12月から高知県内の最低賃金が1023円にアップします。
働く人には朗報ですが、雇用する側の企業の負担は増えるという課題もあります。
最低賃金の動向からみる県経済の課題や目指すべき方向性について考えます。
今年8月、県内の最低賃金審議会は最低賃金を現在の952円から71円引き上げ1023円とするよう高知労働局に答申し、12月からの改正が決まりました。
引き上げ幅は過去最大で、初めて県内の最低賃金が1000円を超えました。働く人には朗報ですが、雇用する企業にとっては人件費が増加するため、賃金の上昇分を何らかの方法で補填する必要が出てきます。
県経済の課題について、四銀地域経済研究所の岩井俊介社長はまず、県内の産業構造について指摘します。
■四銀地域経済研究所 岩井俊介社長
「製造業のウェイトが大変全国に比べて小さくて、高知県で大きいものは農業、医療、介護、保健衛生ですね。それから公務といったものが大きくなっている」
産業別の就業人数を全国と比較しました。農林漁業は全国平均の3.4%に対して高知県は10.2%、医療・福祉は全国の13.2%に対して17.9%と全国平均を大幅に上回っています。一方、製造業は全国の15.7%に比べ高知県は8.2%とかなりのひらきがあります。
こうした特徴的な県内の産業構造にあって、最低賃金の上昇は企業にどんな影響を与えるのでしょうか?
■岩井社長
「メリットとデメリットと両方あるかと思う。メリットにつきましては最低賃金が引き上げられることによって従業員、労働者のモチベーションが上がって、企業への定着が見込まれるという面があろうかと思う。他方でデメリットについては企業の収益が減少することになる。とりわけ中小企業、零細企業においては適切な価格転嫁ができない場合は経営に大きな悪い影響を与える可能性がある」
企業経営の鍵ともなる価格転嫁。しかし、県内でもっとも多い産業の「医療・福祉」分野では国が決める診療報酬や介護報酬、施設の利用料などで収入が決まります。
高知市の社会福祉施設「ケアハウス土佐」です。主に介護の必要がない人たちが入居しています。運営する社会福祉法人の宮地彌典理事長に来月から県内の最低賃金が上がることについて、経営者の視点で受け止めを聞きました。
■宮地彌典理事長
「収入自体が補助金と利用料という形になっているので、その決まった中からやりくりするしか手立てはないですね」
施設の運営は物価高の影響が大きく、入居者に提供している食料費、光熱費などが年々上がり厳しい状況が続いています。
■宮地彌典理事長
「処遇改善、介護業界全般にやっぱり収入が給与が低いですので、そういう意味では(最低賃金が)上がることは非常にいいことであるけれども、一方だけつついて補助金にあたる部分は物価高にはなかなか影響してきていない、十分に満たされていないというのが現実です」
県内で最も就業者数の割合が大きい「医療・福祉」分野は、価格転嫁が難しい業界でもあるのです。
こうした現状に高市総理は「赤字に苦しむ介護施設などへの対応は待ったなしだ」として、3年ごとの介護報酬改定を待たずに補助金を措置する方針を示していて、一部、希望も見えてきています。
一方で最低賃金の1023円は県内初の1000円超えとはいえ、宮崎県・沖縄県と並んで全国でも最下位水準で、トップの東京は1226円、四国の他の県と比べても10円から23円低い値です。
街の人はー。
■大学生
「上がるのは嬉しいが、それが日ごろの生活の中で物価変動とかもあると思うので、それにどれだけ影響するというかどれだけ助けになるのかっていうのは、ちょっと正しい値なのかっていうのはちょっと考えどころかな」
■女性
「7年ぐらい前になるが、(バイトしていたころ時給)700円台だったので、上がったのかなと思うけど県外に行ってる友達にきいたら、もうちょっと高いので物の値段は変わらないじゃないですか全国も。なのでもうちょっと高知も上がっていいのかなと思う」
高知放送ではさらに県民の声を聞くため、アンケート調査を行い、474人から回答を得ました。
最低賃金1023円は十分な額だと思うか?という問いに対しては「はい」と答えた人の割合は32.5%、「いいえ」と答えた人は67.5%でした。
また、パートやアルバイトで働いている人に業務内容や時給額を聞いたところ、最低賃金やそれに近い時給額だった業務は調理・清掃・介護が多く、「労働の重さに見合わない」「最低賃金が上がっても社会保険料も上がるため手取りが増えない」「物価高で生活は厳しい」という声が寄せられました。
一方で、「雇用側は人件費以外にも光熱費など物価上昇があり、中小企業は大変」、「都会並みに支給すれば会社は倒産する」といった懸念する声もありました。また、「働きに見合う賃金でない状況なら若者が県外へ出ていく」、「移住者も増えているが生活できなければまた離れると考えられる」と賃上げを求める意見も寄せられました。
こうした声を聞けば企業経営にとって賃上げは労働力の確保に結び付く避けては通れない目の前の課題です。そうした中でどんな手を打つべきなのか、四銀地域経済研究所の岩井社長はこう強調します。
■岩井社長
「多くの企業にとって、人手不足、担い手不足は最大の課題。従業員確保のための賃上げというのは避けることができないと考えられる。生産性向上と賃上げができない企業は残念ながら生き残ることはできない可能性があろうかと思う。生産性向上のためにはやはりデジタル化、AI、DX等の活用が必要かと思う」
特徴的な産業構造をもつ県内で賃上げの流れがどのような影響をもたらすのかはまだ不透明ですが、企業にとって業務の効率化や収益性を高めるための工夫が求められているのは確かです。

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