2025年、ついに日本でも本格的なサービス展開が始まった「TikTok Shop」。 ショート動画プラットフォームの巨人がEコマース市場に本格参入したことで、「Amazonや楽天を脅かす黒船になるのでは?」といった期待や憶測が飛び交っている。エンターテインメントと購買体験を融合させた「発見型EC」は、日本の市場にどのような変革をもたらすのか。先行する米国市場のリアルな実情、そして日本の市場特性。この両面から、TikTok Shopの「可能性」と、企業が取るべき「マーケティング活用のヒント」を探る。

はじめに:執筆者プロフィールと本稿の視点

 はじめまして。瀧澤優作(たきざわ ゆうさく)と申します。大学在学中にシリコンバレーに1年留学し、現地でスタートアップの成長に衝撃を受けました。日本には帰国せず、そのまま現地でスタートアップの立ち上げに参加。最初はBtoCのグロースマーケティングに従事し、その後BizDevを経験しました。その後、Fireworkの日本事業の立ち上げ(カントリーマネージャー)を経験し、現在はグローバルでRevOps(レベニューオペレーション)を担当しています。

 私が所属するFireworkは、元々BtoC向けの動画配信アプリとして米国で起業し、ローンチ3ヵ月で約300万ダウンロード/App StoreでTop3入りを経験しました。しかし、のちにTikTokが米国で大規模投資を進める局面を迎え、BtoCから撤退してBtoBサービスにピボットしています。そうした経緯から、私はTikTokや動画コマースの動向を近い距離で継続的に見てきました。本稿は、その視点からまとめたものです。

先行する米国市場のリアル:「急成長」の光と「構造的課題」の影(私見)

 TikTok Shopの米国導入は2023年で、当初は大きな注目を集めました。TikTokが配送費の補助や低い手数料など積極的な施策を展開したことで、多くのブランドが参入。TikTok ShopのグローバルGMV(流通取引総額)は2024年に約332億ドルと報じられ、そのうち米国が約90億ドルを占める規模に達しました(techinasia.com)。

 また、シンガポールの家電ブランド「PRISM+(プリズムプラス)」のケースでは、2022年のメガセール期に「TikTok Shopでの売上」が前月比58.6%増という記録も公開され(TikTok For Business)、TikTok Shop活用への期待が高まりました。

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 このように活用への期待が高まる一方で、2024年以降は状況が一変しました。TikTokが販促補助を縮小し、手数料を段階的に引き上げ(2%→6%→8%)、さらに1件あたり30セントの固定チャージを導入したことが複数メディアで報じられています(WIRED)。このコスト構造の変化により、出店者の利益率は圧迫されやすくなりました。加えて、平均注文額(AOV)が低いという構造的課題も指摘され、外部推計ではTikTokのAOVが約43ドルと紹介されています(比較としてMeta側はより高い水準とされますが、レポート間で幅があります)(AMZScout)。

  私自身の見立てとしても、短期の売上成長の裏で、模倣品対応、CS・返品、技術トラブル、アルゴリズム依存といった運用コスト=“非プロダクト”要因が、出店者側の利益をじわじわ圧迫する傾向が見られます。米国では規制・法案の動きもあり、市場の不安定要因は意識せざるを得ないと感じています。

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