台湾に設立された花王の精密洗浄センター。半導体メーカーによる洗浄試験を支援する。画像:Webber Lo羅弘旭
日用品大手の花王は11月26日、台湾北部にある新竹県に海外初となる「精密洗浄センター」を正式に稼働させると発表した。現地の半導体企業をサポートしながら、半導体先端パッケージングにおける「洗浄」の課題の解決を目指す。
花王の担当者は、台湾の半導体産業の発展に期待を寄せ、2026年にはセンターの規模をさらに拡大していく計画があることを明らかにした。
「顔の洗浄」から「チップの洗浄」へ100年の技術
撮影:三ツ村崇志
花王のケミカル事業部門 情報材料事業部長の山崎征人は、1887年に設立した花王が、1890年に日本初の顔用石鹸(花王石鹸)を発売して以来、同社のコアビジネスと技術は常に「洗浄」を中心に展開してきたと話す。花王の2024年12月期のグループ売上高は1兆6284億円で、一般消費者に馴染みのあるビオレやアタックなどの日用品に加えて、半導体産業の関連事業を含むケミカル事業も、売上高の21%を占める花王の重要な事業だ。
半導体分野では、花王は髪の洗浄などにも生かされている「ナノ界面制御技術(Nano-Interface Control Technology)」を、半導体ウエハーの洗浄へと拡張してきた。今回、台湾に「精密洗浄センター」を設立したことで、同社が100年以上にわたって蓄積してきたコアとなる「洗浄技術」を台湾の半導体産業に応用することはもちろん、開発サイクルが加速していくなか、顧客への対応速度を高める狙いがある。

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最先端半導体の「洗浄」はかつてないほど困難に
花王は、半導体化学品分野において、CMP(化学機械研磨)の添加剤や洗浄剤などの前工程と、ウエハーキャリア実装用ワックス(TBM)、ダイシング(Dicing)用洗浄剤、フラックス(Flux)洗浄剤、ドライフィルム(Dry Film)剥離剤などの後工程の化学品をカバーしている。今後は洗浄用などの薬剤を単に販売するだけでなく、「台湾洗浄センター」を通じて、顧客と共にプロセス検証を進めていくことを期待している。
半導体技術が単一チップからチップレットや2.5D/3D先端パッケージングへと移行するにつれて、中間基板(インターポーザ)を利用して複数のチップを基板上に組み合わせるようになるなど、複雑化している。花王の山崎征人氏は、チップとインターポーザ、インターポーザと基板間の接続に使用するフラックスが、接続後に残留物として残り、洗浄する必要性があると指摘。洗浄プロセスの難易度も、指数関数的に上昇していると話した。
花王の研究チームによると、このような微細な隙間の残留物は、単純な水洗浄剤では効果的に除去できず、製品の歩留まり低下につながる可能性があるという。
この物理的な限界を克服するため、花王は専用の洗浄剤を開発。コアメカニズムは次の3つだ。
1.急速浸透:ミクロンサイズの隙間にも瞬時に浸透する。
2.急速溶融: 硬化したフラックス残留物を急速に分解する。
3.速やかな分散:溶解した汚れを素早く除去する。
花王の実験によると、水洗いでは目に見える汚れが残るのに対し、専用洗浄剤を使用した場合、基板上の金属接点がはっきりと見えるようになったという。
規模拡大を計画し、現地のサポートを深化
かつて花王台湾では小規模のテストしか実施できなかった。精密洗浄センターの設立によって、大規模な試験も現地で実施できるようになる。半導体開発サイクルの加速が期待される。画像:Webber Lo羅弘旭
花王が台湾の新竹県に精密洗浄センターを設立したのは、こういった最先端の洗浄技術を、タイムラグなしで台湾の半導体サプライチェーンに導入していくためだ。山崎氏によると、これまでは台湾の顧客がテストを希望しても、台湾花王では小規模な実験室のデータしか提供できず、大型基板についてはすべて日本に送る必要があったという。往復にかなりの時間を要していたわけだ。
今回設立したセンターでは、顧客が持つ「大型基板」を処理する能力を備えており、薬剤評価とプロセスパラメータ設定を含む「トータルプロセスソリューション」を提供する。顧客が量産前に、最も細かい検証を完了できるように支援するとしている。
花王としても、世界的な半導体サプライチェーンの要所である台湾は重要な立ち位置だ。2026年に洗浄センターの運営規模を拡大し、台湾の半導体顧客と共に次世代の技術課題に立ち向かうことを検討しているとも明らかにした。

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