昨季、就任1年目にしてバルセロナを3冠に導いたフリック監督だが、2季目となる今シーズンは開幕からチームは徐々に調子を落としており、その手腕が疑問視され始めている。
■昨季は3冠も不安定な戦い
バルセロナは昨季、欧州5大リーグ最多のオフサイドを誘発したハイライン、爆発的な攻撃力などを武器に「1-0で勝つよりも5-4で勝つ方を好む」という言葉を残した先駆者ヨハン・クライフの哲学を体現するプレーを披露して、スペインリーグ、国王杯、スペイン・スーパーカップのタイトルを獲得した。
今季も開幕直後はその勢いを維持したが、現在は不安定な戦いが続く。ここまでの公式戦成績は13試合9勝1分け3敗。スペインリーグは10試合7勝1分け2敗、勝ち点22で2位。欧州チャンピオンズリーグ(CL)は3試合2勝1敗、勝ち点6で1次リーグ9位。
数字だけ見ればそこまで悪くないように思えるが、特に最近のパフォーマンスには不安を感じさせるものがある。直近5試合の公式戦成績は2勝3敗。昨季の欧州王者パリ・サンジェルマンに1-2で最後に力負けして今季初黒星を喫すると、その4日後のセビリア戦ではディフェンスラインの背後を何度も突かれ1-4で惨敗。続くジローナ戦は何とか2-1で勝利したものの、ボールロストと不正確なプレーが目立ち、再びDF陣が裏を取られた。オリンピアコス戦は実力の違いを見せて6-1の圧勝を飾ったが、直近のクラシコは1-2の点差以上に悪い内容で敗北を喫し、リーグ戦で首位レアル・マドリードに勝ち点5差をつけられた。
特にパフォーマンスの低下が目立つのがスペインリーグだ。バルセロナは昨季よりもあらゆる項目の成績が劣る状態で10試合を終えている。昨季の同時期より勝ち点は5少なく、得点数は33ゴールから25ゴールに減り、失点数は10ゴールから12ゴールに増加。ホームは4戦全勝だが、アウェーは6試合3勝1分け2敗と、敵地で勝ち点を取りこぼしている。
■14人負傷欠場の異常事態に
現地ではクラシコ敗戦後にさまざまな分析が行われ、大きな原因に挙げられたのがけが人の続出だ。これまでの公式戦13試合を通じ、メンバー23人のうち14人が負傷欠場を余儀なくされる異常事態がチームを襲っている。先日フリック監督はその原因究明を行なっていると話したが、今のところ解決策は見出せていないようだ。
クラシコでは、テア・シュテーゲン、ジョアン・ガルシア、クリステンセン、ガビ、ダニ・オルモ、レバンドフスキ、ラフィーニャの7人が負傷欠場。さらに、フリック監督指揮下で公式戦73試合中72試合出場と、1年以上ほぼ休みなくプレーし続けた中盤の要であるペドリが今週、1カ月半の戦線離脱を強いられた。ここに来てのペドリの離脱は今後、チェルシーやアトレチコ・マドリードなどとの対戦を控えるチームに大きな影響を与えることになるだろう。
そして背番号10を背負い、直近のバロンドールで2位となり、名実ともにバルセロナの顔となったヤマルも、恥骨に問題を抱えベストには程遠い状態にある。専門家はさらに、これから冬に向かい気温が低下することで症状が悪化する可能性を指摘している。
負傷者の続出はもちろん大きな問題だが、ピッチ内にも改善すべき課題がいくつも存在しているようだ。勝ち点を落とす原因のひとつとなっているのが脆弱な守備。フリック政権2年目となる今季、対戦相手に攻略方法を把握され、イニゴ・マルティネス退団により昨季のような守備戦術を実践できなくなっていることに加えて、DF陣がミスを連発し、前線のプレスが緩くなっている。
その結果、ハイラインはうまく機能せず、オフサイドトラップを失敗するシーンが何度も見られている。クリーンシートはわずか3試合のみで、公式戦7試合連続失点中と大いに苦労している。
■ヤマルの不調が大きく影響
攻撃面は十分な得点力を発揮しているが、最近は機動力や決定力の欠如が問題点に挙げられている。ラフィーニャの欠場、ヤマルの不調が大きく響いていると思うが、特にクラシコはボールのないところでの動きが不十分で、静的なボール支配に依存しすぎたこと、チャンスをほとんど作れなかったことなどが現地メディアに指摘された。
また、ベンチ入り禁止処分のフリック監督に代わって、クラシコで指揮を執ったアシスタントコーチのマルクス・ソルグはこの試合後、1対1の局面をあまり作れなかったことや守備の位置が低くなったことを認めていた。
現在、バルセロナのサポーターの間では、フリック監督の擁護派と懐疑派に意見が分かれている。前者はチーム不調の原因が攻撃陣の相次ぐ負傷と考え、いずれ事態は好転していくと楽観視している。後者は、昨季成功を収めた選手たちの意欲をフリック監督が掻き立てられず、チームをうまくコントロールできていないこと、昨季のような攻撃的で魅力的なサッカーをできていないことが、今の結果につながっていると指摘している。
克服すべき課題は山積みではあるが、けが人の復帰とともに、徐々に昨季のようなサポーターを魅了するバルセロナらしいサッカーで、スペインリーグを盛り上げてくれることを期待したい。【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)
レアル・マドリード戦で倒れ込むバルセロナのペドリ=10月26日(ロイター)

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