(CNN) ウクライナ東部の要衝ポクロウスクをめぐる戦闘が激化している。ロシア国防省は、同地の防衛にあたるウクライナの特殊部隊を殲滅(せんめつ)したと主張した。一方、ウクライナ側はこうした主張を否定している。
ロシア軍はここ数週間、ポクロウスクへの侵攻を開始し、ウクライナ軍の補給路を封鎖しつつある。
ロシア国防省によると、ウクライナ軍の特殊部隊はヘリコプターでポクロウスク北西部の郊外に降下した。非公式のロシア系SNSに投稿されたドローン(無人機)の映像では、ウクライナ兵がヘリコプターから展開する様子が映されていた。同省はウクライナ兵11人が死亡したと主張した。この作戦が実施された時期は明らかでない。
ウクライナ情報機関の情報筋はCNNに対し、ロシア側の主張を否定した。ウクライナの国防省情報総局トップのブダノフ氏が主導する作戦がポクロウスクで続いているとしている。
ウクライナ軍第7空中強襲軍団は声明で、ポクロウスク地域への上陸作戦が成功したと発表した。複数の部隊が連携して行う複雑な作戦だったとし、市内のいくつかの地区で戦術的な陣地の改善に成功したという。ウクライナ軍はポクロウスクで攻撃部隊の数を増やしているとし、過去1週間でロシア兵85人が死亡したと主張した。
ウクライナ軍のシルスキー司令官は1日、ポクロウスクと隣接する町について、包囲も封鎖もされておらず、兵站(へいたん)を維持するために全力を尽くしていると強調した。
シルスキー氏は、ロシア軍をポクロウスクから排除するための作戦が進行中だと述べ、自身が現地を訪れて防衛態勢を調整したことを明らかにした。
ロシア国防省は1日、ポクロウスクの鉄道駅周辺で、包囲したウクライナ軍部隊の殲滅を続けていると発表した。ウクライナ軍が脱出しようとする試みを複数回退けたという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は10月28日、約200人のロシア兵がポクロウスクに侵入したと述べていた。映像では、同市の南部でロシア兵の小規模な部隊が移動する様子が確認されている。
米シンクタンク戦争研究所(ISW)によると、ウクライナ軍は反撃を試み、町の北部でわずかに前進したという。
もしポクロウスクが陥落すれば、ロシア軍は、2023年5月にバフムートを制圧して以降で最大の都市圏を占領することになる。同市は道路と鉄道の要衝であり、制圧されればロシア軍はドネツク工業地帯の主要都市クラマトルスクやコスチャンティニウカにさらに接近する。

ロシア軍に向けて自走榴弾砲を発射するウクライナ軍兵士=10月、ウクライナ・ポクロウスク/Anatolii Stepanov/Reuters
ウクライナの非公式の戦況分析サイト「ディープステート」によると、ロシア軍は10月にウクライナの領土267平方キロを新たに占領した。これは9月と同じ規模の進展だという。
パイプラインを爆破
ロシア軍が各地の前線でじりじりと前進する一方、ウクライナはロシアのエネルギーや軍事インフラを破壊・妨害するための長距離攻撃を続けている。
ウクライナ国防当局によると、ウクライナの破壊工作員が10月31日、ロシア・モスクワ州で、燃料を運ぶパイプライン3本を爆破した。ウクライナはロシアの精油所やパイプラインなどを狙う作戦を続けている。
ウクライナ国防省情報総局は声明で、ロシア軍に燃料を供給していた石油パイプラインが特別作戦によって機能を停止したと発表した。

ウクライナの情報機関によれば、工作員がロシア・モスクワ州で燃料輸送パイプラインを爆破した/From Defense Intelligence of Ukraine
情報総局は、モスクワ州南部ラメンスコエ付近で無人機防御用のネットに覆われた3本のパイプラインに装置が設置されたとみられる写真を公開。さらに、爆発で数百メートル上空に炎が上がる様子を映した映像も公表した。
情報総局によれば、ガソリンとディーゼル、航空燃料の輸送に使用していた3本のパイプラインがすべて同時に爆破されたという。
ロシア当局は爆発や燃料供給の混乱について、これまでのところ何の発表もしていない。近郊の地方当局は、一部で停電が発生したと報告したが、原因は明らかにしていない。
ウクライナは今夏以降、長距離無人機やミサイルを使ってロシア領内深くの施設を攻撃し、エネルギーインフラへの継続的な攻撃を始めている。

WACOCA: People, Life, Style.