

今年に入り、カナダ中央銀行(Bank of Canada)は段階的な利下げを実施し、政策金利は10月末時点で2.25%まで下がりました。これは1年前の5.0%という高水準から見ると、過去10年でも珍しいほどの利下げスピードです。
この利下げは、住宅ローンを組む方にとっては大きな朗報です。例えば、変動金利で50万ドルのローンを借りている場合、返済期間にもよりますが、昨年より月々の返済が600ドル程度少なくなっているケースもあり、家計にゆとりが生まれたという方もいらっしゃると思います。
一方で、9月の消費者物価指数(CPI)は前年比+2.4%と、中央銀行の目標とする2%に近づきつつあるものの、食料品や家賃など、日々の生活コストは依然として高いままです。
これは、「ディスインフレーション」と呼ばれる現象によるものです。ディスインフレーションとは、物価が下がったわけではなく、物価の「上昇ペースが鈍化している」状態を指します。以前よりは値上がりの勢いが衰えたものの、価格水準そのものは高いため、私たちの購買力が回復するまでには時間を要します。企業のコスト構造や賃金上昇などの影響が時間差で家計に届くため、政策金利の効果が実感として現れるには、タイムラグが生じるのです。
低金利と高コストが共存している今、大切なこと

カナダ中銀(Bank of Canada)がインフレ率を2%前後に抑えようとするのは、物価の安定が、住宅ローンの返済や貯蓄、資産運用など、私たちの長期的な家計計画に安心感をもたらすためです。現在のカナダ経済は、低金利で借りやすくなった一方、生活コストは高止まりしているという、少し歪んだバランスにあります。
この状況で大切なのは、家計全体を冷静に見直すことです。預金やGICの利回りは低下傾向にありますが、この低金利期は、長期的なリターンを目指す資産づくりの「仕込み時」でもあります。「借りる・貯める・増やす」のバランスを意識しながら、短期的な変動に左右されず、長期的な視点で安定したプランを立てることが家計戦略のカギとなります。物価や金利が落ち着くと見込まれる2026年に向けて、今こそ土台を整える時期といえるでしょう。

泉 亜矢子 (Ayako Izumi)
オンタリオ州認定ファイナンシャル・アドバイザー。個人・法人向けに資産形成・保護・継承までを見据えたトータルプランニングを提供している。
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