世界最大級の資産運用会社が運用する一部の債券ファンドが、フランス国債の売却を強いられることを回避するために投資ルールを変更している。
ステート・ストリートの10億ユーロ(約1800億円)規模のファンドと、ブラックロックの2億8900万ユーロ規模のファンドは最近、ダブルA格付けを厳格に求める指数をベンチマークとして使用しなくなった。
その結果、フランスが格下げでその基準を下回っても、両ファンドは同国債へのエクスポージャーを維持できると、事情に詳しい関係者が話した。
こうした対応には先見の明があった。S&Pグローバル・レーティングは17日、フランスの格付けを「AA-」から「A+」に引き下げ。主要3社による格付けの平均がダブルAを割り込んだ。厳格な投資基準を持つファンドにフランス債の売却を迫る展開だ。
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ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの広報担当者は「今回行った基準となる指数の変更は、明確な顧客の要望に対応したものだ」と述べた。ブラックロックの広報担当者はコメントを控えた。

ムーディーズ・レーティングスは24日にフランスの格付けを見直す予定だ。現在の格付けはAa3で、ダブルA格の中では最も低い水準にある。見通しは「安定的」としている。フィッチ・レーティングスは9月にフランスの格付けを「A+」に引き下げている。
ベルギーの教訓
ブラックロックは、フランスの格下げによる影響を受ける前に指数の変更を間に合わせた。フィッチが6月にベルギーの格付けをA+に引き下げた際に売却を強いられた経験を踏まえた行動だった。
ブラックロックの上場投資信託(ETF)はS&Pグローバルの指数をベンチマークとしているが、指数は主要格付け機関のいずれかがA+以下の評価を付与した債券を「次回のリバランス時に指数から除外する」ことを定めていたため、ブラックロックのファンドはベルギー長期債の保有を減らさざるを得なかった。
フランス債はさらに大きなリスクとなる。同ファンドのポートフォリオの約3分の1を占めているためだ。ベルギー債が指数から除外された後の数週間に、ブラックロックは対応策を考えた。

それに基づき、S&Pの指数部門は7月18日に指数構成銘柄の最低格付け要件をBBBに引き下げることを提案。提案は承認され、9月末のリバランスに間に合う形で施行された。これにより、今後さらに格下げがあってもフランス国債は指数にとどまる見通しで、ベルギー債もファンドに再び組み入れられている。
ブラックロックはETF投資家向けの書簡で、指数の基準変更により「指数構成銘柄の入れ替え頻度の増加や指数の分散度低下を回避できる」と説明した。
カスタム対応
ステート・ストリートでは、IUTユーロ・コア・トレジャリー10年超債券インデックス・ファンドがICE BofA 10年超AAA-AA ユーロ圏国債指数をベンチマークとしていたが、ファンド資料によると6月にインターコンチネンタル取引所(ICE)が提供する「カスタム」指数に変更した。
カスタム指数は、汎用の一般向けベンチマークと異なり、顧客の要望に基づいて特定のルールや基準を設計したものだ。ステート・ストリートのこのファンドは、9月末時点で運用資産の39%をフランス国債が占めていた。
投資家心理の変化
フランスのさらなる格下げがもたらすより重大な影響は、世界の投資家心理に対するものかもしれない。

海外投資家は長年、ドイツよりも高い利回りが得られる一方で、ボラティリティーが相対的に低く信用力も高いという理由からフランス国債を選好してきた。
ブルームバーグ・エコノミクスのリサーチャー、ジャン・ダルバール氏は「フランスは他のユーロ圏諸国に後れを取り、長年維持してきた、投資家にとって魅力的なユーロ圏国債としての地位を失いつつある」と指摘。「その結果起こるのは、構造的に高い利回りだ」と述べた。
原題:BlackRock, State Street Funds Redraw Rules to Keep French Bonds(抜粋)
— 取材協力 Zoe Schneeweiss and Phil Kuntz

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