中国の不動産に多額の資金を投じてきた海外投資家が、大幅な損失も覚悟の上で、相次いで物件を売却しようとしている。アジア最大の経済を長く圧迫してきた不動産セクターに、さらなる痛みが及ぶ可能性がある。

  2024年後半以降、ブラックロックやカーライル・グループなどの資産運用会社が、中国国内の商業ビルを相次いで売却した。いずれも取得価格を大きく下回る水準での取引となり、融資を行っていた銀行も損失を被った。

  非公開情報だとして匿名を条件に明らかにしたディールメーカーや銀行関係者によれば、他の海外機関投資家も中国不動産の売却を検討している。HSBCホールディングスやスタンダードチャータードなども、中国向け不動産融資の焦げ付きが増える恐れがあると警告している。

  MSCIリアルキャピタルアナリティクスがまとめたデータによれば、海外の不動産投資家は過去15年間で、中国のオフィスビル、倉庫、ショッピングモール、データセンターなどに総額約1400億ドル(約21兆円)を投じた。

  企業需要の長期的な拡大による恩恵を見込んだ投資だったが、その読みは外れた。供給過剰がかつてない規模に膨らんで賃料は下落し、多くの不動産価値が急落。10年前の価格を下回るケースも出ている。

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の報告書によると、中国の商業不動産において、ローンのデフォルト(債務不履行)や売り手が資産の管理権を喪失した際に発生する「ディストレスト売却」の規模は23-24年の合計で1140億元(約2兆4000億円)に達し、全売却額に占める割合は24年に22%と過去最高に達した。

  フィッチ・レーティングスの中国不動産業界担当ディレクター、レベッカ・タン氏は、市況の悪化によりディストレスト売却がさらに増える可能性があると警告。こうしたディストレスト売却が類似の商業不動産価格に波及し、相対的に健全な不動産の評価にも下押し圧力を及ぼすリスクがあるという。

  問題は、売却を先延ばしすればするほど損失が拡大しかねないことだ。投資家や銀行関係者によると、海外投資家が多く保有する北京と上海のオフィスの資本価値(推定市場価値)は、19年比で少なくとも40%下落しているという。

  中国の主要都市におけるオフィス空室率は20-40%超に達し、世界でも最高水準にある。中国経済はデフレ傾向と米国の追加関税の影響で弱含んでおり、不動産コンサルティング会社やエコノミストは、商業物件の過剰供給が吸収され、回復軌道に乗るまでには数年を要するとみている。

  BIでアジア太平洋不動産をカバーするシニアアナリスト、パトリック・ウォン氏は「外国人投資家は中国の不動産投資を巡り身動きが取れない状況にある」と指摘。出口戦略として最も現実的なのは、資金力のある中国国有企業など現地の買い手を見つけることだが、「国有企業でさえ不動産市場が改善する兆しを待っている」と指摘した。

Office Properties in Shanghai

かつてブラックロックが所有していた上海のオフィスビル

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

原題:A Troubled $140 Billion Bet on China Property Gets Even Worse(抜粋)

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