
乾燥させているオオイチョウダケを見せる住職
秋は収穫の季節。奈良県桜井市の音羽山観音寺にも、秋の味覚は届いているようです。
11月初旬のこの日。住職が仕事場にもしている台所には、天井から柿が並んでつられていました。
「天気が良くて、風が当たらないとダメなのよ」と後藤住職。
台所には、暖炉の風を部屋に送るため、壁に扇風機が付けられています。その風がちょうど柿に当たっており、ここが一番干し柿を作るのに良い場所なのでしょう。棚もあり、いろいろな干し野菜もここで作られているようです。
「柿はこの間もらったのよ。果実酒用のブランデーに漬けて、干したの。表面が乾燥してきたら、もむのよ」
もむことで、色が赤くなったり、渋がなくなって甘みが出てくるそうです。2週間ほどして表面が固くなってきたら、もう一度もむとのこと。
「干し過ぎると硬くなって食べられないしね。ちょうど良い時に粉が吹いてきたら冷凍するの」
食べごろの見極めが難しいですね。
もう一つ、乾燥中の秋の味覚を見せてもらいました。
「オオイチョウダケよ。寺に生えているキノコの中で、唯一取って食べているの」
この日も、参道でいろいろなキノコを見ましたが、境内には食べられるキノコもあるようです。7〜25cmぐらいのカサができる大きなオオイチョウダケが、大きなザルいっぱいに乾かされていました。
乾燥させたオオイチョウダケを、洗って裂いて、酒と薄口しょうゆでたいて冷凍しておけば、混ぜご飯にしたり、他の具と合わせてたき直して使うこともできるそうです。
「この間お客さんがあった時、オオイチョウダケとギンナンのたき合わせを作ったわ」
ほかに、シイタケやミョウガを使った精進柿の葉寿司や、柿とギンナンの白和えも作ったとのこと。まさに、観音寺の秋を感じられるメニューですね。
「ギンナンとムカゴのご飯も作ったのよ」
ムカゴとは、ヤマノイモの葉の根本にできる実のようなもののこと。前回の取材の時、あやうく刈られそうになっていたムカゴです。
「前は横にナンテンの木があって、そこに巻きついていたのよ。その横にあるハスの日当たりが悪くなったから、思い切ってナンテンを切ったのよ。そうしたらムカゴがハスに巻きつきだしちゃて」
そのため、巻きつく場所として、パイプを用意したそうです。そうすると……。
「いろんな草が巻きついてくるのよ。ヘクソカズラやアマチャヅルが」
住職の庭では、激しい生存競争があちらこちらで行われています。
音羽山観音寺
山の中にある尼寺。奈良県桜井市南音羽。
JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。
火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門

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