こちらは、太陽以外の恒星で発生したコロナ質量放出(CME)のイメージ図。
活発に活動する左下の恒星から吹き出したコロナ質量放出によって、右上の惑星が強い影響を受けている様子が描かれています。
【▲ 活発に活動する恒星で発生したコロナ質量放出(CME)のイメージ図(Credit: Olena Shmahalo/Callingham et al.)】
大量のプラズマが塊状に放出されるコロナ質量放出は、太陽系では宇宙天気(太陽活動による宇宙環境の変動)に関連した現象として知られています。
夜空に輝くオーロラを発生させることもある現象ですが、大規模な太陽フレア(太陽の表面で起こる爆発現象)にともなって発生した場合は地球の電力網や通信網に被害をもたらす可能性があることから、近年注目度が高まっています。
太陽以外の恒星で発生したコロナ質量放出を初めて検出か
ASTRON=オランダ電波天文学研究所のJoe Callinghamさんたち研究チームは、約130光年先の赤色矮星「StKM 1-1262」で発生したコロナ質量放出を検出したとする研究成果を発表しました。
研究チームは、ASTRONが運用する電波望遠鏡「LOFAR(Low Frequency Array)」によって2016年5月に検出された、StKM 1-1262の電波バーストに着目。
ESA=ヨーロッパ宇宙機関のX線宇宙望遠鏡「XMM-Newton」が2006年6月に偶然取得していたものも含むStKM 1-1262のこれまでの観測データを使用して、温度・自転・X線強度といった星の特性を踏まえた分析を行いました。
その結果、LOFARが検出したバーストは太陽で観測されるII型バーストに似ていることがわかりました。II型バーストは、太陽のコロナ質量放出にともなって発生することが知られている電波バーストの一種です。
研究チームは分析結果をもとに、検出された電波バーストはStKM 1-1262の磁気圏から物質が完全に放出されない限り発生し得ない、言い換えればコロナ質量放出によって引き起こされた電波バーストだと結論付けました。他の恒星でもコロナ質量放出が発生していると推測されてはいたものの、明確に検出された事例は今までなかったといいます。
赤色矮星を公転する惑星の生命居住可能性にも影響
スペクトル型をもとにM型星とも呼ばれる赤色矮星は、太陽よりも小さくて暗い低温の恒星で、天の川銀河ではありふれた存在です。
赤色矮星の惑星系では太陽系と比べてハビタブルゾーン(※)が狭く、その中を公転する惑星の公転周期は地球の数日程度しかないこともあります。
短い観測期間でもハビタブルゾーン内の惑星を発見しやすいことから、地球サイズの太陽系外惑星が7つ(そのうちハビタブルゾーンを公転しているものは3つ)見つかっている約40光年先の「TRAPPIST-1(トラピスト1)」をはじめ、地球外生命探査の視点からも注目を集めています。
※…大気を持つ惑星の表面に液体の水が存在し得る、恒星から一定の範囲にある領域。ゴルディロックスゾーンとも。

【▲ 赤色矮星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの太陽系外惑星の想像図。2018年2月時点での情報をもとに描かれている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
その一方で、赤色矮星はフレアなどが発生しやすい活動性の高い恒星としても知られています。その周りを公転する惑星は、赤色矮星が放つ紫外線・X線や恒星風によって、大気を剥ぎ取られてしまう可能性も指摘されています。
研究チームがStKM 1-1262で発生したとみられるコロナ質量放出の速度を推定したところ、毎秒2400kmという高速で移動していた可能性が示されました。これは太陽のコロナ質量放出では2000回に1回程度しかみられない稀な速度です。
仮に、StKM 1-1262から0.2天文単位の位置(ハビタブルゾーンの内側境界)に磁場の強さが約3ガウスの惑星が存在した場合、検出されたコロナ質量放出は磁気圏を惑星の表面まで圧縮し、大気を構成する物質を流出させ得るほど強力だといいます。ちなみに、地球の磁場の平均的な強さは約0.5ガウスです。
太陽以外の恒星で発生したコロナ質量放出が他にも検出されるようになれば、他の恒星の周囲における宇宙天気を研究する道が開かれることになります。特に、StKM 1-1262のような赤色矮星周囲の宇宙天気を理解することは、赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する惑星の生命居住可能性を探る上で重要な取り組みとなるでしょう。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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