シリーズ「現場から、」。静岡県熱海市を襲った土石流を検証します。土石流が発生したとき、熱海市にはレベル4の「避難指示」は出ていませんでした。事前に逃げることは可能だったのか、住民たちの証言から考えます。
「倉庫が流れて、車が流れて、家が流れて、スローモーションを見ているみたいで。子どもたちが飛び出して私を通り越して逃げて、家がなくなっちゃったとか、猫がいなくなったと泣きながら」(高橋富江さん)
土石流から逃げた住民は当時の緊迫した状況を話します。静岡県熱海市では3日間にわたり、雨が降り続いていました。72時間の雨量は、7月としては過去最高の375.5ミリに達しました。熱海市は土石流が発生する前の日に警戒レベル3の「高齢者等避難」を出し、市内3か所に避難所を開きました。しかし、住民全員に避難を促すレベル4の「避難指示」は出していませんでした。
「こちらが今月2日に熱海市が設けた3つの避難所のうちのひとつ中央公民館です。しかし翌日、土石流が発生した時点で避難していた人は3つの避難所とも1人もいなかったということです」(記者)
そして、今月3日の午前10時半ごろ。土石流は何回かにわたって襲ってきたと、住民は証言しています。今回の災害で亡くなった人、または行方が分からない人の家があった場所です。土石流が流れ下ったルートに沿って、上流から下流まで広い範囲に及んでいました。被害を受けた人が自宅にいたとすれば、気づいたときには逃げ遅れていたと考えられます。
「一発、二発きたときに見に行った人がいた。危ないと駆け出して家の人を外に出して。まさかあんな土石流がくるなんて想像もしていなかった」(高橋富江さん)
「今回は川の右側が被害を受けた。うちは左側にあって(土石流が襲ったことも)全然分からなかった。土石流のことをテレビでやっていて、ああ、こうだったんだと」(小松重行さん)
たまたま難を逃れたものの、家の中にいてすぐ近くで土石流が起きたことすら分からなかったという住民もいました。突然、襲って来たという土石流。事前に逃げることはできなかったのでしょうか。
「避難指示が出ていないから避難しなかったというのは理由にならない。高齢者等避難とか土砂災害警戒情報などのタイミングで多くの人が安全な所に移動しておこうという声を掛け合えれば、今回の問題もかなり解消できたかもしれない。自分が住んでいる所にどういう災害リスクがあるのか事前に確認して、どのタイミングで自分は避難をすべきなのか見極めてほしい」(静岡大学 防災総合センター 岩田孝仁特任教授)
どんな状況になったら避難するのか。普段から考えておかなければ事前に逃げることはできないと、専門家は指摘しています。(19日11:44)

WACOCA: People, Life, Style.