
初代首相に伊藤博文が就任してから140年もかかった。104代、66人目まで女性がいなかったことは明らかに偏りがある。それが正されたことは歓迎したい。自民党の高市早苗総裁がきのう首相に就いた▲目標の政治家は英国のサッチャー元首相だ。欧州初の女性首相で、今月が生誕100周年。彼女の勝負服にあやかったか。青の上着をまとって高市氏は、首相選出の議場で拍手を浴びた▲サッチャー氏が就任した46年前、「英国病」と呼ばれるほど経済が停滞していた。それを打開したのが新自由主義的な政策だ。格差を広げ、多様性を排した面もある。評価は二分されるものの11年半も政権を担った。強い信念から「鉄の女」と呼ばれた▲日本経済も今やすっかり存在感が薄れた。世界第4位の国内総生産(GDP)はインドにも抜かれそうだ。物価高で生活は苦しくなるばかり。「鉄の女」よろしく高市氏も経済再生に意欲を示すが、その手腕はいかに▲鉄が工業素材として重宝されるのは強固なだけでなく、曲げたり延ばしたりしやすいからだ。新たな連立政権は成っても、多党化の中で少数与党は続く。新首相にまず求められるのは、鉄のしなやかさの方か。

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