高市早苗首相が21日の組閣にあたって片山さつき財務相(写真)へ手交した指示書の内容が明らかになった。10月21日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 22日 ロイター] – 高市早苗首相が21日の組閣にあたって片山さつき財務相へ手交した指示書の内容が明らかになった。「『責任ある積極財政』の考え方に基づく経済・財政運営を行う」とする一方、「経済・財政新生計画に基づき、歳出・歳入両面からの改革を推進し、経済再生と財政健全化を両立させる」ことを求めた。
外国からの投資を厳格に審査する仕組みづくりを念頭に、「対日直接投資審査を高度化する枠組み」の検討も指示。城内実・成長戦略担当相へは「国家課題に計画的に取り組めるよう、財政の単年度主義の弊害是正に取り組む」などとも指示した。
ロイターが確認した指示書によると、高市氏は全大臣に向け「今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。日本の未来を切り拓く責任を果たすべく、絶対にあきらめない決意をもって、国家国民のため、内閣の総力を挙げて政策を推し進める」と明記した。
その上で各大臣に個別の指示書を手交。片山氏には「租税特別措置や補助金の適正化を進める」ことや、「対日直接投資審査を高度化する枠組みを検討する」ことも掲げた。日本維新の会との連立政権合意書に盛り込まれた「日本版CFIUS」が念頭にあるとみられる。
また、歴代政権の方針を引き継ぐ形で「資産運用立国・投資立国の実現に向けて、人的投資やインパクト投資を含めたすべての投資を促進する」と明記。「税と社会保障の一体改革、特に社会保険料負担で苦しむ中低所得者対策としての給付付き税額控除の制度設計に着手する」とも指示した。
赤沢亮正前経済再生相の後任となる城内氏には「責任ある積極財政」の考え方に基づく経済・財政運営を重ねて指示。「経済財政諮問会議において、毎年度の予算編成の基本方針の策定など、経済財政運営の基本方針等について、企画、立案及び総合調整を行う」ほか、「国家課題に計画的に取り組めるよう、財政の単年度主義の弊害是正に取り組む」とした。
また、「日本経済の力強い成長を実現するため『日本成長戦略』を立案・実行する」と記した上で、労働政策についても明記。「より少ない労働時間でより多くの賃金を得ることができる『稼げる日本』への変革を進めるとともに、意欲のある高齢者の就労を支援し望まない非正規雇用をなくすための改革を実施する」としたほか、「兼業・副業を促進するとともに、最低賃金の引き上げを加速させる」と指示した。
医療制度改革については「全世代型社会保障」の構築を掲げた上で、「データに基づく医療行政のメリハリ強化を進めるとともに、自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度の構築により、医療費を適正化」 し、「攻めの予防医療」を通じて「社会保障の担い手の拡大に取り組む」とした。
一方、「税制調査会に関する事務」や「日米間の合意の進捗管理及び関税措置による国内産業への影響を踏まえた必要な支援に関する総合調整」を城内氏の担当とした。
防衛体制の充実も強調した。小泉進次郎防衛相への指示書には「国家安全保障政策を一層戦略的かつ体系的なものとして実施する」とし、「国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化に取り組む」と記した。民生技術を積極的に防衛目的で活用することとし、「防衛生産・技術基盤を強化する」ことも明記した。
対中政策については 「戦略的互恵関係」を包括的に推進する姿勢を前提としつつ、茂木敏充外相に「日本として主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、対話を重ね、『建設的かつ安定的な関係』の構築を進める」と指示した。
(鬼原民幸)
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