インド科学技術省(MoST)は10月21日、傘下の独立研究機関であるインド宇宙物理学研究所(IIA)の研究チームが超大質量ブラックホールの放射と電波ジェットが連動して銀河中心のガスを排出し、星形成を抑制する仕組みを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌The Astrophysical Journalに掲載された。
研究チームはブラックホール周辺の放射と高速ジェットが銀河の成長をどのように制御するかを調べた。研究では、米国のスーロンデジタルスカイサーベイ(SDSS)望遠鏡で可視光観測と超大型干渉電波望遠鏡(VLA)で電波観測したデータを用い、活動銀河核(AGN)を持つ500以上の近傍銀河を解析した。
AGNは、太陽の数百万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールに物質が落下することで生じる放射とガスの放出現象である。博士課程の学生で筆頭著者のパエル・ナンディ(Payel Nandi)氏は「AGNでは温かい電離ガスの流出が広く見られます。ブラックホールからの放射が主な要因ですが、電波ジェットを持つ銀河では流出速度とエネルギーが著しく高いことが分かりました」と説明している。
解析の結果、銀河中心からの高速ガス流(アウトフロー)は、電波波長で検出された銀河の56%で確認され、電波放射のない銀河(25%)と比べて2倍以上の割合で発生していた。これらのガス流は秒速2000kmに達し、銀河の重力を振り切るほど強力である。IIAの教員で共著者のC・S・スターリン(C. S. Stalin)氏は「銀河の進化を理解するためには、多波長データを統合することが重要です」と述べている。
研究チームは、アウトフローのエネルギーとブラックホールの全光度の間に強い相関を確認した。特に、超大質量ブラックホール近傍から光速に近い速度で噴出する電波ジェットを持つ銀河では、この相関がより顕著だった。共同研究者である天文天体物理大学連合センター(IUCAA)のドゥルバ・J・サイキア(Dhruba J. Saikia)氏は「この成果は、ブラックホール、電波ジェット、星形成、銀河進化の複雑な関係を理解する上で重要な一歩です」と述べた。
また、チームは銀河中心部の星形成がほぼ停止していることを確認した。恒星集団の光学測定と赤外線解析により、風を駆動しているのは星形成ではなくブラックホール活動であることが明らかとなった。

図1:アウトフローのスペクトル特性

図2:ジェットと放射の両方を持つAGN(活動銀河核)は、放射のみで駆動されるAGNに比べてより強力なアウトフローを引き起こし、その結果、銀河への影響が異なることを示す模式図
(出典:いずれもPIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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