日本代表FW上田綺世(27歳)が、覚醒の時を迎えた。ブラジル撃破の決勝点を挙げたのち、所属するフェイエノールトに戻った初戦でハットトリックを達成。現地で取材する外国人記者が覚醒の背景と恩師ファンペルシ、日本人パイオニア小野伸二との縁を記す。〈翻訳・構成:井川洋一。NumberWebレポート/全3回。第2回に続く〉

 日本代表が歴史的な勝利を収めたブラジル戦の71分に、上田綺世が強烈なヘディングで逆転ゴールを決めた時、現在27歳のシャイなストライカーはどちらかというと控えめに歴史的な得点を祝った。対照的に、東京スタジアムのスタンドは激しく揺れていたように見えたけれども。

 そんなシーンは、今季のフェイエノールト・ロッテルダムの本拠地で頻繁に見られている。その形状からデ・カイプ(バスタブの意)の愛称を持つスタディオン・フェイエノールトで背番号9がネットを揺らすと、そこは文字通り、熱狂と興奮の坩堝と化す。ピッチ上に目を向けると、得点者は感情を爆発させるわけではなく、仲間からの祝福を優しい笑顔で受け入れている。

「ヘイ、ウエダ! 今日もゴールを決めてくれるんだよな!」

 オランダ屈指のファナティックなサポーターの願いに、今季の上田は見事に応えている。2025-26シーズンのエールディビジ(オランダ1部リーグ)は第9節を終え、上田は19日のヘラクレス戦でハットトリックを達成するなど、11得点でゴールランキングの首位に立っている。次点には、アヤックスのオランダ代表ヴァウト・ヴェフホーストらが、6点差で追う状況だ。

 過去2シーズン通算で47試合に出場し、12ゴールしか記録していなかった上田の変貌には、オランダのフットボールファンも驚いている。

 彼が初めて欧州のクラブに入団したのは、2022年夏のこと。鹿島アントラーズからベルギーのサークル・ブルージュに移り、リーグ戦で40試合に出場し、22得点を挙げ、リーグ2位の得点数をマークした。

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