30日のニューヨーク外国為替市場ではドル指数が続伸し、一時約3カ月ぶりの高値を付けた。米国の年内追加利下げ観測後退や円安の進行がドルを押し上げた。円は対ドルで154円台に下落し、2月以来の安値となった。

為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1218.604.590.38%ドル/円¥154.11¥1.380.90%ユーロ/ドル$1.1572-$0.0029-0.25%  米東部時間16時52分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.6%上昇し、8月1日以来の高値を付けた。その後はやや上げ幅を縮小した。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は29日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、市場の追加緩和観測を念頭に、12月の利下げは既定路線ではないと警告した。発言からは、雇用情勢とインフレ見通しを巡り、金融当局内の見解の相違が深まっていることが浮き彫りとなった。

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  一方、日本銀行は市場の予想通り、政策金利の据え置きを決定。反対も2人で、前回と同じだった。

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  ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏はこの日のドル指数上昇について、「FRBがタカ派的だったことを受けた動き」と解説。「日銀が基本的に利上げを12月まで先送りする姿勢を示したこと」も、ドルを支えていると述べた。

Dollar Rallies After Powell Casts Doubts Over December Cut

 

 

  円は一時、前日のニューヨーク終値比1.1%安の1ドル=154円45銭を付けた。今回の日銀決定にタカ派的シグナルがほとんどなかったことも円安につながった。

  マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・スフト氏は「日本の新政権はこのところ経済成長重視の姿勢を示している」と指摘。「その政策実現のため、新政権は円安を受け入れようとしているし、実際のところ、それを望ましいと考えているだろう」と述べた。

  ベッセント米財務長官は日銀にインフレ抑制への取り組みで裁量の余地を与えるよう日本政府に呼び掛けている。米金融当局は政府機関閉鎖で利用できる経済指標が限られる中で12月の利下げを模索することになり、金融市場にとって不透明な日米金融政策を見極める局面が続く。

ドル・円相場の推移

 

 

  片山さつき財務相は30日、日銀が金融政策の現状維持を決めたことを受け、「景気情勢を勘案した極めてリーズナブルな判断」との見解を示した。テレビ東京のインタビュー取材に答えた。

  片山財務相は「金融政策の手法は日銀に委ねられている」とし、植田和男総裁が適切に状況を見ながら判断していると話した。

  足元で進んでいる円安については「マーケットは実需とは関係ないところで動く部分が大きい」と指摘。その上で、「ファンダメンタルズを成長路線に乗せ、国家の信用を落とさないことが重要だ」と語った。

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  欧州中央銀行(ECB)は中銀預金金利を2%に据え置いた。インフレが抑制され経済成長が続く中で、3会合連続の据え置きとなった。

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  ユーロは対ドルで一時0.5%安の1ユーロ=1.1547ドルまで下げ、その後下げを縮小する展開。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのストラテジスト、エリアス・ハダッド氏はECBについて「追加緩和に踏み切るハードルが高いことも示唆した」と指摘。「このことはドル高の勢いをやや抑え、ユーロ・ドルが1ユーロ=1.1500ドルを下回って、その水準が続く可能性は低いことを示唆する」と述べた。

株式

  米国株は下落。S&P500種株価指数は、時価総額の大きいハイテク株の一角が下げたことで全体が押し下げられた。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数6822.34-68.25-0.99%ダウ工業株30種平均47522.12-109.88-0.23%ナスダック総合指数23581.14-377.33-1.57%

  メタ・プラットフォームズは一時13.5%急落。同社は人工知能(AI)関連の支出を賄うため大型起債計画を発表。投資適格級としては今年最大となる300億ドル(約4兆6200億円)の社債を発行すると明らかにした。

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  トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談を経て、両国は通商対立の休戦で合意したが、市場関係者の多くは相場にはおおむね織り込み済みだと捉えている。

  テクノロジー銘柄主導で進んできた米株式相場の大幅上昇はこの先、小休止する可能性がある。大手ハイテク株はこのところ他業種を大幅にアウトパフォームしてきており、株式市場はバリュエーションが高く、上昇銘柄が一部に偏っているとの警戒が強まっていた。

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「AIバブルが崩壊するとか、株式相場がこれから大きく反転するといったことを意味しているわけではない。しかし、短期的な調整局面を迎える可能性は高まっている」と述べた。

  ハイテク株ではマイクロソフトも下落。前日の通常取引終了後に発表した決算が期待外れと受け止められた。一方、売上高が市場予想を上回ったアルファベットは上昇した。

  ハイテク大手7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数は2.7%下落した。

  AI関連向けの巨額の投資負担が鮮明になる中、投資家の忍耐が試されている。前日に決算発表を行ったアルファベット、メタ、マイクロソフトの設備投資額は7-9月期に合わせて約780億ドルと、前年同期比89%増加した。

  通常取引終了後に発表されたアマゾン・ドット・コムの決算では、クラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が約3年ぶりの力強い成長を示した。株価は時間外で上昇。アップルは中国での売上高が減少し、アナリスト予想も下回った。

  ニュー・コンストラクツのデービッド・トレーナー氏は「ハイテク大手決算で投資家が注目している唯一の点は、AI競争に最も長くとどまれるのはどの企業かということだ」と指摘。「これだけ巨額のAI投資を永遠に続けられる企業などない。従ってAIから最も早く、また最も大きな利益を得る方法を見いだした企業が勝者になる」と述べた。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「AI関連銘柄が今後も株式相場の上昇をけん引するとの見方を当社は維持している」とし、「AI分野への資金配分率が低い投資家は、分散されたアプローチを通じてエクスポージャーを高めるべきだ」と述べた。

国債

  米国債相場は続落(利回り上昇)。メタの起債で社債供給が再び活発化したことが相場の重しとなった。メタの計画は、投資適格級としては今年の社債発行で最大規模。

国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.65%2.90.62%米10年債利回り4.10%1.90.47%米2年債利回り3.60%0.60.17%  米東部時間16時52分

  米国債利回りは前日、パウエルFRB議長が12月FOMCでの利下げは既定路線ではないと述べたことを受けて大幅に上昇した。この日の上昇幅はそこまで大きくなかったが、全ての年限で上げた。

  マスミューチュアルの投資戦略責任者ケリー・コワルスキ氏は「利回りが一段と低下するには景気の悪化が必要だが、今その状態にはない」と指摘。その上で「FRBのタカ派的スタンスにはやや意外感があった」と述べた。

  DWSアメリカズの債券責任者ジョージ・カトランボーン氏はFRBについて、2022年から23年に政策金利を5ポイント余り引き上げたが、それ以降1.5ポイントしか下げていないと指摘。「FRBが中立ではなく、まだ景気抑制的な姿勢でいることを認識しておくのは重要だ」と述べた。

  メタの社債発行は、2023年に310億ドル相当を起債したファイザーに迫る規模となる。投資家の注文額1250億ドルは、2018年にCVSヘルスが400億ドル相当を起債した際の1200億ドルを上回り、過去最高を更新した。

原油

  ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらず。米国によるロシア石油大手2社への最新の制裁が、インド向け供給にどの程度影響を及ぼすのか見極めようとのムードが強かった。また米中貿易協議の進展が米国産原油の対中輸出再開につながるのかも意識された。

  米国が先週、ロシア石油大手2社を制裁リストに加えたことを受け、インドの一部製油会社はロシア産燃料の購入を一時停止している。ただし、国営インド石油会社は今週、ロシア産原油の購入を「打ち切る考えは一切ない」としていた。

  仏エネルギー大手トタルエナジーズのパトリック・プヤンヌ最高経営責任者(CEO)は、原油市場は制裁の影響を過小評価しているとの見方を示した。

  市場は世界の需給バランスへの影響を探る手掛かりとして、ロシア産原油の主要な購入国であるインドと中国の次の動きを注視している。

  パウエルFRB議長は前日、12月の追加利下げ観測をけん制し、原油価格の上値を抑える要因になった。世界2位の原油輸入国である米国が、利下げによる景気刺激効果を得られないとの懸念が広がっている。

  BOKファイナンシャルのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「0.25ポイントの利下げは想定内だったが、FRB議長の発言は短期的な原油下押し要因になっている」と指摘。その上で、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)期近物は58.18ドル付近でテクニカルな下値支持を得るだろうと付け加えた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比9セント(0.15%)高の1バレル=60.57ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は8セント(0.12%)上昇し、65.00ドル。

  金スポット相場は5営業日ぶり上昇。米中首脳会談の結果を消化する中、買いが優勢になった。

  トランプ大統領は「素晴らしい会談」だったとし、中国がレアアース(希土類)輸出規制を停止し、米国産大豆の購入を再開する方針を示したと明らかにした。一方、習近平国家主席は、中国は貿易やエネルギー、人工知能(AI)などの分野で米国と協力する用意があると述べた。新華社通信が伝えた。

  サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「米中関係の筋書きを立て直すために、選択的な貿易ルートの再開を通じて信頼を回復しようとする試みのようだ」と指摘。「ただし金市場は依然として不確実性を警戒している。緩やかな米金融緩和や、くすぶる地政学的リスクを織り込みつつある」と話した。

金はここ最近下落、売り圧力強まる

 

 

  前日には、パウエルFRB議長が12月の利下げについて「既定路線ではない」としていた。金利が上昇すると、利子を生まない金にとっては通常マイナスとなる。

  金はここ最近、大きく値を下げていた。それまでは急騰局面が続き、20日に4381.52ドルと、過去最高値を更新していた。

  シュローダーのマルチアセット・債券責任者、セバスチャン・マリンズ氏は「市場は自然な調整局面を迎えているが、今回の強気相場は潜在的なマネー需要の幅広さと深さという点で、過去の強気相場とは比較にならないと引き続きみている」と語った。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時17分現在、前日比75.44ドル(1.9%)高の1オンス=4005.51ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は15.20ドル(0.4%)高の4015.90ドルで引けた。

原題:Dollar Rallies to Highest Since August on Fed Hawkishness

Dollar at Highest Since August; Yen Falls After BOJ: Inside G-10

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