人口減少が急速に進む中、いま野球をする小学生の数も少なくなっています。
半世紀以上続く老舗の野球チームと県内の新たな取り組みについて取材しました。
9月27日から高知県高知市で開かれている井口杯には県内の少年野球チームあわせて46チームが出場しました。選手宣誓をしたのは高知市の高知大学教育学部附属小で活動している附小スペクトルズです。
附小スペクトルズは1971年にできた少年野球チームで半世紀以上の歴史がありますがメンバーはいま10人とぎりぎりの数です。
翌日行われた1回戦では全員が交代で試合に出場。
相手は馬路村の馬路スポーツ少年団でこちらは控えが5人いましたが、低学年の児童が中心で、両チームともメンバーの確保が課題となっていました。
■馬路・上治監督
「人が少なくってなかなか厳しい状況にはなっている。2025年のチームは安田からも少し来てもらっているのでなんとかチームが組めているような状況。馬路の場合は小学生の数も少ないし、分母自体が少ないところが一番の原因」
■附小・大原監督
「今の5年生が10人のうち8人なんで、5年生が卒団すればなかなか2026年の井口杯は出場が厳しくなってくるので、何とかこの1年で部員を集めたい」
井口杯を主催している県軟式野球連盟によりますと2025年5月時点で加盟している少年野球チームの数は65チームで人数は1090人。
去年と比較すると6チーム減少し、人数も約50人減るなど毎年少しずつ減っている状況です。一方で、少年野球はいま男子児童だけでなく女子児童も入っていて、2025年は122人と全体の約1割を占めています。
少年野球人口が減少している背景には急速な人口減少に加えてスポーツの多様化。また、野球の練習時間の長さや試合の送迎・審判など保護者の負担の大きさが指摘されています。
実際、老舗チームはいまどんな活動をしているのでしょうか。
附小スペクトルズは毎週土日、学校で練習をしています。
10月4日の午前8時。この日は雨のため体育館でテニスボールを使ってキャッチボールなどをしていました。指導にあたるのはメンバーの保護者でもある大原監督。香川の強豪、尽誠学園出身です。
そして、コーチを務めるのもメンバーの保護者であるお父さんたちです。
附属小は全校児童が600人規模の県内ではマンモス校ですがスペクトルズに入部しているのはわずか7人で残る3人のメンバーは他の学校の児童です。
野球離れが進む中、附小スペクトルズでは数年前に朝から夕方まで行っていた土日の練習時間を午前中だけへと短縮しました。
■大原監督
「子供たちに昼から自由な時間というかいろんなことを経験してもらいたい。親御さんといろんな場所にいったり遊んでいただきたいということで」
そして、野球の技術だけでなく児童たちの生活面を整えることにも重きをおいています。
■大原監督
「僕自身が思う少年野球はまずは野球がうまいとか下手とかいうことじゃなくて礼儀であったり挨拶、もちろん日常の行い、学校での行いや家での行いも全部グラウンドに出ると思っているのでそういう所を指導していきたい」
毎回、試合の後には輪になって座り監督からその日の振り返りと指導を受けます。
附小スペクトルズに入っている野球少年たちは野球が大好きなようです。
■ 5年生
「守備とか強い打球が取れたら楽しいし、いいプレーしたらみんなが褒めてくれるので楽しい」「練習は大変だけど、それで上手くなれてみんなもチームも全体強くなるので楽しい」「負けたときは悲しいけど、それからどんどんレベルアップしていって勝っていくのが楽しい/ 野球はプロ野球選手になるまで 続ける」
また、お母さんたちも練習や大会に参加し、道具を運んだり、成績をつけたりとお世話をしています。
■保護者会会長 森さん
「熱中症対策、子供の体調管理。それが大変ですけど楽しさの方が勝ってる。何のスポーツにしても朝早いとか時間にしばられるのは絶対あると思うけど、子供が楽しんでる姿、あと親子での会話が絶対に増えます」
野球離れの要因と言われる役割を負担と感じるのではなくむしろ子どもと一緒に楽しんでいました。しかし2026年度、いまの5年生が卒団したら休部になる可能性が高い附小スペクトルズ。
何とか野球部を存続させようと11月には、体験会を開くことにしています。
野球人口が徐々に減っていく中、県軟式野球連盟では交流人口を増やす取り組みを6年前から始めていました。
10月8日、春野総合運動公園のグラウンドで開かれていたのは「U10高知家ベースボールアカデミー」です。
この教室は主に小学4年生を対象に月に2回開かれているもので2025年は東は室戸市、西は宿毛市など県内各地からおよそ90人が参加しています。
この日は高知ファイティングドッグスのコーチなどが指導にあたりました。
■中北副部長
「高知県内の4年生3年生いわゆるゴールデンエイジっていわれるこどもたちにまずは野球の楽しさをしっかり味わってもらいたい、味わいながらレベル強化レベルアップにつなげてもらいたいというのが軟式野球連盟の取り組みです。いろんなチームの子供さんと交わることで普段のチームと違った楽しさを味わえるかなと思ってます」
平日の夜にもかかわらずはるばる室戸市からアカデミーに参加している児童。地元の少年野球チームにも所属して活動していますが、このアカデミーを楽しみにしています。
■参加児童
「みんなと野球できる。人数が多くて楽しい」「フライのキャッチとか/守備がうまくなった」
■保護者
「練習試合もあまりなくて、経験がちょっと少ないんでいっぱい経験させてあげようと思ってそれで参加させていただきました」
アカデミーでは同学年のこどもたちが一堂に会するため、いまの自分のレベルを把握することができるとともに近い将来、中学校や高校で仲間やライバルになる相手と一緒に技術を磨く楽しさもあります。
■中北副部長
「高知県内出身、またアカデミー出身の子供さんが甲子園を目指すような大会のレギュラーメンバーとか活躍する場面を見させてもらうというのが我々の夢」
阪神の藤川監督など有名な野球選手を輩出し、野球王国と言われた高知県でも少年野球人口はじわじわと減っています。
しかし、それぞれのチームや連盟など関係機関は中学野球、そして高校、大学へとつながっていく少年野球の灯を消さぬよう工夫をこらしいま、努力を続けています。
「一緒に野球やろうぜ!」

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