(CNN) ウクライナとロシアとの和平案をめぐり、ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、英ロンドンで欧州首脳らと会談する。米国のトランプ大統領が最新の和平案を「ゼレンスキー氏が読んでいない」と批判するなか、ロシアからは米国がこのほど発表した「国家安全保障戦略」を歓迎する声が上がっている。

トランプ氏は7日、米マイアミで行われた米国とウクライナの高官級協議が安保保証や領土問題をめぐる課題を残したまま終わったことを受け、ゼレンスキー氏を批判した。

トランプ氏は「われわれは(ロシアの)プーチン大統領、そして、ゼレンスキー大統領を含むウクライナの指導者と協議してきた。ゼレンスキー大統領がまだ和平案を読んでいないことに、少しがっかりしている。提案は数時間前のものだ」と述べた。

トランプ氏は、ロシアがウクライナ全土の掌握を望んでおり、和平案に「同意」しているとの見方を示す一方で、「ゼレンスキー氏が同意しているかどうかは分からない」と述べた。

ロシアからは、トランプ米政権が提示した国家安全保障戦略を歓迎する声が出ている。今回の安保戦略では、米国は欧州に対してかつてないほど対決的な姿勢を打ち出している。

今回の安保戦略では、従来の政権が用いてきたロシアは脅威とする文言を削除する一方、欧州諸国がロシアについて「存亡の危機」とみなしていると指摘。米国については、「欧州内の安定とロシアとの戦略的安定」の再構築における中心的な仲介者として位置付けている。

ロシアのペスコフ大統領報道官は7日、記者団に対し、米国の安保戦略を称賛するかのように、トランプ氏を強い指導者と呼んだ。

ペスコフ氏は「見られる調整は、多くの点でわれわれの見方と一致していると言える」と述べ、「少なくともウクライナの平和的解決に向けて建設的に協力し続けることが可能だという、ささやかな保証となることを期待できるかもしれない」と言い添えた。

訓練に参加した第25旅団の隊員=ウクライナ東部ドネツク州/Ximena Borrazas/SOPA Images/LightRocket/Getty Images
訓練に参加した第25旅団の隊員=ウクライナ東部ドネツク州/Ximena Borrazas/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

欧州の指導者たちにとって、このタイミングは不安をあおるものだ。米国が和平交渉を主導する一方で、欧州に対する姿勢を硬化させているため、こうした姿勢の転換が重大な局面での交渉に影響を与えるのではないかという懸念が高まっている。

欧州は状況を「精査」

ゼレンスキー氏は8日に英国ロンドンを訪れ、フランスのマクロン大統領、英国のスターマー首相、ドイツのメルツ首相と会談する。

マクロン氏は、欧州首脳が、現状と米国の仲介枠組みの中で進む交渉をともに評価すると述べた。

ウクライナ側によると、米国での協議では、状況の大きな進展は見られなかった。

ウクライナのステファニシナ駐米大使は6日、「困難な課題が依然として残っている」としつつ、両国が現実的で受け入れ可能な解決策を模索していると明らかにしていた。

領土と安全の保証は、いかなる和平案においても長らく最大の争点だ。ウクライナ側は、正義ある戦争終結には信頼できる安全の保証が必要であり、ロシアにさらなる領土割譲を強制されるべきではないとの立場を維持している。

一方、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部ドンバス地方を「いかなる手段を使ってでも」掌握するとの意向を示している。

外交交渉が続く中、ロシアはウクライナ各地に大規模な無人機(ドローン)とミサイルによる攻撃を実施している。地元自治体の発表を基にしたCNNの集計では少なくとも7人が死亡、十数人が負傷した。

ゼレンスキー氏によると、過去1週間でロシアは1600機超の攻撃型ドローンと約1200発の航空誘導爆弾、約70発のミサイルを発射したという。主な標的は「日常生活を支えるインフラ」だったと述べた。

ウクライナのエネルギー省によると、週末、各地のエネルギー施設が攻撃を受け、オデーサ、チェルニヒウ、キーウ、ハルキウ、ドニプロペトロウシク、ミコライウの各州で停電が発生した。7日にはウクライナ全域で計画停電が導入され、首都キーウの市民は約12時間にわたり電気のない生活を強いられた。

ロシア軍の攻撃によって破壊された住宅の前に立つ住民ら=6日、ウクライナ・キーウ郊外/Thomas Peter/Reuters
ロシア軍の攻撃によって破壊された住宅の前に立つ住民ら=6日、ウクライナ・キーウ郊外/Thomas Peter/Reuters

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