ASCII Power Review
第300回
ミラーレスでは味わえない体験ができるカメラです
2025年12月08日 01時00分更新
カメラ好きなら誰もが憧れるライカ。その象徴ともいえるM型がついにEVFを搭載し、新モデル「ライカM EV1」として発売された。
カメラマニアとしては従来の二重合致式レンジファインダーと、どう撮り心地が違うのか興味があるところだ。
ライカから試用機を借りて実写してみたので、その出来栄えを見ていこう。
11月1日に発売され、オンラインストアでのボディー価格は139万7000円。現行モデル「M11-P」は156万2000円なので、少しだけお安い。
今回試用した「ズミルックスM 50mm f/1.4 ASPH.」を装着した状態。やはりアナログ感のあるMマウントレンズはカッコイイ!
レンジファインダがEVFになり軽量化
レバーは「ファーカスピーキング」と「デジタルズーム」
ボディーは従来モデル「M11」系がベースで、サイズもまったく同じ。ただ重量は約46g(バッテリー込み時)軽くなっている。この点がファインダーの光学系か電子式の違いだろうか。
ボディーサイズは139×80×38.5mm。.重量はバッテリー込みで約484g。
なお「M11」ならびに「M11-P」は、トップカバー の素材がブラックボディーはアルミで530g、シルバーボディーは真鍮で640gと重量が異なっていたが、「M EV1」はアルミ製のブラックボディーのみとなっている。
外観の違いでは当然のごとく前面にはファインダー窓は無くなり、上面左のISOダイヤルも省かれている。デザイン的にはレンズ一体型の「ライカQ」シリーズに近く感じる。
上面はISOダイヤルが無くなったこともあり、かなりシンプルな印象。
上面右の操作系。シャッタースピードダイヤルは1/2EVクリックで設定でき、シャッターボタンではケーブルレリーズの使用が可能。ホットシュー脇の製品名も印字ではなく刻印されている。
前面には距離計窓のようなものが残されているが、ここはセルフタイマー時にランプが点灯する。レンジファインダーのデザインを利用したユニークなギミックだ。
なぜ距離計窓があるのか?と思いきや、実はセルフタイマーランプという意外性が面白い。
従来のM型ライカではレンジファインダーのブライトフレームを変更する前面のレバーが、EV1では「FNレバー」となり、初期設定ではレンズ側に倒すと「ファーカスピーキング」、側面側に倒すと「デジタルズーム」が割り当てられている。
前面の「FNレバー」はカスタマイズでファーカスピーキングとデジタルズーム、MFアシストが割り当てられる。
背面の接眼部はアイセンサーや視度補正ダイヤ ルが備えられ、こちらも「ライカQ」シリーズに近い形状。操作系のボタン類や固定式の背面液晶などは変わりない。
背面はファインダー部の形状以外、ボタン配置など「M11」系とまったく同じ。
ファインダーに視度補正を内蔵できたのはM型ライカでは初めて。これもEVF化のメリット。
バッテリーも「M11」系と共通だが、公称撮影可能枚数は約700枚から約237枚に減少。実際の撮影ではRAW+JPEGで日をまたぎつつ288カット576枚撮影時で電池切れ。マニュアルフォーカス機としてはスタミナが少なく感じるが、小型ミラーレス機と同程度である。
バッテリーも「M11」系と変わりなく、レバーをスライドし少し押し込むとロックが外れる方式。
メディアはSDにくわえ、内蔵メモリーも搭載。「M11-P」の256GBよりは減ったが、それでも初代「M11」と同じ64GBの容量がある。
メディアを交換するにはバッテリーを取り外さなければならないのは少し面倒。
SDと内蔵メモリーには同時記録やJPEGとRAWを振り分け記録などが設定することができる。
撮像素子はM11と同じ
精細な解像感がうれしい
撮像素子も6030万画素と変わらず、RAWとJPEGのサイズを個別に変更することができる「トリプルレゾリューション」や、画像をクロップして拡大する「デジタルズーム」も引き続き搭載されている。
RAWでも6030万画素(9528×6328ドット)から3600万画素相当(5272×3498ドット)、1800画素相当(5272×3498ドット)にサイズダウンして記録ができる。データ容量を抑えたいときには有効だ。
「デジタルズーム」時は画面にブライトフレームが表示される。レンジファインダーっぽくて良いのだが、せっかくEVFを搭載したので全画面表示が選択できてもいいのでは。
「デジタルズーム」の倍率は1.3倍と1.8倍が選べる。これは「デジタルズーム」オフ、解像度は9504×6320ドット。
「デジタルズーム」倍率1.3倍、解像度は7680×5104ドット(3900万画素相当)。
「デジタルズーム」倍率1.8倍、解像度は5248×3472ドット(1800万画素相当)
画質も「M11」と同等で、高画素機らしく細部まで精細に解像されている。
遠景では時に精細感が際立つ。ぜひ拡大して細部をチェックして欲しい。使用レンズ「Summilux-M 50mm f/1.4 ASPH.」・絞りF8・シャッタースピード1/750秒・ISO100・ホワイトバランスオート。
またシャープネスやコントラストが強調され、濃厚な色乗りや絞りが開放気味ではあえて周辺光量を減光するなど、独特な雰囲気を持つJPEGの絵作りもそのままだ。
JPEG撮って出しとRAWからAdobeCameraRawでストレート現像した写真の比較。発色や周辺光量減光の違いに注目。使用レンズ「Summilux-M f1.4/28mm ASPH.」・絞りF1.4・シャッタースピード1/16000秒・ISO100・ホワイトバランスオート。
RAWからAdobeCameraRawでストレート現像した写真
ISO感度も変わらずISO64から5万まで設定ができる。6400を超える高感度域ではRAWだと粒のそろったノイズ感なのに、JPEGでは色ノイズで荒れた描写を演出しているのも興味深い。
こちらも感度別に撮影したJPEG撮って出しとRAWからAdobeCameraRawでノイズ処理をせず現像した写真の一部を拡大して比較。画面左上からISO1600・3200・6400・12500・25000・50000。
RAWからAdobeCameraRawでノイズ処理をせず現像した写真
今回試用したレンズその1、「Summilux-M 50mm f/1.4 ASPH.」のブラック。定番のズミクロン(開放F2)より明るい開放F1.4の標準レンズ。ダブルカムユニットの採用でレンジファインダーの測距範囲より短い45cmの近接撮影が可能。オンラインストアでの価格は79万2000円。
絞りF1.4・シャッタースピード1/750・ISO64・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/250・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/100・ISO1000・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/1600・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/350・ISO64・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/180・ISO125・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/125・ISO250・ホワイトバランスオート。
EVFでのマニュアルフォーカス
2つの「MFアシスト」を活用する
EVF化で一番気になるのはやはりマニュアルフォーカスのMマウントレンズによるピント合わせだろう。
EVFは576万ドットで撮影倍率0.76倍とスペック的には高精細なので、焦点距離50mmくらいのレンズなら十分にピントの山はつかめる。ただ28mmなどの広角では少し心許ないことも。
ピント合わせをアシストする機能としては「フォーカスピーキング」と「拡大表示」が搭載されている。
フォーカスピーキングではピントが合った部分の輪郭が強調表示されるので、よりピントの山がつかみやすくなる。初期設定では「FNレバー」でオンオフの切換ができる。
フォーカスピーキングを表示した状態。表示の色(赤・緑・青・白)や感度の高低は設定できる。
「拡大表示」は画面を拡大することでピント合わせやすくするもの。初期設定ではシャッターボタン横の「FN」ボタンに割り当てられ、拡大率は2段階で切り替えられる。
拡大して表示したところ。画面左下には拡大位置が表示される。
拡大する位置は背面液晶でのライブビュー撮影なら画面をタッチすることで即座に移動することができるが、ファインダー撮影時は背面の十字キーで移動することになるので、拡大率を最大にすると少し移動に手間取る感もある。欲を言えば背面液晶をなぞって移動させるタッチパット機能が欲しいところ。
なお拡大位置を中央に戻す機能もあるが、初期設定ではどのボタンにも割り当てられてなく、上面もしくは背面の「FN」ボタンに自分で設定する必要がある。
拡大表示の操作では重宝する「フレームを中央に戻す」機能。なぜ初期設定ではどのボタンにも割り当てなかったのか不思議。
今回試用したレンズその2、「Summilux-M f1.4/28mm ASPH.」。広角でありながら開放F1.4と明るく、広い画角とボケ感が同時に味わえる。オンラインストアでの価格は121万円。
絞りF1.4・シャッタースピード1/2000・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/16000・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/800・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/8000・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/125・ISO800・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/60・ISO400・ホワイトバランスオート。
絞りF1.4・シャッタースピード1/80・ISO400・ホワイトバランスオート。
これらの「MFアシスト」をシーンに合わせ併用すれば、一般的なミラーレス機のマニュアルフォーカスでの撮影と遜色はなく、カメラマニアなら特に困ることは無いだろう。
ただライブビューは実際の絞り値での表示(一眼カメラでいうこところの絞り込み表示)になるので、絞り込んで被写界深度(ピントが合う範囲)が深い状態ではピントの山をつかみにくくなる。
そんなときは開放側でピントを合わせてから絞り値を変更するか、パンフォーカス(被写界深度が深い状態)を活かして目測でピント合わせるなど昔ながらのテクニックを応用するといいだろう。
さらにコツをあげるなら「MFアシスト」の操作系は好みの配置にカスタマイズするのがオススメ。自分の場合はいろいろ試した結果、前面の「FN」レバーに「フォーカスピーキング」と「拡大表示」をまとめて、上面「FN」ボタンに「フレームを中央に戻す」を割り当てるのが一番しっくりきた。
なお「MFアシスト」にはオートという機能もあり、ピントリングを操作すると自動で「拡大表示」される。電子接点を持たないMマウントレンズだが、距離連動機構を利用したM型ライカならではのギミックはお見事。ただいかんせん反応が鈍く、拡大表示されるまでワンテンポ待たされるため実用的には微妙だ。
「MFアシスト」をオートにすると、レンズの距離をボディーに伝えるコロという機構を活用し、レンズの駆動によって自動で「拡大表示」される。
今回試用したレンズその3、「Noctilux-M f1.25/75mm ASPH.」。大口径Mマントレンズに与えられる名称がノクティルックス。その浅いピントを正確に合わせるのにEVFは最適だ。オンラインストアでの価格は223万3000円。
絞りF1.2・シャッタースピード1/8000・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.2・シャッタースピード1/160・ISO64・ホワイトバランスオート。
絞りF1.2・シャッタースピード1/60・ISO400・ホワイトバランスオート。
絞りF1.2・シャッタースピード1/125・ISO80・ホワイトバランスオート。
絞りF1.2・シャッタースピード1/125・ISO1250・ホワイトバランスオート。
絞りF1.2・シャッタースピード1/250・ISO100・ホワイトバランスオート。
絞りF1.2・シャッタースピード1/640・ISO100・ホワイトバランスオート。
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