
修復を終えたピアノを演奏する横田さん(手前)ら
倉敷市歴史民俗資料館(同市西中新田)のグランドピアノが往時の音色を取り戻した。1933年の皇太子(現在の上皇さま)誕生を記念し24台限定で生産された逸品。市立倉敷幼稚園(同市中央)で57年間使われた後、資料館に展示され、前園長の働きかけで製造元が10月に修復した。市教委は「大切に受け継いでいきたい」とし今後、演奏会の開催などを検討する。
ピアノは河合楽器製作所(浜松市)が販売業の三木楽器(大阪市)の発案で34年に製造。表面に漆を塗り、白い鍵盤は象牙を用いた。三木楽器のブランド名「S.MIKI」で流通し、上皇さまの姉池田厚子さんらが暮らす皇居内修学所「呉竹寮」にも納められたという。
資料館の1台は同年、倉敷幼稚園の保護者による寄付で市が購入し、91年まで使われた。その後、旧園舎を解体移築した資料館に移され、市民らが自由に演奏。ただ年を経るにつれ鍵盤の動きが悪くなり、音程も狂っていたという。
修復に動いた前園長は2023年3月末で退職した横田昌子さん(65)=倉敷市浜ノ茶屋。同園教諭時代に資料館で園児の合唱の伴奏をしたこともあり、再び美しい音色を響かせられないかと考え今年3月、三木楽器に相談した。
同社は河合楽器製作所とともに製造の経緯を調べ、24台のうち他に現存を確認できるピアノはなく歴史的価値が高いとして市教委に修復を申し出た。8月から同製作所の工場(静岡県)で調律に使う部品や弦を取り換えるなどし、10月下旬に完了。費用は輸送費も含め両社が全額負担したという。
11月5日に資料館で式典があり、出席者約40人を前に同製作所の河合健太郎社長が「日本の楽器産業の歴史が刻まれた貴重な1台」と述べ、三木楽器の三木俊彦社長が「倉敷の文化の象徴として市民に末永く愛されてほしい」とあいさつ。同園の年長12人が教員の伴奏に合わせて園歌や童謡3曲を披露した。
式後、横田さんは元同僚らに見守られ、アニメソングなどを演奏。「親しんできたピアノが価値あるものと分かり驚いた。昔よりずっと良い音になりうれしい」と喜んだ。
資料館(086ー422ー7239)は午前10時〜午後4時に開館。ピアノの演奏もできる。月曜休館。入館無料。(小野祐香)

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