明治安田J2リーグ最終節   水戸2ー0大分 ( 2025年11月29日    Ksスタ )

<水戸・大分>J2優勝を決め喜ぶ水戸イレブン(撮影・西海健太郎)
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 明治安田J2リーグは最終節の10試合が行われ、2位で迎えた水戸はホームの大分戦に2―0で勝利し、勝ち点70で並んだ長崎を得失点差で逆転、J2初優勝とクラブ初のJ1昇格を決めた。Jリーグ参入26年目での昇格は史上最スローでの悲願達成となった。長崎はアウェーの徳島戦を1―1で引き分け、自動昇格圏の2位で18年以来8年ぶりのJ1復帰が決定した。

 水戸の悲願を告げる笛が鳴る。歓喜の輪が何重にも広がった。春先は空席が目立ったスタジアムは過去最多1万743人で埋まった。ゲーム主将のMF大崎は「まさかこういう光景を見られるとは思わなかった」。3度、宙に舞った森監督は「勝たないとお客さんも増えない。ピッチで表現することが全てだった」と万感の思いを込めた。

 快進撃を象徴するような一戦だった。0―0の後半1分、U―20日本代表MF斎藤のドリブル突破から大卒新人のFW多田が先制弾。同30分には同じくルーキーのMF山本がミドルを突き刺す。若い力が躍動し、今季16度目のクリーンシートと堅守も光った。前節まで2戦続けて勝てば昇格が決まる試合で今季初の連敗。シーズン最終盤に足踏みも最後に悲願は結実した。

 J参入26年目でのJ1昇格は史上最も遅く、歴代最多の通算1103試合目。近年は育成力に定評も、2桁順位が定位置だった。「J2の番人」とやゆされ、昨季も残留するのがやっと。昨季のクラブ売上高12億2400万円はJ2平均の63%にしか満たず、昇格クラブでは最低水準の資金力だった。

 風向きを変えたのは昨季5月から率いる森監督だ。「戦う集団になる」。そう宣言し、フィジカルメニューや対人練習を増やした。ミニゲームでも勝負にこだわらせた。選手たちは名物の納豆のように小粒でも粘り強くなった。開幕前は「6位以内」が目標も5~6月にクラブ最長の8連勝。前半戦を2位で折り返し、本気で昇格を目指すと決めた。

 外国籍選手ゼロでの昇格は史上初。選手の総年俸2億5000万円は大迫勇也(神戸)らJ1トップ級の1人分にも及ばない。特定の親会社がなく、経営危機に陥った過去もある。「“勝った方が強い”という思いで1年間やってきた」。指揮官がそう総括した奇跡。シーズンが秋春制に移行し、新時代に突入する26年のJリーグ。水戸が国内最高峰の舞台でも旋風を起こす。

 ▽水戸ホーリーホック 94年にFC水戸として創設され、茨城県社会人リーグ4部に参戦。97年に廃部が決まったプリマハム土浦FCと合併して現クラブ名になった。ホーリーホックは英語で「葵(あおい)」の意味で、徳川御三家の水戸藩の家紋である葵が由来。過去には田中マルクス闘莉王(03年)、鈴木隆行(11~14年)、前田大然(17年)、小川航基(19年)らが在籍。本拠地はケーズデンキスタジアム水戸(収容人数1万2000人)。クラブカラーは青。

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