総勢360名が参加した「ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 Supported by 楽天ブックス」(以下、ジャパンスタンダードカップ)。スイスラウンド8回戦+決勝ラウンド2回戦、計10回戦に及ぶ対戦の末、残っていたのはともに関東在住のプレイヤーだった。


 

 今、もっとも勢いのあるプレイヤーをあげるならば、堀内 真はその内の一人に違いない。プロツアー『久遠の終端』においてプロツアー初出場ながら、トップ8入賞と快挙を成し遂げたばかりだ。

 ジャパンスタンダードカップでは準々決勝で金川 俊哉、準決勝で森山 真秀といった強豪を次々倒し、決勝まで駒を進めてきた。まさにノリにのっているプレイヤーである。

 使用するのはディミーア・セルフバウンス。調整過程について尋ねると、現在は森山 真秀、中村 修平をはじめとした世界選手権参加組と調整を重ねているとのことだった。堀内のディミーア・セルフバウンスは再来週へと迫った世界選手権に向けて温めてきたデッキであるのだ。

堀内「シミック・アグロのミラーマッチが不毛で、差をつけられるデッキを模索しました。《》が入ったセルフバウンスデッキは面白いと思い、最初はエスパー・セルフバウンスから始めて。ただし、マナベースの弱さ、セルフバウンスの多さから、2色に絞った構築も可能ではと考え、ディミーアへ変更しました」

 実際、堀内の選択は功を奏した。2色になったことでマナベースは安定し、《》のおかげでセルフバウンス呪文も8枚と戦略と呼ぶに値する枚数を確保できている。決勝進出も納得の構築となっている。

 対するは『グランプリ・千葉2019』でトップ8入賞歴をもつ石川 雅英。過去にはプロツアー参加経験もあり、プレッシャーのかかる場面には慣れている。決勝の舞台でも非常に落ち着いてみえる。


 

 調整グループについて聞くと、MTGアリーナと友人たちとと答えてくれた。実際、使用するグルール昂揚は友人のおかげで完成したと語り、大規模なコミュニティに属さずとも結果を残せることを証明してくれている。

石川「単純な昂揚デッキだとパワー不足と感じて、《》や《》を追加しました。友人達のおかげです」

 MVPと回答した《》は対戦相手のインスタントタイミングでの干渉手段をはじきつつ、ダメージを通せる。《》とのシナジーも見逃せず、今大会でも何回も決まりましたと自信を持って語ってくれた。

 決勝に進んだデッキは万能感のあるディミーアと直線的なグルール。お互いに「ノリ」で作ったというデッキ同士。波に乗り、優勝を手にするのはプレイヤーはどちらか。

 ここはジャパンスタンダードカップ、競技マジックの原点にして新たなタイトルとなるべき場所である。

 いよいよ、決勝戦が始まる。


 

ゲーム1

 先手は石川。《》からペイ2ライフに力強く、プレイ《》。

 除去、バウンスのあるバランスの良い手札をキープした堀内は《》ですぐさま無力化。

 石川は場のプレッシャーを絶やさず《》を続け、《》を捨てる。この1枚で昂揚までのカウントを2つ進める。


 

 2マナオープンで返した堀内に対し、石川は力強く《》をプレイ。土の技にスタックして、堀内は《》で被害を最小限におさめる。3点のダメージが入り、堀内の残ライフは15となる。

 ここで堀内は干渉領域を盤面から手札へと変え、《》、《》、再度《》とリソースを伸ばしつつ、石川の手札を削る。


 

 しかし、ここで急に機が熟す。石川が《》をプレイしたことで昂揚を達成。さらに出てきたのは《》。先ほど土の技でクリーチャー化していた土地をサイズアップする。

 コンバットフェイズへ移ると、すべてのクリーチャーが攻撃へと送り込まれる。《》の追加戦闘フェイズを挟み、8点のダメージが入り、堀内の残ライフは7まで落ち込んだ。


 

 堀内は《》で《》を回収し、《》を無力化。一連の行動の代償として《》をアンタップインし、ライフは5となる。

 この隙を逃さず、石川は《》をプレイ。この《》をみるが速いか、

堀内「負けです」

 と敗北を認めた。

石川 1-0 堀内

ゲーム2

 堀内は《》で墓地に睨みをきかせ、次のターンは2マナを立たせてエンド。

 対して石川は《》、《》と続けるが、後者は《》で除去される。

 続くターン、2枚目の《》をプレイし、《》へ土の技を使い、そのまま《》へと繋げる。《》がプレイされるも、《》を警戒しターンエンド。

 事実、堀内の手からは《》がプレイされる。


 

 ここで堀内は悩む。3マナと色マナは十分あるが、追加の土地が手札にない。そこで《》で《》を戻し、再キャストして《》を除去しつつ、《》の違和感でドローを進める。《》のダメージこそ受けてしまったが、4枚目の土地を引き込むことに成功する。

 石川は《》から《》、手札から3枚目となる《》をプレイ。いまだに昂揚まで残り2種類と遠い。

 堀内は割り切って、タップアウト気味に《》をプレイし、ドローを伸ばしていく。この割り切ったプレイが、後々生きてくるか。


 

 石川は3枚並んだ《》の切削を解決していく。1枚、2枚と墓地へ落とすと無事昂揚を達成。流石に受けるダメージが大きいと判断し、堀内は《》で墓地を一掃した。

 第2メインに石川は1点受けながら《》をX=2でプレイし、《》。

 堀内はここで《》を引き込み、《》を封じ込めることに成功する。最後の奉公と1点のダメージを与え堀内の残ライフは13に。


 

 そして、《》を対処したことで《》が真価を発揮し始める。《》×2でクリーチャーの頭数を増やし、《》で《》を回収する。その間にも《》の違和感は誘発し続け、延々とカードを供給する。

 石川のターン、墓地にあるのはソーサリー、クリーチャーのみ。しかし、3枚の《》が《》、《》と切削し、再度昂揚を達成。《》をプレイすると、全軍を攻撃へと向かわせる。


 

 堀内はブロックを悩むも、先のターンを見越してブロックを割り振り、ライフ損失を抑える。

 遂に《》は《》へと変身を果たす。《》、《》で石川のクリーチャーを除去し、同時に手札と盤面を伸ばしていく。

 場の優位が揺らぎつつある石川。都合4枚目となる《》追加から、調和で《》をX=3でプレイし、《》を戦線に加える。

 しかし、攻撃クリーチャー指定前、堀内は《》をプレイして《》を対処。《》×2を《》、《》、カワウソトークンでブロックして相打っていく。


 

 この攻防で、石川は全てのリソースを吐き出してしまった。

堀内「やっと時間がきた」

 《》で《》を戻し、盤面を完全に掌握する。一転して攻撃へ回るとカワウソ、スピリットトークンで一気に7点のライフを削る。

 堀内はわずか2ターンでゲームを支配してみせた。

石川「さばかれたなー、あそこから返せるんですね」

 ドローを確認すると、石川は感嘆の声をあげた。

石川 1-1 堀内

 サイドボードを挟んで、黙々とシャッフルする厳かな時間。今となっては、それはたった2人のプレイヤーのみに許された権利だ。その貴重な時間を楽しみ、全力をつくして対戦する。

 「お願いします」と石川はデッキを差し出して、シャッフルをうながす。

 堀内も「はい」と自分のデッキを渡す。

 シャッフルを終えると、「では、先行をいただきます」という石川の一言で最後のゲームは始まる。

ゲーム3

 手札を見るなりすぐにキープを宣言した石川に対して、堀内は悩む。除去、土地少なめ、墓地対策なしの手札を迷い、少考後、キープした。


 

 《》から《》でゲームが始まると、《》で封じて《》を続ける。

 石川は《》を後続としてプレイと、ややゆっくりとした動き。《》を土の技の対象とする。

 しかし、ここでゲームに動きが。堀内が3枚目の土地を置けず、マナスクリューに陥ってしまったのだ。仕方なく《》を重ねる。


 

 石川は4枚目の土地を置くと、《》を力強くプレイ。戦闘フェイズで、自軍全体へバフ効果がかかる。慎重を期して、攻撃こそ見送ったものの、《》がいる以上、時間とともに有利となっていく。

 堀内は《》を《》で無力化するが、いかんせん土地が伸びず、攻守の入れ替えができない。手札の《》が泣いている。


 

 膠着を打開したのは石川だった。《》をワープでプレイし、カワウソトークンを除去しながら攻撃へと向かう。しかも土の技でクリーチャー化した《》でバフ効果をかけながら、だ。13点のダメージを受け、堀内の残ライフは6に。

 最後のドローが土地でないことを見届けると、堀内は投了した。

石川 2-1 堀内

 最後の最後、マナスクリューで敗北した堀内。しかし、キープした手札に後悔はなく、キチンと引くべきカードを引いて勝つこともあるし、ときにはこういう下ブレもあると納得の表情だった。

 何よりも再来週へと迫った世界選手権を見据えて、この結果は自信となったに違いない。堀内の挑戦は続いていく。

 一方の石川はホッとしたと同時に、喜びを噛みしめていた。過去グランプリで入賞経験はあるものの、タイトルを手にしたのは初めてだった。

 優勝を手にした石川に、ひとつ聞いてみる。「次の目標は」、と。戦いの場はチャンピオンズカップファイナルへと移るわけだが、一体何を目指していくのか。

 石川は少し考えてから、回想するように語りだした。

石川「過去にプロツアーに参加経験があるんです。2回参加したんですが、どちらも1勝足らずで次のプロツアーへの参加権利を逃していて、悔しい思いをしました。今回優勝してチャンピオンズカップファイナルの権利を獲得したことで、またプロツアーへ参加できる可能性が生まれました。上手くいけばまたあの舞台に立ち、夢の続きが見られる。それが目標です」

 過ぎ去った過去のプロツアー、それは石川にとって今なお色褪せない思い出である。楽しさと悔しさが同居し、寸でのところで逃した権利。次なるチャンスを渇望していた石川に、その時がやってきた。

 次回のチャンピオンズカップファイナルでプロツアーへ復帰し、さらにはチェインを目指す。石川の夢の続きが、今、まさに始まろうとしていた。

 ここはジャパンスタンダードカップ、競技マジックの原点にしてチャンピオンズカップファイナルへの通過点。そして。

 誰しもが夢を追いかけ、夢の始まり、夢の続きへと挑戦できる、新たなタイトルとなるべき場所なのだから。

 今宵は勝者を讃え、優勝を祝福しようではないか。


 

 「ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 Supported by 楽天ブックス」、優勝は石川 雅英!!

 おめでとう!!

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