オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は10月6日、ウェストミード応用研究センターのアカデミックディレクターであるクララ・チョウ(Clara Chow)教授が、オーストラリアで初めて心臓発作の約25%を占めるST型心筋梗塞(STEMI)を経験した女性のケア改善に関する詳細な研究を行ったと発表した。研究成果は学術誌Medical Journal of Australiaに掲載された。

オーストラリアでは毎年約2万人の女性が心臓発作を起こしている。研究者らは、男女の治療格差が解消されれば、女性の心臓発作の死亡の最大20%が回避可能であり、年間数百人の命が救われると推定する。

発表された研究では、2011~2020年の間にニューサウスウェールズ州でSTEMIを初めて発症した18歳以上の患者2万9435名の記録が分析された。患者が適切な時期に処置を受けたかどうかを追跡し、翌年の主要な心血管イベントと死亡の有無をモニタリングした。

この研究では、女性がSTEMI患者の29%を占め、男性と比較して一般的に高齢で発症することが多く、恵まれない地域に住んでいる傾向が見られた。調査期間中、女性の生存率は年間1%改善したのに対し、男性は0.6%の改善に留まった。これについて、同教授は、「女性はベースラインが悪い状態からスタートしたため、その差は依然として大きい」と説明した。

心臓発作の男女格差の一因は、女性が典型的な胸痛ではなく息切れや疲労感など異なる症状を経験することが多く、心臓発作に気付いていないことが挙げられる。また、心臓発作は男性の病気という時代遅れの認識から、女性のSTEMIの診断が遅れるケースもある。

心臓発作のケアにおける男女格差は、英国や米国、ヨーロッパ全土でも報告されており、オーストラリアだけでなく世界的な課題である。専門家は、男女格差の改善は、見えないものを可視化する(Making the Invisible Visible)キャンペーン、ヨーロッパ心臓病学会タスクフォース、女性のための循環器病の予防・啓発活動(Go Red for Women)などの取り組みが認知度向上や公平な治療促進に寄与すると指摘している。

同教授は、「われわれの研究は、医療における男女平等に関する世界的な議論に貢献します」と研究の意義を強調した。

クララ・チョウ(Clara Chow)教授(右)
(出典:いずれもシドニー大学)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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