プラモデルはガンプラの需要が非常に高い。ツールも充実し売り場は拡大傾向

 タムタム大宮店は2025年で20周年、松枝店長はタムタム大宮店に勤務して10年とのこと。タムタムそのものは岐阜県からスタートしたホビーショップで、北海道から九州まで全国で20の店舗を運営している。岐阜市忠節にタムタム忠節店を開業したのが1975年で、創業50周年になる。タムタム大宮店では大宮店20周年、タムタム50周年を記念した展示も行なわれていた。

タムタム50周年、タムタム大宮店20周年を記念し、昔の玩具などを展示していた

 松枝店長は10年このタムタム大宮店で勤務してきた。プラモデル、RCカー、フィギュア、鉄道模型などここ10年でそれぞれの商品がアップデートされ、ユーザーの遊び方や人気製品も変わってきた。特にコロナ禍の前後では大きくユーザーの傾向が変わってきたという。

 その中でもタムタム大宮店を含めた各店舗の最大の主力商品が「プラモデル」だ。プラモデルはユーザーの人口が一番多く、ライトからコア層まで幅広い。その中でも大きなシェアを占めているのがBANDAI SPIRITSの商品、特に「ガンプラ」だと松枝店長は語った。

 松枝店長はガンプラこそコロナ前後で最も変わったともいえるジャンルだと指摘する。新型コロナの流行により外出を自粛する風潮となり、“おうち需要”が一気に増した。このとき比較的安価で、どこまでものめり込むことができるガンプラは、非常に大きな人気を博したっという。アニメやゲームで展開しているガンダムだからこそ興味を持つ人が多く、これまでガンプラを手にしていなかった人も作るようになった。この勢いはコロナ禍を抜けてからも止まらず、現在ガンプラブームと言える活況になっているとのこと。

 松枝店長はコロナ禍とその後でガンプラの棚の様相が全く変わってしまったと語る。コロナ禍以前は「Zガンダム」、「ユニコーンガンダム」など様々な時代のガンプラが棚に並んでいた状況だった。しかしコロナ禍で人気が過熱、さらにプレミアムバンダイやガンダムベースでの販売など限定商品が増え、小売店に回ってくるガンプラの量が減った。結果として新番組の主役機の「ジークアクス」や万博に展示されていた「1/144 RX-78F00/E」など大量に生産されたガンプラはあるものの、新製品や再販で人気の高い機体は争奪戦が過熱し売り切れてしまう状況が目立ち始めた。ガンプラはコロナ禍以降も品不足の状況が続いているとのことだ。

 スケールモデルに関してはタミヤ、フジミといった国内メーカーの商品は安定した人気を保っている。しかしコロナ禍で海外からのスケールモデルの供給が少なくなった。加えて今でもウクライナのプラモデルメーカー・ICMは供給量が少ない。海外プラモデルファンは全体的に供給が少なくなっているのが現状だという。

 さらに松枝店長は昨今のプラモデルの傾向に関し、「ここ10年のプラモデル業界では『美少女プラモデル』の躍進が目立つ」と語った。コトブキヤの「フレームアームズ・ガール」、「武装神姫」を皮切りに、グッドスマイルカンパニー、マックスファクトリー、アオシマなどどんどん参入メーカーが増え、今や人気のジャンルとなっているという。

 こういった状況を受け、タムタム大宮店ではプラモデル売り場の面積は、ここ10年で拡大しているという。美少女プラモデルという新しいジャンルに加え、パーツ、工具なども種類が増えたことが大きいと松枝店長は語った。。

 工具ではゴッドハンドの「アルティメットニッパー」など高級な工具が出てきた。塗料メーカーではタミヤ、GSIクレオスに加え、ガイアノーツの「ガイアカラー」が勢いを増している。エアブラシのコンプレッサーも価格帯が広く、騒音対策した商品もあるなど選択肢が増えている。プラモデル向上委員会のツールは、これまではモデラーが自作していた様なツールを商品化することで模型のハードルを下げている。プラモデル製作環境は目覚ましい進化をしているとのことだ。

【プラモデル工具】

塗料、工具類は新規メーカーの参入などで大きく充実エアブラシのコンプレッサーも選択肢が増えているフィギュアは店舗に寄ったときに手にしやすい「POP UP PARADE」が人気

 一方、フィギュアに関して松枝店長は価格の上昇が顕著だと指摘する。超合金などの合金フィギュアやアクションフィギュアは、以前は小売店には入荷が少なく売り切れることが多かった。しかし昨今ではフィギュアの種類が増え、品数も充実してきているものの価格の高さ故か、人気が高いはずの商品も売れ残る商品が見えてきたとのこと。

 またフィギュア化されるモチーフも現在は40代以上を対象にしたキャラクターが多く、値段も高いため、若いユーザーの需要とずれているのではないか、という感覚も松枝店長は持っている。年齢が高いユーザーは本当に好きなキャラクターでないとフィギュアを買わないため、昨今、高級アクションフィギュアは苦戦気味だという。

 高級フィギュアの価格が上がり購入のハードルも高くなっている中、価格帯とできの良さで人気が上がっているのが、「食玩フィギュア」だと松枝店長は分析している。リーメントなどの小物系はフィギュアファンだけではなく女性にも人気がある。「シルバニアファミリー」も中身のわからない「ブラインドボックス」タイプの商品の展開が人気で、食玩/ミニフィギュア関連はユーザーの幅が広がっている。

 高級フィギュアの価格上昇の中で、フィギュアメーカーは「低価格ブランド」を展開している。タムタム大宮店ではグッドスマイルカンパニーの「POP UP PARADE」シリーズが人気で、店舗を訪れた人が購入するケースが多いとのこと。松枝店長はフィギュアに関しては立地や客層でも売れ行きが違うということも語った。大宮店では「POP UP PARADE」が人気だが、3万円以上するフリーイングのバニーガールフィギュアの人気が高い店舗もあり、そこでは高級フィギュアを多めに置いているとのことだ。

フィギュアはかなり価格が上昇、店舗で手にしやすい「POP UP PARADE」が人気だ

【食玩/ミニフィギュア】

食玩やミニフィギュアは女性など幅広い層に人気トイガンはCO2ガスガンが存在感を示す。サバゲーのアパレル関係も人気

 「トイガンはコロナで大きく変化した」と松枝店長は語った。10年前はサバイバルゲーム全盛期と言える活況で埼玉県内でもサバゲーフィールドがいくつもオープンした。だがコロナによってその勢いは制限され閉鎖したフィールドも多かったとのこと。“おうち需要”としてトイガンは売れたが、サバゲー関連商品も売れ行きが悪くなった。しかしコロナ禍が終わると共にサバゲー人気は復活しているという。

 サバゲー人気の復活の大きな鍵はサバゲーフィールドとユーザーの確かな結びつきだと松枝店長は語る。コロナ禍でも常連のユーザーが、サバゲーフィールドを支え、確かなコミュニティを持っているフィールドがコロナ禍を生き延びたのではないかと分析しているとのこと。

 タムタム大宮店はサバゲーファンや、初心者を支える品揃えを心がけているという。目を守るアイウェア、迷彩服、ホルスター、グローブ、そういったサバイバルゲームを楽しむためのアパレル関連も販売している。日本でサバゲー関連商品を販売しているメーカーと連携し、品揃えを充実させているという。一方、おうち需要という意味では家の中で撃てるターゲットなどは売り場を大きくしている。

 トイガンでは東京マルイは最大手だと松枝店長は語った。初心者からベテランまで東京マルイの商品を買えばサバイバルゲームでも戦える。サバゲーファンがまず手にするのが東京マルイ商品だという。その上で昨今人気を獲得しているのがCO2ガスガンとのこと。ライラクス、BATON、マルゼン、マルシン工業、KSC、カーボネイトなどがCO2ガスガン商品の販売を始めている。

 また、タムタム大宮店はG&G製品が充実しているとのこと。G&Gは台湾のメーカーだが、G&G JAPANという代理店が日本で展開しており、タムタムは問屋を通じてG&Gと関係を強めている。松枝店長はG&Gは東京マルイの姿勢を学び、ユーザーサポートにも力を入れていると語った。10年前と比べると海外メーカーや代理店も増え、ガスガン、電動ガンの販売店に並ぶ商品の顔ぶれも変わりつつあるとのことだ。

 一方、モデルガンは昨今元気がない印象だと松枝店長は語った。組み立てキットなどの定番商品が減り、高価なカスタムや、限定商品が増えていて、売り場面積として縮小しているとのこと。

アパレル、ゴーグル、ホルスターなどサバゲー関連は人気が復活している最新技術導入で著しく進化するRCカー

 タムタム大宮店は店内のみならず、屋上にも大きなサーキットがあり、RCカーファンとしっかり繋がっている。開店以来20年来の濃いファンもいて、しっかりしたコミュニティの拠点としてファンと共に成長を続けているとのこと。

【屋上のサーキット】

屋上のサーキットはタムタム大宮店の大きな特徴だ

 松枝店長は「RCカーは最新技術による進化が著しい」と紹介した。大容量、大出力のリチウムイオンバッテリーで、瞬間的な出力、持続力が大きく向上。さらにブラシレスモーターで以前のものとは段違いの性能を発揮するようになった。その上でスピードコントローラーも電子的に向上し、実車のターボやスーパーチャージャーのような特性を持たせることができたり、レスポンスが向上、ジャイロによる補正など様々な機能を獲得している。こだわることで様々な電子制御を組み込むことができるという。

 さらに松枝店長はRCカーには「2つの潮流」があると説明してくれた。RCカーにはタミヤが提示するグリップを効かせてカーブを曲がり、直線でのスピードを重視する「ツーリングカー派」と、ヨコモの製品が強く押し進める、車体を滑らせてカーブをパスしていく「ドリフト派」があるという。以前はその棲み分けがとてもはっきりしていたが、今はツーリングもドリフトも両方やる、という人が増えてきたという。

 さらにドリフト派は新規メーカー参入でRCファンの関心を集めているとのこと。現在、ドリフト向けRCカーでは後輪駆動がトレンドで、ヨコモに加え数社が参入しさらに充実している。元ヨコモの社員が独立して立ち上げたドリフト専門RCメーカー「Reve D」や、岐阜でR31型スカイラインの専門ショップだった柴田自動車が「R31HOUSE」というRCメーカーを立ち上げ、注目されているとのことだ。

 特にReve Dの「RDX」というシャーシは、従来は調整式だった前輪のステアリングを厳密に調整した上で固定パーツとしており、組み立てればまっすぐ走るように設計されている。「設計者が考えた最適のセッティングが部品を組み立てるだけで実現できる、という流れは昨今のRCカー組み立てキットで目立ってきた」と松枝店長は語った。

大宮は鉄道ファンが集う街! 鉄道模型のみ買い取り中古販売サービスも実施

 タムタム大宮店は鉄道模型コーナーも非常に充実している。タムタム大宮店は、KATO、TOMIX、グリーンマックス、マイクロエースのNゲージ商品が中心で、多くの在庫だけでなく、ジオラマの材料も充実、さらに中古販売も行なっているという。

 大宮駅はターミナル駅であり、鉄道博物館もあり、鉄道ファン、鉄道模型ファンが多い土地柄だと松枝店長は語った。だからこそタムタム大宮店は他の店舗と比べても鉄道模型の品揃えは充実しているとのことだ。

鉄道模型は大宮という土地柄で、非常に人気だという中古販売も行なわれている

 鉄道模型は他のホビー商品に比べると近年の価格の上昇は控えめだという。松枝店長は「KATOなどは『キハ○○周年記念商品』など実際の車両の記念や、鉄道会社のキャンペーンに合わせ商品の再販や、記念商品を販売してくれます。こういった細かい盛り上げ方がユーザーの心をつかむと思います」と語った。「最後の運行で本当は乗りに行きたかったんだけど乗れなかったから、鉄道模型を買いに来た」というお客さんもいたとのこと。

 また、グリーンマックスは未塗装のボディを発売し、ユーザーがカスタマイズをしてより細かく現地使用の車両に近づけるキットも販売している。こちらは完成品より安価ということもあり、ファンの心をつかんでいるとのこと。このほか、鉄道模型は“老後の楽しみ”として年配のユーザーが新たに参入するするケースも増えていると松枝店長は語った。さらに「鉄道には興味がないけどジオラマを作りたい」といったユーザーもいるとのことだ。

 タムタム大宮店は以前はプラモデルの中古販売も手掛けていたが、現在は鉄道模型だけ買い取りと中古販売を行なっている。松枝店長は、「中古の買い取り価格は土地柄や店舗で大きく変動します。お客様がタムタム大宮店の鉄道模型人気、店員を信用してコレクションを売っていただけるのはありがたいです」と語った。

昨今では小さいサイズのミニカーが人気だという1/64の「MINIGT」という香港メーカーの製品が人気

 松枝店長はタムタム大宮店の他のホビーに関して、昨今の傾向として1/64ミニカーのい人気が高まっており、特に「MINIGT」という香港メーカーの製品が人気となっていると指摘した。国内だけでなく、中国や台湾からもMINIGTのミニカーを買いに大宮店を訪れる人が来るとのこと。現在、中国だけでなく台湾もミニカー、鉄道模型ブームが来ており、価格が高騰しているため、日本で買った方が安い、という状態になっているとのことだ。

 最後にユーザーへのメッセージとして松枝店長は「タムタム大宮店は地域最大のホビーショップです。来ていただき楽しんでいただけるような売り場作り、商品のご提案をさせていただいています。お客様のご来店を心よりお待ちしています」と語った。

 タムタム大宮店は筆者がこれまで取材してきた店舗以上の規模で、各分野の専門性に圧倒された。さらに松枝店長による各分野の最新商品や、流行、ユーザーの反応は、メーカーやイベント取材では得られない情報も多く、非常に興味深かった。地域によるユーザーの傾向の違い、ホビー商材だけでなく、ユーザーの傾向、社会情勢などで売り場を変え、売れ筋商品をアピールするだけでなく、ユーザーに遊び方を提案する売り場作りなど、非常に興味深かった。今後も様々なホビーショップを取材したい。

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