2025
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2025年10月20日、和歌山市のユタカ交通はAIを活用した「和歌山城下町観光あいのりタクシー」の運行を開始した。市内観光の回遊性と地域交通の利便性を高める狙いで、24日からは関西国際空港直結の送迎相乗りサービスも始動する。

目次

AIが配車を最適化、観光と空港アクセスを一体化

ユタカ交通は、SWAT Mobility Japanが提供するAIオンデマンド交通システム(※)を導入し、配車・予約・決済をアプリ上で完結できる仕組みを整えた。AIが同方向に向かう利用者を自動的にマッチングし、効率的な運行を実現している。

今回運行を開始した「和歌山城下町観光あいのりタクシー」は、和歌山市内約50か所の乗降ポイントを自由に利用でき、観光スポット巡りや買い物、日常の外出などに対応する。

運行期間は10月3日から11月30日までの金・土・日・祝日で、午前9時から午後5時まで。料金は1回券500円、1日乗り放題券1500円と手頃に設定されている。車両は日産「セレナ」(6名乗り)やトヨタ「ハイエース」(8名乗り)を使用し、翻訳機「ポケトーク」も搭載する。

さらに、10月24日からは「関空送迎相乗りサービス」も始動。和歌山市内の指定場所と関西国際空港を直通で結び、指定到着時間に合わせて運行する事前予約制のサービスだ。料金は1人6000円、手荷物は別途1000円。

同社は、観光客の移動利便性を高めると同時に、観光と生活の交通を一体的に整備する方針を示している。

地域交通の未来を拓くAI活用 持続性と共創体制が鍵に

AIを活用した相乗り交通は、地方都市が抱える移動課題への新たな解決アプローチとして注目されつつある。
観光シーズンや時間帯によって需要が変動する地域交通に対し、AIによる動的な配車最適化は、運行効率の向上や柔軟な運用につながる可能性がある。
特に、関空アクセスと市内観光を一体的にカバーする今回の仕組みは、移動を通じて地域経済の循環を促す試みとして位置づけられる。

一方で、AI交通の普及には継続的な利用者確保やコスト面の課題も想定される。
オンデマンド運行の特性上、利用が一時的に集中すると待機時間が発生する恐れがあり、需要の偏りをいかに平準化するかが運用上の焦点となる。
また、観光と生活交通の両立を図るには、行政・交通事業者・地元企業がデータや運行情報を共有する協働体制の整備が不可欠だ。

今後は、AIによる需要予測の精度向上や、宿泊・飲食事業者とのデータ連携を通じた地域DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が期待される。
こうした取り組みが定着すれば、和歌山発の取り組みとして他の地方都市に広がる可能性もある。

AI交通が地域社会の新たなインフラとして根付くかどうかは、その運用の持続性にかかっていると思われる。

ユタカ交通 プレスリリース

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