公開日時 2025年12月07日 05:00更新日時 2025年12月07日 06:11
![]()

来場者からの質問に答える登壇者ら=6日、那覇市の県立博物館・美術館
この記事を書いた人
![]()
中村 万里子
県教育庁文化財課は6日、「沖縄県史ビジュアル版14 沖縄戦」刊行記念シンポジウムを那覇市の県立博物館・美術館で開いた。監修・編集協力者の関東学院大の林博史名誉教授は「この数年の最新の研究成果を盛り込んだ」としつつ、沖縄戦の調査研究は、やり残したさまざまな課題があると指摘。県、市町村、大学を含め、調査研究と人材育成を進めていく必要性を強調した。約200人が参加した。
林さんは、ビジュアル版は故吉浜忍さんが発案したことに触れた上で、具体的な内容を説明した。最新の研究成果として、県の指示で住民が米軍に保護されないよう警察がスパイ摘発をしていたことを紹介。「食料がない北部に避難させられ、米軍に捕まってはいけないとなると餓死しかない。政策的に餓死を強いたことは、住民虐殺とどこが違うのだろうか」と提起した。日本軍陣地があった所の住民の戦没率の高さも明示。「現在で考えても軍隊と民間人がいる所を切り離す必要がある」とした。
今後の課題として、「沖縄戦を生き抜いた人々からもっと学ぶことがある。そこに沖縄の人たちの主体性、生きる力があるし、沖縄にとっても大事だ」と強調。地域と学校の連携で掘り下げる必要性を提起した。80年代に出された那覇市史の編み直しや、平和の礎から漏れている多くの民間人の調査なども挙げた。
地域史の戦争編の編さんに携わった琉球大国際地域創造学部講師の山城彰子さんは「刊行で終わりではなく活用が大事だ」と強調。しかし市町村史の担当者の多くが会計年度任用職員で、1年という不安定な雇用契約や、若手が育たない問題があると指摘した。
恩納村史編さん係の瀬戸隆博さんは、子どもたちが主体的に学ぶことを大事にしているといった平和学習を紹介した。
平和劇「HIMEYURI 伊原第3外科壕の奇跡」を演じる安岡中学校演劇団の生徒ら。右の戦時中の女子学徒が左側の現代の中学生と偶然、交信している場面
安岡中学校の演劇団は平和劇「HIMEYURI 伊原第3外科壕の奇跡」を上演。来場者の中には涙をぬぐう姿も見られた。最後に、来場者からの質問に登壇者らが答えた。SNSの偽情報について、山城さんは「県内のテレビや新聞、県のユーチューブを親子で見て話をすることが大事では」と勧めた。安岡中教諭の又吉弦貴さんも登壇し、沖縄女性史家の宮城晴美さんがコーディネーターを務めた。
(中村万里子)

WACOCA: People, Life, Style.