11日の米株式市場ではS&P500種株価指数が3日続伸。朝方は軟調だったが、米国史上最長の政府閉鎖がまもなく終結するとの見方が広がり、上げに転じた。政府統計の発表が再開すれば、連邦準備制度理事会(FRB)の今後の方針を見極める材料が得られるとの期待が高まっている。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数6846.6114.180.21%ダウ工業株30種平均47927.96559.331.18%ナスダック総合指数23468.30-58.87-0.25%Senate Advances Plan To End Shutdown After Some Democrats Agree

米連邦議会議事堂

Source: Bloomberg

  S&P500種の構成銘柄では345銘柄前後が上昇した。景気との連動性が高いと見なされるフェデックスは、今四半期の利益が前年同期比で改善するとの見通しを示し、株価は5%余り上昇した。一方、ソフトバンクグループが保有株を全て売却した半導体大手エヌビディアは、3%下落した。売却額は58億3000万ドルに上った。

  ADPリサーチが発表した週次の民間雇用者数は、10月後半の米労働市場が、前半に比べて減速したことを示唆した。政府閉鎖により政府統計の発表が遅れる中、市場関係者は民間のデータに頼らざるを得ない状況が続いている。

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  上院がつなぎ予算案を可決し、政府閉鎖が早ければ12日にも終結する見通しとなった。下院が12日に審議する法案には農務省、退役軍人省、食品医薬品局(FDA)、軍事建設プロジェクト、議会運営などへの来年9月30日までの予算が含まれている。政府機関の大半に対する1月30日までの予算も確保される見込み。

  法案は下院での可決を経て、トランプ大統領に送付され、署名を得る必要がある。トランプ氏は法案に対して支持を表明している。

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  ドイツ銀行のジム・リード氏は、雇用統計に影響が出た2013年の政府閉鎖時、政府は10月17日に再開され、9月分の雇用統計はその5日後に発表されたと指摘。「この時のスケジュールを踏まえると、9月の雇用統計は比較的早く発表される可能性がある。政府が閉鎖された数日後の10月3日が元々の発表予定日だったことを踏まえれば、なおさらだ」と述べた。「来週前半の発表は現実的だ」と語った。

  CFRAのサム・ストーバル氏がまとめたデータによると、過去15回の政府機関閉鎖では、終了から1カ月でS&P500種が平均で2.3%上昇した。これを当てはめると、S&P500種は12月中旬までに7000に迫ることになる。

  アンドリュー・タイラー氏率いるJPモルガン・マーケット・インテリジェンスのチームは「今回の下落局面では買いを入れており、戦術的な強気スタンスを維持している」と述べた。「足元で最大の材料は政府再開であり、これが実現すれば今四半期の国内総生産(GDP)見通しが下支えされるだけでなく、市場に流動性が一段と供給される可能性がある。通常これは株式にとってプラスに働く」と指摘した。

  米企業の直近の決算発表では、経営者が経済の先行きに驚くほど楽観的な見方を示している。ブルームバーグの集計によると、「景気減速」といった表現が決算説明会などで言及された回数は、2007年以来の低水準となっている。政府機関閉鎖により経済指標の発表が滞り、政策の先行きが一段と不透明になっているにもかかわらずだ。一方でS&P500種は年間ベースで3年連続の上昇に向かっており、割高感は強まっている。

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  ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー氏は「全体としてトレンドは依然として前向きだ」と述べ、「年末までに株価が再び最高値を更新する可能性も十分にある。特にFRBが12月に利下げし、ハト派寄りの姿勢を強めればなおさらだ」と語った。

米国債

  米国債はベテランズデーの祝日で、現物市場が休場。10年国債先物相場はADP統計を受けて上昇した。

  短期金融市場では利下げ観測がさらに強まり、来月の利下げ確率は60%超となっている。

  Tロウ・プライスの米国担当チーフエコノミスト、ブレリナ・ウルチ氏はブルームバーグテレビジョンで、ADP週次統計は「労働市場が安定してきたという見方に反する内容だった」と指摘。「注意深く追っているが、10月のデータは非常にノイズが多く、政府閉鎖の影響も大きい点に留意している」と語った。  

Treasury Futures Rally, Dollar Falls After ADP Release

 

 

外為

  外国為替市場では、ドルが主要通貨のほぼ全てに対して下落。ADPリサーチが発表した週次の民間雇用者数が人員削減を示し、ドル売りが膨らんだ。金融緩和が一段と進むとの見方を受け、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は約2週間ぶりの安値を付けた。

  円は対ドルでADP統計発表後に1ドル=153円67銭まで上昇した。ただ、その後は伸び悩んだ。

為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1217.78-0.93-0.08%ドル/円¥154.13-¥0.02-0.01%ユーロ/ドル$1.1584$0.00270.23%  米東部時間16時31分

  ソシエテ・ジェネラルの外国為替戦略責任者、キット・ジャックス氏は、「政府閉鎖が終われば市場のボラティリティーが一段と高まるということが少なくとも言える。仮に経済指標の内容が弱ければ、最近のドル強気ムードは反転する可能性がある」と述べた。

  「ドル・スマイル理論」で知られるユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)はドルについて、最近反発の動きが見られるものの、依然として下落基調にあるとの見方を示した。ジェン氏は長年のドル弱気派として知られ、今後は海外経済の成長加速がドルの魅力をさらに低下させると予測している。

  同氏は、トランプ大統領の任期中にドル指数がさらに13.5%下落すると見込んでいる。ドルは年初から既に約7%下落しており、このままいけば通年で8年ぶりの大幅安となる。

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原油

  原油先物相場は上昇。原油市場の軟化を示す兆しが見られたものの、ガソリンやディーゼルなど燃料価格のプレミアム上昇が相場を支えた。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は3営業日続伸で1バレル=61ドルを上回った。コンサルティング会社エナジー・アスペクツによると、商品投資顧問業者(CTA)による買いが今後、さらに相場を押し上げる可能性がある。

  同社でクオンツ分析を統括するジェームズ・テイラー氏は「64.50ドルを上回るとCTAによる大口の買いが発動する水準に達するため、相場のリスクバランスは上向きだ」と述べた。もっとも、ディーラーによるヘッジ取引のフローが相場の変動を抑える可能性もあるという。

  WTIのプロンプトスプレッド(期近と期先の価格差)は縮小し、強気相場を示唆する価格構造は弱まったが、精製品のプレミアムは上昇した。

  原油相場は月間ベースで8月から3カ月連続下落していたが、足元では持ち直しの動きが見られる。軟調相場が続いた背景には、世界的な供給過剰への懸念があった。

  12日には石油輸出国機構(OPEC)が月報を、国際エネルギー機関(IEA)が年次エネルギー見通しをそれぞれ発表する。IEAはすでに2026年に過去最大規模の供給過剰が発生すると予測しており、その見通しは13日発表の月報で改めて確認されることになる。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比91セント(1.5%)高の1バレル=61.04ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は1.1ドル(1.7%)上げて65.16ドル。

  金スポット価格は小幅高。米政府機関再開の見通しと弱い雇用指標の両方が市場では意識された。

  金相場は10月に1オンス=4380ドル超と過去最高値を付けた後、ここ数週間は下落基調にあった。上昇ピッチの速さを警戒し、投資家が利益確定に動いたためだ。ブルームバーグの集計によると、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)は8週連続の純資金流入の後、先週まで3週連続で純資金流出となった。

  それでも今年の金相場は、年間ベースで1979年以来の大幅高が見込まれている。その背景には、各国・地域の中央銀行による積極的な金購入など複数の要因がある。

  オーバーシー・チャイニーズ銀行のクリストファー・ウォン氏は「金価格を支える中期的な要因は依然として健在だ」と指摘。米連邦準備制度理事会(FRB)は2026年にかけて金融緩和を継続し、金利は低下基調が続くとの見方を示した。

  スポット価格はニューヨーク時間午後3時35分現在、前日比10.87ドル(0.3%)高の1オンス=4126.63ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、5.70ドル(0.1%)安の4116.30ドルで引けた。

原題:Wall Street Gains on Optimism US Will Soon Reopen: Markets Wrap(抜粋)

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— 取材協力 Andre Janse Van Vuuren and Geoffrey Morgan

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