生活を経験した数少ない一人だ。
驚くべきことにサルコジ氏は、同じサンテ刑務所の元受刑者で、フランスにおける不当な迫害の象徴であるアルフレッド・ドレフュスに自身をなぞらえている。悪しき反ユダヤ主義の犠牲者となったドレフュスに対し、フランスは後にその不当な扱いを覆そうと試みた。
毎週日曜日に行われる刑務所の聖職者による訪問は、サルコジ氏の20日間の獄中生活における節目となっている。同氏は独房に持ち込んだイエス・キリストの伝記に励まされ、信仰を再び燃え上がらせたと公言。伝説の脱獄者を描いた「モンテ・クリスト伯」の2巻も持参していたと明かした。
獄中での日々に心を動かされたことは疑いがないようだ。職員による心遣いや房内での単調な現実による影響、家族と引き離される心の痛みもはっきりと見て取れる。失ったものすべてに対して改めて感謝の念を抱く様子も描かれる。「サンテ刑務所で、私は人生の再出発を果たした」と、同氏は本書を締めくくっている。
しかし、文中で他の受刑者への共感はほとんど見られない。サルコジ氏は他の受刑者から隔離され、職員から多少異なる扱いを受けているという点で、自身を他とは切り離された存在と位置づける。そこには「想像を絶する」境遇にある無実の人間としての比喩も含まれる。
「私は国家元首として(刑務所に)入った。そして、同じ地位でそこを後にした」と、サルコジ氏は本書の最終ページに記している。入獄時にも釈放時にも現場に押し寄せた警察、メディア、支持者たちの群れを回想しながら。
実際の状況はもう少し厳しいものだった。サルコジ氏は有罪判決を受けた受刑者として入獄し、同じ地位で出所した。

WACOCA: People, Life, Style.