コラム:ロシア産原油の海上輸送禁止、G7提案に問われる実効性

写真は2022年12月、ナホトカ港に停泊中の石油タンカー(2025年 ロイター/Tatiana Meel)

[ロンドン 5日 ロイター] – ロシア産原油の船舶による輸送を全面的に禁止するという主要7カ国(G7)の提案は、西側諸国とロシアの経済的対立を一段と激化させる。ただその最終的な効果が発揮されるかどうかは、各国政府が違反者への処罰をどこまで厳しくするか次第になるだろう。

またロシアのプーチン大統領がインドや中国を含めた同盟相手との連携強化を余念なく進めている以上、西側には迅速な行動が必要になるかもしれない。

G7と欧州連合(EU)は、ロシア産原油の海上輸送を完全に禁止し、ロシアが多数のタンカーを入手する道を制限する計画を協議している、とロイターが5日報じた。

来年早々にも実施される可能性があるこの取り組みは、2022年にG7が導入したロシア産原油の価格上限制度に終止符を打つ形になる。上限制度は、ロシア産原油の買い手の購入価格がこの上限未満の場合に限り、西側の船舶と保険が利用できる仕組みで、世界全体の石油供給を守りながら、ロシアのウクライナ侵攻に伴う費用に充当される石油収入を抑制する狙いがある。

国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、ロシアの10月の石油生産は日量約930万バレルと世界の供給量の9%前後だった。

そしてG7各国は今、ロシアの原油輸出により大きな痛手を与えようとしているが、今回の提案が輸出をストップさせることを意味するわけではない。

ロシアの生産者は近年、西側の金融システムや制裁措置を効果的にすり抜ける幾つかの方法を編み出してきた。特に有名なのはいわゆる「影の船団」だ。

10月にロシアから輸出された原油のうちG7の規制を守っているタンカーで輸送されたのは38%にとどまったことが、独立系非営利研究機関CREAのデータから分かる。

影の船団を拡充し、G7の新たな制裁で生じる輸送能力を補うことは可能に見える。ロシアとそのパートナーは、西側の海運会社からも含めて購入できる老朽船は数多く存在するからだ。

そこで西側はどう対応するかはなお未知数の部分が大きい。

Russia's seaborne crude oil exportsRussia’s seaborne crude oil exports

<価格上限撤廃の影響>

ロシア産原油の買い手は極めて限られている。ケプラーの分析では、今年これまでに海上輸送された日量350万バレル前後の9割強は中国、インド、トルコ向けだった。

問題はそうした国がG7の新たな制裁下でも購入を続けるかになるが、答えは恐らく「イエス」で、しかも適正価格での購入になるだろう。

ロシア産原油の買い手にとってリスクが高い分、売り手側は国際価格よりも安い価格で販売する必要があり、影の船団運用に伴う海上での積み荷受け渡しなど複雑な手続きも強いられる。

こうした事態は既に現在の価格上限制度において現実化している。

ところが価格上限を撤廃すると、ロシア産原油の買い手にとって計算が単純化され、最終的には原油の取引価格が上昇した場合、ロシア側の値引き幅が縮小することが起こり得る。

<続く輸入>

だからG7の新たな提案に実効性を持たせるには、西側各国政府がこの制裁を積極的に遂行していかなければならない。

しかしそれが疑わしい理由もある。

西側政府は最近数カ月、ロシアへの経済的圧力を強め、複数のG7諸国は9月、上限価格を1バレル=60ドルから47.60ドルに引き下げた。

EUもロシア産原油の精製品輸入を来年初めから禁止し、27年までかけてロシア産天然ガス輸入を段階的にゼロにしていくことに合意した。

10月にトランプ米大統領は、ロシアの石油最大手ロスネフチとルクオイル2社に包括的な制裁を発動したほか、それ以前にロシア産原油を購入しているインドに25%の関税を課した。

ただこれら全ての措置にもかかわらず、ロシア産原油輸出はほぼ安定的なペースで推移し、インドと中国の輸入は減少しつつも続いている。

ケプラーによると、インドは今年1-10月で平均日量175万バレルのロシア産原油を輸入しており、11月と12月は138万バレル輸入する見通しだ。

中国の輸入トレンドもほぼ同様だ。

Russian crude oil seaborne exportsRussian crude oil seaborne exports

<痛みに耐えられるか>

西側がどこまで厳格に制裁を実行できるかは、ロシア産原油供給縮小を通じて国際価格が押し上げられる、あるいはロシア産原油の買い手が報復措置を講じることによって受ける痛みにどれだけ耐えられるか次第になるだろう。

CREAのエネルギー分析チームを率いるアイザック・レビー氏は、ロシア産原油の大半が既に米国の制裁対象で、価格上限制度は事実上意味をなしていない以上、今回のG7の提案は「適切なアプローチ」だと評価する。

ただレビー氏の見方では、この新しい制裁が効果を発揮するのは、バルト海や北欧などロシア産原油の輸送経路にある諸国が、制裁違反タンカーの臨検や拿捕を強化した場合のみになる。

「現状では抑止行動や船舶の拿捕は十分に行われていらず、違反船が拿捕されるまではロシア産原油の取引は続く」という。

ロシア政府の収入の約4分の1を占める石油業界への締め付けをG7が厳格化すれば、ロシアの石油収入減少につながる公算は大きい。

とはいえ時間の経過に伴って、この対決における西側の影響力は失われていく様相に見える。西側がインドにロシアとの関係を縮小するよう迫っている中で、プーチン氏とインドのモディ首相は5日、石油と防衛の分野以外にも協力を拡大することに合意した。

こうした状況を本当に転換するには、米国が主導する西側がある程度の金銭的な痛みを甘受していく必要もあり、そこがいずれは難題になってもおかしくない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

Ron Bousso

Ron is the Reuters Energy Columnist. He offers commentary on global energy markets and their intersection with geopolitics, the economy and every day life. From oil and gas to solar and wind power, the world’s growing demand for energy is shaping governments’ efforts to expand their economies while the world also seeks to decarbonize.
Prior to that, Ron was Oil and Gas Corporates Correspondent at Reuters since 2014, covering the world’s top oil and gas companies and their transition into low carbon energy. He has broken major stories on companies including Shell, BP, Chevron and Exxon. He also looks at the physical oil markets with a focus on European refining.

WACOCA: People, Life, Style.