Issei Kato / Reuters
今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。
高市首相の台湾有事を巡る発言に中国が強く反発し、緊張感が高まっています。今後日本はどう対応するといいでしょうか。入山先生は「中国の牽制に過剰反応せず、粛々と、淡々と対応するのが良い」と話します。
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「学級崩壊」に向かう世界
小倉
高市早苗首相が国会答弁で、「台湾有事が起きた際に、日本が集団的自衛権を行使する可能性」に言及したことで、中国との対立が深まっています。
中国側は経済・外交両面で報復措置を取ったり、訪日客に日本への渡航自粛を促したりと様々な影響が出ていますが、入山先生は一連の動きをどう見ていますか?
メディアでも多様な意見が出ていますが、僕個人としては「粛々と、淡々とやればいい」という考えです。こうしたことは今後も起きますし、オールドメディアが少々煽りすぎているとも感じています。
小倉
メディアの報道によって、我々がいちいち反応する必要はないということでしょうか?
そうですね。これは大きく2つの方向性に分かれてきた国際政治の歴史を紐解くとよく分かります。
一つは「リベラリズム」です。リベラリズムというのは、ジョン・ロックなどの思想を基盤とするもので、すごくざっくり言えば、政府や共通の法執行機関が存在しない自然状態でも「人間はある程度理性的で、対話によって問題を解決できる」という考え方です。
生命や自由、財産は当然守られるべきものですから、対話を通じて仕組みを作り、秩序を保って平和にやっていこうというのが、ざっくりしたリベラリズムの方向です。
一方、リベラリズムの対概念となっているのが、「リアリズム」です。リアリズムは「民主主義思想の始祖」といわれるトマス・ホッブスを理論基盤にしていて、人間や国家は「自分の命を守りたい」という生存本能に基づいて行動するので、相手が攻撃にしてきた時に備えて武力による牽制が必要だという考え方です。
ホッブスは「自分の命を守るために、武器を持って戦う準備をしておくべきだ」と考えますから、彼が見る人間の自然観は「万人の闘争状態」なんです。
小倉
リアリズムは「やらなければ、やられる」と考える。リベラリズムとは真逆で物騒ですね。
はい。ここで重要なのは、覇権安定論です。

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