トランプ大統領は本当に対中強硬姿勢を緩めるのか(写真:ロイター/アフロ)

対中強硬派のコルビー国防次官が構想転換?

 予測不能な施策の連発で世界中を翻弄し続けるトランプ大統領だが、今度は母国アメリカの国防戦略を根底から覆す歴史的大転換に挑む腹積もりのようである。

 これまでの「中国抑止」を大幅に後退させ、代わって国内の治安維持に米軍のリソースを積極的に振り向けるという構想だ。今年(2025年)9月5日に米政治専門紙ポリティコがその概要を報じ、内外の軍事・外交関係者を慌てさせている。

「ペンタゴン(国防総省)は対中脅威よりも本土(homeland)防衛への優先を計画」との見出しで、10月下旬に発表予定であるアメリカの新国家防衛戦略(National Defense Strategy=NDS)の草案概略を報道している。

 NDSとは3~5年に一度、政権を担う大統領の意向に沿った国防指針で、世界最強の米軍の今後の針路を決めるもの。国防総省が立案し議会の承認を経て効力を発揮する。

 記事によれば、第1次トランプ政権(2017年1月~2021年1月)が2018年に作成したNDS(2018NDS)で最優先に掲げた「対中抑止」を完全に覆し、北京やモスクワなど敵対国への対抗よりも、国内や地域的(南北米大陸)任務を上位に置く内容だという。

 草案作成の中心人物はペンタゴンのナンバー3・コルビー国防次官(政策担当)だが、これまで対中強硬派の最右翼として知られているため、つじつまが合わない内容にも見える。

 だが、実はコルビー氏は「アメリカの海外関与を減らすべき」との孤立主義も提唱する人物で、アメリカのバンス副大統領とはこの点で一脈通じる、とポリティコ紙は伝えている。

コルビー国防次官(写真:ZUMA Press/アフロ)

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