高市首相の台湾有事発言は「極めて危険」「憲法にも反する」、有識者らが撤回求める緊急声明
会見の様子(2025年12月8日、弁護士ドットコム撮影)

2025年12月08日 17時34分

台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁について「従来の政府見解と異なり、憲法や国際法に違反する」などとして、学者や元政府高官、弁護士らが12月8日、東京都千代田区の参院議員会見で記者会見を開き、発言の撤回を求める声明を発表した。

●日中関係の緊張が高まっている

高市首相は今年11月、台湾有事の際に集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に該当し得ると国会で述べ、国内外に波紋が広がっている。

中国側は日本への渡航自粛や海産物輸入停止などの対抗措置を打ち出すなど、学術・民間交流の停滞も生じはじめている。日中関係は急速に緊張を高めている状況だ。

さらに12月6日には、中国軍戦闘機が沖縄本島南東の公海上空で、対領空侵犯措置中の航空自衛隊F15戦闘機に対して、2度にわたり断続的にレーダー照射を実施したと報じられている。

●「憲法9条や国際法にも違反する」

会見を開いたのは、有識者らでつくる「村山首相談話を継承し発展させる会」。藤田高景理事長が声明文を読み上げ、高市首相の発言を強く批判した。

声明文では、発言が1972年の日中共同声明や歴代政府の立場から逸脱しており、中国からの強い非難を招いていると指摘する。

また、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中国の立場を日本が尊重するとした「日中共同声明」の内容や、ポツダム宣言8項(戦後日本の領土の枠組み)の立場を堅持する必要性を強調。発言は、憲法9条や国際法に照らしても反するとした。

●「高市首相は中国と戦争したいわけではない」

元外務省条約局長の東郷和彦さんは会見で、自衛隊機に対するレーダー照射事件について「日中関係が非常に深刻な状態にあると受け止めなければならない」と分析した。

そのうえで「高市首相は安倍晋三首相でも言わなかったことを発言してしまった。ただし、本気で中国と戦争をしたいわけではないと考えている。外交は武力を使わず、抑止と対話が本義。日本が責任ある国家としてできる戦略を考えていく必要がある」とした。

青山学院大学名誉教授の羽場久美子さん(国際政治学)も「中国と台湾の紛争に、日本が攻撃されていないのに乗り出せば、国際法や憲法に反するということを強調しておきたい。高市首相の発言はきわめて危ないもの」と語った。

●「日中の外交の積み重ねを逸脱する発言」

政治経済学者の植草一秀さんも「日本と中国が過去に積み上げてきた友好関係、あるいは外交文書から逸脱するということは明白」「日本経済や国益を重視する立場からも、過去の外交の積み重ねを逸脱した発言をしたことについて、高市首相は発言を撤回するということが必要だと思う」と述べた。

和光大学名誉教授で、ジャーナリストの竹信三恵子さんは、現在の日本社会が少子高齢化やケア労働の危機など多くの問題を抱えている中で、軍事費増大が生活を圧迫していることに懸念を示した。

一方で、登壇者からは、中国がただちに台湾に対して武力行使する可能性は低いという見方が相次ぎ、高市首相の発言撤回と、日中間の対話を求める声が上がった。

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