2025年10月23日 午前7時30分

 【論説】鯖江市、越前市、越前町に集積する伝統工芸・産業の工房を開放し、10月上旬にあったイベント「RENEW」の一角に、「産業観光」に取り組む産地が連携した「KOGEI COMMONS(コウゲイ コモンズ)」が出展した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)などの支援で立ち上がった伝統工芸の継承や発展に取り組む全国組織のプラットフォームで活動の第一歩となった。

 会場には北は山形県、南は佐賀県までの11団体が集結。いずれも地場産業を抱え、工房開放のイベントを開いている。各団体のブースでは職人らが、自慢の製品の販売を通じて福井とはまた違う、それぞれの産地の魅力をアピールした。

 RENEWを含めた各団体ともイベント中の一過性の集客が目的ではなく、イベントを起爆剤に産地を活性化し、人口減の中でも、ものづくりを持続させていくことが共通の目的。その中でRENEWは行政の補助金に依存しない自主財源でスタートし、昨年までの10年間で延べ28万5千人を集客。若い移住者が出展企業に就職し、工房併設の直営店が多く生まれるなどの変化も産地に生み出してきた。10年の歩みは、産業観光イベントの全国的な成功事例となっている。

 コモンズはRENEWのノウハウを県外の産地と共有し、日本の産業観光をさらに強く、魅力的にしようというものだ。RENEWを手がける一般社団法人SOE(鯖江市)の新山直広副理事はコモンズ設立会見で「自分たちの産地だけ良ければいいという時代は過ぎた。産地を超えて共創し、連携していく必要がある」と強調した。RENEWの期間中には出展者同士の交流も盛んに行われ、今後の方向性について活発な議論が交わされたという。

 コモンズの展開はこれからだが、期待される福井側のメリットは大きく二つだろう。一つは福井が産業観光の中心地として広く、できれば世界的に認知されること。産業観光はまちの営みに触れ、まちの文化を体感できる。日本をより深く理解したい訪日客には最高のコト消費となる。その全国的な活性化にRENEWのノウハウが貢献できれば、産業観光における福井の聖地化も夢じゃない。

 また、地方の中小企業が大企業の下請けだった日本のものづくり構造において、地方同士がフラットにつながる新しい関係性を構築する挑戦でもある。各産地には独自の歴史、技術、風土がある。いずれの産地とも市場の縮小や後継者不足などの難題に直面しているが、刺激し合った上で強みを掛け合わせていけば、新たな商品や販路が生まれる可能性も十分にあると期待している。

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