人間の感覚に勝るものなし

欧州の歴史ある自動車メーカーはここ数十年で最も深刻な課題に直面している。野心的な中国車が次々と市場に流入し、その技術はますます進化しているのだ。

しかし、フォルクスワーゲンの技術責任者は、中国の先進的なハードウェア/ソフトウェア技術を打ち負かす鍵となる秘密兵器を持っていると豪語する。それは「ポポメーター(popometer)」だ。筆者が少し困惑した表情を浮かべているのを見て、「お尻で感じるものだよ」とカイ・グリューニッツ氏は説明してくれた。

新型IDポロのプロトタイプ新型IDポロのプロトタイプ

そう、お尻だ。具体的には、クルマがどう動いているかを人間の感覚で捉える能力である。これをドイツ語では「お尻」を意味する「popo」という言葉を使ってポポメーターという。世界最高のソフトウェアエンジニアでさえ、お尻をプログラムする方法はまだ知らない。

「結局のところ、クルマ作りは人間が主役なのです。シートに座って車両を感じ取らなければなりません。どんなに高度なシミュレーションでも、それは不可能なのです」とグリューニッツ氏は言う。

ただし、このポポメーターを重視する姿勢を、現代技術を拒むラッダイト(反技術主義)的なものと誤解してはいけない。2022年からフォルクスワーゲンの技術開発責任者を務めるグリューニッツ氏は、新型『IDポロ』や『IDクロス』を筆頭とする次世代EV開発の立役者である。さらに、フォルクスワーゲン・グループが米国EV新興企業リビアンとの提携で手に入れた、先進的な新ソフトウェアアーキテクチャーを活用する車両の開発にも取り組んでいる。

IDポロとIDクロスは約36か月で開発

彼はまた、中国メーカーの得意分野でも勝負をかけ、開発期間の短縮を主導している。IDポロとIDクロスは約36か月で開発された。彼は「中国スピード」は基本性能を損なわずに達成できると主張する。

「それが優良ブランドと卓越したブランドを分ける要素となります」とグリューニッツ氏は語る。ポポメーターだけでなく、数十年にわたるシャシー設計の経験によって培われたこの基本的な知見こそが、中国メーカーに対するフォルクスワーゲンの優位性だという。

シャシー開発の習得には「経験、知識、時間」が必要だと彼は言う。「24か月でクルマを開発し、その後わずか2週間で走行性能の応用に取り組むなんて考えられないでしょう。それだけでは不十分で、何をすべきかを本当に理解していなければなりません。これはフォルクスワーゲンだけでなく、BMWやアウディなど欧州の自動車メーカーが持つ強みです。わたし達はこれを長年続けてきたのです」

「中国企業を恐れてはいません。欧州の顧客が何を望んでいるかを、欧州のメーカーより中国企業がよく知っているはずがありません」

次世代EVは誰のためのクルマか?

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