夏の参院選を境に、主要な社会課題となった「外国人政策」。外国人を排斥するような声が上がる一方、少子高齢化で生産年齢人口が減少の一途をたどる日本社会では外国人への依存度が高まっている。労働力でも、観光でも、外国人がいないと成り立たなくなっている現状のなか、外国人との共生には、どんな施策が必要になるのか。有識者に話を聞いた。(文・写真:ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
毛受敏浩・元日本国際交流センター理事「移民が不可欠な現状」
「国連では、1年以上国外に住んでいる人を移民と言います。日本政府は国内で3カ月以上在留している外国人数を発表しており、その数を移民の近似値とすれば、約400万人がいることになります。人口減少に伴う人手不足により社会は外国人を必要としていて、日本は事実上の移民を受け入れてきたわけです。にもかかわらず、政府は『移民政策は取らない』と主張してきた。ここに矛盾があります」
関西国際大学客員教授で元日本国際交流センター理事の毛受(めんじゅ)敏浩氏は、そう指摘する。
日本の外国人政策は、人口減少が顕在化しはじめた2010年代から本格化した。在留資格は、2010年に「技能実習」(1993年の制度導入時は「研修」「特定活動」)、2015年に「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務(通称・技人国)」、2019年に「特定技能」と拡大。2010年に約213万人だった在留外国人は、2025年6月には約396万人と2倍近くまで増えた。
同時に、観光方面でも積極的に「インバウンド(訪日)」を促進してきた。安倍晋三政権時代の2013年、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」を設定、ビザ発給要件の緩和や円安などで訪日外国人が急増した。2013年に年間1000万人程度だった訪日外国人は2年後の2015年に約1974万人と約2倍に増加。2025年は約4000万人が見込まれ、2030年までに6000万人という目標に近づきつつある。
つまり、政府は就労でも観光でも一貫して、外国人を日本に呼び込んできたのが実情だ。

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