億万長者の投資家ジーン・エリック・サラタ氏が率いる欧州系投資ファンドEQTにとって、アジアは成長を支える重要市場だ。

  同社は大規模な資金回収と高水準のリターンでプライベートエクイティー(PE)業界を席巻しており、今後5年間でアジア向け投資を最大1100億ドル(約17兆円)と、現在の3倍に拡大する計画だ。

  本拠地である欧州での投資ペースを上回る見通しだ。事情に詳しい関係者によると、同社は来年にもアジア地域でさらに100億ドル規模の投資回収を見込んでいるという。

  サラタ氏(59)は先月、スウェーデンの買収会社EQTのグローバル会長に指名された。同氏によれば、EQTは米国の政治的不安定を背景に世界の投資マネーが静かに欧州やアジアへとシフトしている現状を生かしている。

  ストックホルムを拠点に、世界の大手オルタナティブ資産運用会社に挑もうとしている。

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ジーン・エリック・サラタ氏

Source: EQT

  「欧州系で、北欧の伝統と精神を持つ私たちは、新しい世界秩序の中でより中立的な視点を持てる立場にあると思う」と、EQTの第2位株主である同氏は語った。

  EQTの運用資産は3100億ドルに達し、非米系では世界最大のプライベートエクイティー(PE)運用会社だ。業界誌プライベート・エクイティ・インターナショナルによると、過去5年間の資金調達額はKKRにほぼ並ぶ水準にあるという。

  新たなアジア向けファンド「BPEA IX」には、過去6カ月間で米国の主要年金基金2社から6億ドルの新規投資があったと、事情に詳しい関係者が明らかにした。

  これに加え、年初にはニュージャージー州の年金基金が2億ドルを投資。同関係者によると、 テキサス州教員退職年金基金やロードアイランド州職員退職年金制度も繰り返し投資しているという。

  サラタ氏と新最高経営責任者(CEO)のペール・フランゼン氏の下で、EQTは新たな成長段階に入った。

  現在の資金調達サイクルでは1000億ユーロ(約17兆9000億円)の資金集めを目指し、今後5年間で世界全体に6500億ドルを投資する計画だ。同社は過去12カ月で投資家に250億ユーロを還元しており、そのうち相当部分をアジアが占めている。

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  フランゼン氏によると、同社はデータセンター、学生寮、医療オフィスなど米国のインフラや不動産への投資を進めつつ、非ドル資産へのシフトという潮流に乗っているという。

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ペール・フランゼン氏

Source: EQT

 

 

  プライベートエクイティー業界全体が資金還元の停滞と資金調達期間の長期化に直面する中、EQTは際立った資金分配ペースを維持している。事情に詳しい関係者によると、同社は今年、他の投資家とともにスイスのガルデルマ・グループの株式93億ドル分を売却。PE企業による単年度の資金回収として過去最大規模となった。

  サラタ氏によると、アジアでは、域内で事業展開する国際私立学校運営グループノード・アングリア・エデュケーションの株式売却で101億ドルを還元。過去12カ月間でアジア関連ファンドと共同投資家による分配総額は160億ドルに達したという。

  EQTの成長戦略ではアジアが中心的な役割を担う。サラタ氏が創設したベアリング・アジアとの合併により、同社は世界で最も成長の速いアジア市場への主要な参入経路を確保した。

  サラタ氏によると、地域の案件数は日本、韓国、オーストラリアの勢いを背景に2倍以上に増加し、インドも引き続き活発な動きを見せている。EQTは現在、150億-200億ドル規模の「進行中の案件」を抱えているという。

  米大手勢のアジア支配を打破するのは容易ではない。EQTは今年、日本で33億ドル相当の投資回収を完了したものの、不動産売却を含め51億ドルを実現したKKRには及ばない。

  インドではブラックストーンが20年間の先行実績を持ち、大規模投資を迅速に実行できる体制にある。

  サラタ氏は、日本での投資余力を現在の数倍に拡大し、50億ドル規模とする計画を明らかにした。

  EQTはスウェーデンの実業家一族ウォーレンバーグ家が約17%を保有する。フランゼンCEOは「われわれは世代を超えてこの事業に取り組んでいる」とし、長期的な視点での勝利が目標だと語った。

原題:EQT Billionaire Takes On Wall Street Titans With Big Asia Push(抜粋)

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