唐鎌大輔さんと河田皓史さんの対談はJBpressのYouTube公式チャンネル「INNOCHAN」で配信中です。チャンネル登録もお願いします!

これまで安全資産として世界のマネーを吸い寄せてきたドルへの信認が揺らぎつつあります。世界経済を支えてきた米国株の暴落を懸念する声もある中、世界のマネーは米国からどこへ向かうのでしょうか。変化する世界のマネーの流れと日本の新政権に求められる役割について、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏と、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミストの河田皓史氏に、JBpress編集長の細田孝宏が聞きました。2回に分けてお届けします。

※JBpressのYouTube番組「JBpressのナナメから聞く」の内容の一部を再構成したものです。詳しくはYouTubeでご覧ください。(収録日2025年10月16日)

前編:【新政権で株・為替は?】誰が首相でも円安に!財政拡張でインフレを煽る政策の矛盾、日銀・植田総裁の腹の中は…

米国の長期金利が下がらず、米国株ショックの懸念

——日本経済への影響も大きい、米国景気の行方をどう見ていますか。

唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト(以下、敬称略):最も懸念しているのは、米国の長期金利がなかなか下がらないことです。市場では来年にかけて数回の利下げが期待されていますが、それでも10年物国債の利回りは大して下がっていません。

 通常なら、景気後退局面では安全資産である米国債が買われ、利回りが下がり、株式市場を支える——という構図になります。しかし、金利が下がらないままではそのメカニズムが機能しない可能性があります。

 その上で、何をもって米国株が崩れるのか。国際通貨基金(IMF)はプライベートクレジット(ファンドによる融資)市場にかなりリスクが蓄積していると指摘していますが、泥棒は鍵のないところから入ってきます。危機は誰も注目していないところから起きるから怖い。

米国マーケットに潜むリスクとは(写真:ロイター/アフロ)

河田皓史・みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部チーフグローバルエコノミスト(以下、敬称略):マーケットの関心は株価の大幅調整です。富裕層が消費を支える米国では、株価が落ちれば逆資産効果が起き、景気が一気に冷え込むリスクがあります。

 IMFや米連邦準備理事会(FRB)が警戒しているところがそのまま引き金になるとは限りません。当局者の発言や民間の分析を見ても、「ここが危ない」と明確な危険ポイントは今のところ見当たりませんが、どこかに潜んでいるのが怖いところです。

——円だけでなくドル安も進んでいます。世界経済への影響は?

唐鎌:以前ほど米国債市場への安定的な資本流入がないことから、ドル安が進み、これが世界経済を下支えしてきた「米国株の底堅さ」を揺るがす要因にもなり得ます。

 ただ、為替は相対的な動きです。ドルが売られる裏では他の通貨が買われています。現状、ドル売りの裏側で買われているのは主にユーロで、その次にスイスフランや北欧通貨など。春先以降、米国から欧州に資金ローテーションが起きているという説が取りざたされていますが、為替の値動きだけ見ていると、正しそうだなと思います。

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