インドの新たな金融ハブに、世界的な大手銀行が相次いで進出している。旺盛なドル借り入れ需要を取り込む狙いで、香港やシンガポールといったアジアを代表する金融センターから重要な業務も一部移っている。

  「グジャラート国際金融テック(GIFT)シティー」に拠点を置く銀行は、昨年度(2024年4月-25年3月)にインド企業向けのドル建て融資約200億ドル(約3兆900億円)を実行した。

  これは世界全体でインド企業に供与されたドル融資の3分の1余りに相当する。GIFTシティー経由のシェアは2年前、16%にとどまっていた。GIFTシティーを監督する国際金融サービスセンター局(IFSCA)のデータが示している。

General Views of Gujarat International Finance Tec-City (GIFT City)

GIFTシティー(グジャラート州)

Photographer: Elke Scholiers/Bloomberg

  三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は22年にGIFTシティーで事業を開始し、現在ではこの金融ハブを通じてインド企業向けの融資の大半を供与している。

  事情に詳しい関係者によれば、MUFGのインド向け資産残高200億ドルのうち、約3分の2がGIFTシティーでのファイナンスによるものだという。MUFGの広報担当者はコメントを控えた。

  英HSBCホールディングスは、GIFTシティーを拠点に国際貿易金融のポートフォリオを構築しており、ウェルスマネジメントや越境市場向け商品などの分野にも事業を拡大していると、同行インド法人のヒテンドラ・デーブ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。

  GIFTシティーは、モディ首相が経済成長を重視しインド西部で20年近く進めてきたプロジェクトの一環だ。その狙いは、インド企業による取引や融資を国内で完結させる体制を整え、シンガポールや香港、ドバイといった既存の金融センターから市場シェアを奪うことだ。

  GIFTシティーの魅力は、事業所得に対する10年間の税制優遇措置を含む多様な減税策にある。特に融資もしくは債券に関しては、利息所得に課される源泉税が免除されている点が大きい。

  これにより、GIFTシティーの銀行は、源泉税率が10-15%に達する他の金融センターに比べ、より低利の資金調達を企業に提供できると、英スタンダードチャータードやMUFGなどの関係者は説明している。

  グラントソントン・バーラトのパートナー、ヴィヴェク・ラムジ・アイヤー氏はGIFTシティーについて、「インド企業のオフショア借入市場でシェアを拡大」しており、香港やシンガポールのような金融センターは警戒すべきだと指摘した。

  GIFTシティーの目的は、「大局的に見れば、インド企業に最も競争力のある金利でグローバル資本を提供すること」だとIFSCAのK・ラジャラマン会長は言う。

  同会長の見方では、インド株の主要株価指数先物であるSGXニフティー先物の移管は成功例だという。同先物は以前、シンガポールで取引されていた。

  23年7月に取引拠点をGIFTシティーへ移すと、現地でのデリバティブ(金融派生商品)取引が活発化し、NSEインターナショナル取引所での株式デリバティブ年間取引高は昨年度時点で1兆ドル(約155兆円)を突破した。

  ラジャラマン会長は、主に非居住インド人の資金を運用する200近いファンドがGIFTシティーで設定されていることや、これまでダブリンやシンガポールが中心だった航空機リース金融が増加していることにも言及した。

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GIFTシティーの工事現場

Photographer: Elke Scholiers/Bloomberg

  もっとも、多くの取り組みはまだ初期段階だ。インド企業がGIFTシティーを通じて外国の株式市場で資金を調達する動きは限定的で、ムンバイ上場の大企業がすぐに利用する計画はない。

  インド準備銀行(中央銀行)は、ルピー建てのノンデリバラブルフォワード(NDF)市場をスタートさせ呼び込みを図りたい考えだが、流動性の高いシンガポールなどを好む銀行の反応は鈍い。

  また、政府が推進するグリーンボンド(環境債)取引の活性化策も、現時点では成果が出ていない。

  各金融機関が今抱えている問題は、GIFTシティーで働く人材の確保だ。福利厚生やインフラを含め生活環境の面では都市部には及ばない。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のリポートによると、企業の上級幹部を対象とした調査では63%が職業的・私的ネットワークが限られるため異動を望んでいないと回答した。

  ラジャラマン会長は今のところ、企業の財務部門をさらに誘致することとフィンテックのエコシステム(生態系)拡大、金取引所の育成、コモディティー(商品)デリバティブ取引の拡大などに力を入れている。

  ボストンコンサルティンググループ(BCG)でインドの金融機関担当部門を率いるヤシュラジ・エランデ氏は、GIFTシティーの発展スピードを評価しつつも、今後は国際的な規模への拡大が必要だと分析。

  「ドバイ国際金融センター(DIFC)や香港のエコシステムが強力なのは、多数の金融商品を扱う厚みのある市場と、それらを支える関連サービスがそろっているからだ。GIFTシティーが目指すべきはまさにそれだ」と語った。

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インドステイト銀行(GIFTシティー)

Photographer: Elke Scholiers/Bloomberg

原題:MUFG, HSBC Bet Big on India’s GIFT City in Warning to Asia Hubs (抜粋)

 

— 取材協力 Shadab Nazmi

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