PayPayを使って韓国のAlipay+の加盟店で支払いが行なえる
既報の通り、PayPayの韓国での利用が9月30日から可能になった。韓国国内のAlipay+加盟店においてPayPayで本人確認済みのすべてのユーザーは同日から、PayPay残高、PayPayポイント、クレジットでの支払いが可能になる。
9月30日以降に韓国に渡航すると「海外支払いモード」が有効になり、店舗に掲示されたQRコードの読み取り(MPM)、またはPayPayアプリ上に表示されたバーコード(2次元コード)を店舗のバーコードスキャナーで読み取る(CPM)により支払いが行なえるようになる。
明洞の屋台がPayPayなどのコード決済を歓迎する理由
例えば日本人に人気の観光地である「明洞(ミョンドン)」では多数の屋台が出店しているが、店先にあるQRコードをPayPayアプリで読み取ることで支払いが行なえる。
韓国の首都ソウル屈指の繁華街である明洞は日本人に人気のエリアだが、夕刻にはこのように多数の屋台が建ち並ぶようになる
これら店頭ではAlipay+のアクセプタンスとともに、決済可能なブランドのアクセプタンスマークが複数確認でき、この中にPayPayの「P」マークも含まれている。これら屋台はもともと現金を中心に取り扱ってきたが、2024年初頭になると韓国政府が屋台のような露天の営業形態を見直し、結果としてクレジットカードやQRコード決済のようなキャッシュレス決済において売上金の受取に必要な事業者登録が可能になるよう方針転換を行なった。
結果として、中国などコード決済が日々の支払いの中心にある旅行者をターゲットにしたコード決済の導入が一気に広まる結果となった。
人気のトッポギ屋台を営むパク・チョンス氏によれば、同店がコード決済を導入したのは昨年10月のこと。前述のように中国からの旅行客がそのまますぐに利用できるという利便性もあり、非常に好評だったという。日本人に人気の明洞エリアだが、同氏の話では多いときで日本人の同店来訪者は3-4割ほど。これまで日本人が同店でキャッシュレス決済を行なう手段が皆無だったこともあり、支払いは現金が中心だったが、今後はPayPayを使って支払えるようになるため、さらなる来訪を期待しているところだ。
明洞の屋台で人気のトッポギ店舗
店舗に掲示されたQRコードをPayPayアプリで読み込み、金額を入力することで支払いを行なえる
明洞エリアの屋台はNAMANEという企業がアクワイアリングを行なってAlipay+加盟店を開拓をしている。9月30日以降に掲示されるアクセプタンスマークにはPayPayが追加される。支払い後はコリアウォン(KRW)での決済金額が表示されるが、PayPayアプリでは日本円での支払額がすぐに確認できるため、「請求金額がいくらか心配」といった懸念がない
インタビューに答えたパク・チョンス氏
韓国がキャッシュレス決済を好む背景の1つに、手数料的なペナルティが結果として少ないという理由がある。もともと脱税対策でキャッシュレス決済導入に税金的後押しを行なって普及率を高めたと言われる韓国だが、現金での取引については追跡が厳しく店舗にとっても負担が大きいというデメリットがあり、それよりは紙幣や硬貨の煩雑なやり取りが少なく、ミスがなくなるメリットもあるキャッシュレス決済の方が、店舗にとっても顧客にとってもプラスだという考えが大きい。
特に屋台のような営業形態の場合、現金のやり取りは手が止まってしまうなど効率面からもデメリットがあり、キャッシュレスはありがたいという考えのようだ。
またパク氏の屋台ではクレジットカードも利用可能だが、今回の訪問時は店頭では特に掲示はされていなかった。同氏によれば、クレジットカード決済の場合は決済端末を奥から引っ張り出して処理する必要があるが、コード決済は支払い自体はユーザー操作で、店舗は目視で確認するだけなので「できればコード決済で……」ということらしい。
10月初旬は中国圏でのゴールデンウィーク(大規模連休)にあたり、明洞の街にはそれを見越したAlipay+のポスターが随所で確認できた
韓国料理店でサムギョプサル(豚肉の焼き肉)を楽しむ。主な支払い手段はクレジットカードだと思われるが、Alipay+対応店舗ならPayPayでも支払える人気のコスメ店でもPayPayが利用可能に
「OLIVE YOUNG」は韓国でも屈指のコスメや健康食品を取り扱う人気店だ。ここ明洞エリアでも複数店舗を展開しており、日本からも若者層を中心に多くの来訪があるという。外国人の7-8割程度が中国からの来訪者で、残りの2-3割程度が日本人。支払い手段としてはクレジットカードが多いとのことだが若年層が多いということで、スマートフォンを使った決済手段であるApple PayやWOWPASS(ワウパス)を活用する利用者も多いとのこと。
WOWPASSは韓国の移動の要となる交通系ICカードとしても利用でき、外国人には現金によるチャージが前提となるT-Moneyに代わる手段として利用例が多い。
明洞にあるOLIVE YOUNGの大型店
前述のように、外国人は中国人比率が高いことから、決済手段としてはコード決済の比率が高くなるが、中には大量の現金を持ち込んでまとめ買いしていくケースもみられると、インタビューに応じた店員のリ・ジョンハ氏は述べている。
日本では未成年はクレジットカードが持てず、ある程度の年齢にならないと仮にクレジットカードを所持していても、実際の買い物は現金で……というケースが多いため(クレジットカードはオンラインショッピングなどのみで利用する)、やはり韓国旅行でも日本円をコリアウォンに両替して現地での支払いに充てる人も多い。
PayPayアプリでバーコードを表示して店員に読み取ってもらうCPM方式の支払い
そのため、実際に商品をレジに持ち込んでいざ支払いという段階になり、実際には手持ち金が足りずにいくつかの商品購入を諦めるケースもみられるとジョンハ氏は言う。
もし今後PayPayが韓国でも利用可能になるのであれば、支払いを全額PayPayにしたり、払えるぶんについては現金で支払い、残りの足りないぶんのみをPayPayで……といった支払い手段を分けることも可能だ。
海外旅行では、「使い切れなかった現金をどうするか」という問題は毎回ついてまわるが、残り金額が少ない場合は再度日本円に両替しても損するだけのため、韓国のように今後も訪問機会もあるような国の場合は現金をそのままキープして次回の旅行に持ち越す人も多い。PayPayをうまく使えば、こうした“中途半端”な現金の取り扱いがだいぶ改善すると考える。
インタビューに応じてもらったOLIVE YOUNG店員のリ・ジョンハ氏韓国でPayPayを利用開始するまで
すでに一部報道で「韓国でPayPayが利用可能」という情報が出回っていたが、9月中旬時点では本当にごく一部のPayPayユーザーでテスト的に機能が解放されていた状態で、実際にすべてのユーザーでPayPayが機能開放されたのは9月30日以降になる。
筆者の端末では韓国到着後、9月29日夜のタイミングでアプリを開くと「海外支払いモード」がようやく有効化され、PayPay残高がコリアウォンでの金額表示へと変化した。ホーム画面に韓国の国旗がデザインされた状態が、同国での「海外支払いモード」が有効になっているサインだ。
「海外支払いモード」が有効化されていない状態でPayPayを起動したところ。ほぼ何もできない
「海外支払いモード」が有効化されていない場合、韓国でPayPayアプリを開くとほとんどの機能が制限された画面となり、実質的に何もできない。だが一度「海外支払いモード」が有効化されることで、支払いのみならず、送金機能などが使えるようになる。これにより、支払い時に登録したフレンド同士で割り勘を設定したり、あるいは何かの折に支払いを代行してもらったときなど、友人にPayPayで送金といったことも可能だ。旅行中に精算を済ませてしまえるため、あとで「実はお金を渡すのを忘れていた」といった事態も防げる。
韓国に到着後、どこかのタイミングで「海外支払いモード」に切り替えるための画面が表示される。なかなかこの画面が表示されない場合、アプリを終了して再起動などを繰り返すといいかもしれない
一方で注意点として、筆者は「海外支払いモード」の有効化後に積極的に韓国内でPayPayによる支払いを行なっていたが、何度か決済が失敗してコンビニや料理店で取り扱いを拒否されたケースがある。これはクレジットカードでも発生する可能性があるが、安全策としてはクレジットカードを含む複数の決済手段を予備として用意しておき、適時使い分けることをお勧めする。
ぜひ、これら便利な決済手段を組み合わせて韓国旅行を楽しんでほしい。
「海外支払いモード」が有効化されたホーム画面
「海外支払いモード」が有効化された状態では、海外であっても送金機能が利用できる

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