![]()
ツタンカーメン王のミイラ。(KENNETH GARRETT, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)
人類の歴史上、さまざまな文化が死者をミイラにしてきた。今日でもいくつかの文化が続けているが、最も象徴的なのはやはり古代エジプトのミイラだ。(参考記事:「世界各地のミイラ、ちょっと意外な作成法も」)
残念ながら、古代エジプト人はミイラの防腐処理について、ほとんど何も書き残していない。実験考古学はミイラ作りを理解するための数少ない手段のひとつであり、現代でも数人の研究者が当時の作り方を再現している。多くは動物を使っているが、少数の勇敢な研究者は人間をミイラにしている。
なかでも有名なのは、ボブ・ブライヤー氏とロン・ウェイド氏が1994年に作ったミイラだ。

サム・キーン著『Dinner with King Tut:How Rogue Archaeologists Are Re-creating the Sights, Sounds, Smells, and Tastes of Lost Civilizations(ツタンカーメン王とディナーを:型破りな考古学者たちが再現する失われた文明の光景、音、匂い、味)』より抜粋。
[画像のクリックで拡大表示]
ウェイド氏は父親のような葬儀屋になることを夢見て育った。ベトナム戦争で衛生兵として従軍した後、解剖学者になり、最終的に米メリーランド州解剖学委員会の委員長になった。ブライヤー氏も解剖学の訓練を受けたが、教育と情熱によってエジプト学者になった。長年にわたりエジプト関連の書籍を集めていて、本を置くためだけにアパートをもう1戸借りているほどだ。
両氏は、メリーランド州ボルティモアで科学のために献体された遺体の中から、心臓発作で亡くなった76歳の白人男性の遺体を選んだ。遺体の身元は秘密だが、ウェイド氏は「embalm(防腐処理)」という言葉をもじって、E・M・バーム(E. M. Balm)というニックネームで呼んでいる。(参考記事:「古代エジプト ミイラ工房の黄金期」)
いきなりの難問と試行錯誤
リアリティーを追求するため、ブライヤー氏とウェイド氏はリネンの包帯、妙に幅の広い木製の防腐処理台、銅製や黒曜石製の刃物など、ファラオ時代の道具や材料のレプリカを使った。
「バーム氏」での作業に取りかかる前に、両氏は他の遺体を使って、脳の摘出という重要な作業の練習をした。練習には、完全な遺体ではなく、医学部の形成外科の授業で使った後の、切断された頭部をもらってきた(ブライヤー氏は、「ちょっと奇妙な見た目でしたね。フェイスリフトなどを施されていたので」と振り返る)。
次ページ:ミイラは「ラムセス大王にそっくりになっていました」
ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
定期購読者*のみ、ご利用いただけます。
*定期購読者:年間購読、電子版月ぎめ、
日経読者割引サービスをご利用中の方になります。
おすすめ関連書籍

おすすめ関連書籍

古代エジプトの至宝 大図鑑
遺産が語る古代エジプトの豊潤な世界。至宝の数々を通して、およそ6000年の歴史に触れる。
定価:6,050円(税込)
WACOCA: People, Life, Style.