米国と韓国が貿易合意を成立させたと、トランプ米大統領が述べた。
トランプ氏は韓国の李在明大統領が主催したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の夕食会に出席した際、「われわれは貿易で合意に達した」と、李氏と握手を交わしつつ記者団に語った。これ以上の詳細は明かさなかった。その後の夕食会で、韓国との会談は「素晴らしかった」とし、「貿易合意の大半は決着した」と続けた。
韓国大統領府の金容範政策室長も記者会見後に合意の成立を確認し、韓国は米国の造船業に1500億ドル(約22兆8400億円)を投資し、残り2000億ドルを米国と日本が結んだものに類似した投資枠組みに充てると説明。ただ、この枠組みによる米国への投資は年200億ドルに制限されると述べた。この額は韓国銀行(中央銀行)が今月初め、ウォン相場に悪影響を及ぼさずにドルを供給できる限度として挙げていた。
合意の決着が伝わり、韓国ウォンはドルに対して一時0.9%上昇。対円では最大1%上昇した。 韓国の具潤哲企画財政相は先週、最近のウォン下落は米国との貿易合意が決着していないことへの懸念を反映していると指摘していた。

APEC・CEOサミットで演説するトランプ米大統領(29日、韓国・慶州)
Photographer:SeongJoon Cho/Bloomberg
韓国が3500億ドルの投資を約束する代わり、米国が関税を引き下げる貿易合意を首脳会談で最終決着する可能性について、米韓双方とも慎重な見解を示していた。
だが、韓国車に対する米国の関税は15%に引き下げられることになったと、金室長は明かした。この関税は協議が続く間、25%に維持され、15%とされていた日本車に比べ韓国車は不利を被っていた。同率となったことで、関税面の日本車の有利は消滅する。
半導体についても、韓国企業の主要競争相手である台湾と比べて不利にならない関税率の適用で米韓は合意した。
韓国政府は今回の投資パッケージに関連し、金融リスクを抑え外為市場を保護するために重層的な安全措置を講じたと金氏は表明。「キャッシュフローの保証があり、商業的に実現可能なプロジェクト」だけを実施すると述べ、これが覚書にも明記されると説明した。
金氏によると、プロジェクトによる利益は元本と金利が返済されるまで半々の割合で両国で分配されるが、韓国が20年以内に元本を回収できない場合、この比率は調整される。また、一つのプロジェクトでの損失を他の案件による利益で相殺できるようアンブレラ型の特別目的会社を採用する。
トランプ氏は「非常に重要な多くの項目について結論に達したと思う」と発言。国家安全保障問題に関しても協議したとし、北朝鮮との緊張関係を巡り韓国を支援すると約束したと語った。
合意の完全な詳細は数日以内に公表され、それには追加的な安全の保証も含まれるという。ホワイトハウスは韓国側が発表した内容について、コメントの要請にすぐには応じなかった。
原子力協定
これに先立ち、両首脳は慶州で会談。李氏は数十年にわたる原子力協定の改定と潜水艦用の核燃料供給をトランプ氏に要請した。
「核燃料供給の承認を得ることができれば、韓国は自らの技術を用いて、通常兵器で武装した潜水艦を数隻建造することができる」と李氏は発言。「それにより朝鮮半島の東側と西側の海を哨戒・防衛でき、結果して米軍に対する作戦上の負担を大幅に軽減できる」と続けた。

米韓首脳会談に臨んだトランプ氏と李在明氏
Photographer:Andrew Caballero-Reynolds/AFP/Getty Images
李氏は核兵器搭載能力を持つ潜水艦を建造しようとしているのではなく、北朝鮮や中国の艦船の追跡に苦戦しているディーゼル潜水艦に代替することを目指していると強調した。
1970年代に初めて締結された米韓の原子力協定の下で、韓国が核燃料の再処理を行う際には米国の承認を必要としている。米国は核拡散防止および朝鮮半島非核化の一環として、この制限を課している。再処理された使用済み核燃料は核兵器開発につながる可能性があるが、韓国側はその目的が周辺環境および能力的な懸念によるものだと主張している。
同協定は2015年に更新され、35年まで有効。韓国の隣国である日本は既に、使用済み核燃料を再処理する権利を有している。
米国が韓国に対し潜水艦用の核燃料を供給する取引が進展すれば、アジア太平洋地域で2例目となる。米国と英国はオーストラリアと同様の合意を締結済みで、オーストラリア政府の最近の声明によると、米英は「将来のオーストラリアの原子力潜水艦向けに、潜水艦専用の素材と装備を供与する」ことに同意した。
トランプ氏は記者団の前で行われた協議の中で、韓国からの要請に直接応じることはなかったが、造船および相互防衛の分野で韓国と協力したいと述べた。
「米国の防衛は、他国を支援するという観点から極めて重要だ」とトランプ氏は語り、「だが、米国は韓国を保護し、協力していく」と続けた。
韓国側はトランプ氏の歓心を得ようと懸命だ。李氏は慶州国立博物館に展示されている金冠の複製をトランプ氏に贈呈し、さらに韓国政府の最高勲章であるムグンファ大勲章を授与した。
李氏はトランプ氏に続き、APEC首脳会議出席のため訪韓した中国の習近平国家主席とも会談する。李氏は6月に大統領に就任して以来、習氏と会談するのは初めて。
原題:South Korea’s Lee Asks Trump to Revise Decades-Old Nuclear Pact(抜粋)
US, South Korea Finalize Trade Deal After Months of Talks (2)(抜粋)
— 取材協力 Lauren Dezenski, Heesu Lee, James Mayger and Hyonhee Shin
(第4段落以降に貿易合意の詳細について加えます)

WACOCA: People, Life, Style.