イタリア人のフィリッポ・モニさん【写真:Hint-Pot編集部】
日本には、訪れる人々を魅了する多様な文化があります。五感を刺激する食文化、繊細な伝統工芸、心を込めたおもてなし。その一つひとつが、海外から来た人たちの心に深く残る体験となっています。訪日経験があるイタリア人男性も日本滞在中、ある日本文化に心を奪われ、帰国後も日常に取り入れているそうです。いったい、どんなものに魅了されたのでしょうか。
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大学の交流プログラムで鹿児島へ
イタリアのフィレンツェから日本を訪れた、フィリッポ・モニさん。2023年2月から1か月、同年11月から1か月半の合わせて約2か月半、日本に滞在しました。
日本へ来たきっかけは、大学間の交流プログラムでした。フィリッポさんはフィレンツェの大学で建築を学んでいて、卒業論文の指導教授が日本とつながりがあったことから、フィレンツェの大学と鹿児島の大学が提携した交流プログラムに参加することになったそうです。
「失われつつある、歴史的な建造物の保存などに興味があります」というフィリッポさん。日本では、旅行も兼ねた実践的な学習を体験し「1週間のワークショップをして、鹿児島の公園を設計しました」と振り返ります。
建築という視点から日本の文化に触れたフィリッポさんでしたが、滞在中に予想外の出合いがありました。
コーヒーではなく、お茶に魅了された理由
イタリアといえば、エスプレッソをはじめとするコーヒー文化で知られますが、フィリッポさんは少し違うようです。滞在中、彼が心を奪われたのは日本のお茶でした。
「僕はコーヒーが好きではないので、お茶が好きで、今も飲んでいます。10種類のお茶を買ってきて飲んでいます」
日本のお茶は、緑茶ひとつとっても煎茶、玉露、ほうじ茶、玄米茶など多くの種類があります。製法や発酵度合いによって味わいや香りが大きく異なり、それぞれに個性があるのが特徴です。繊細な甘み、さわやかな渋み、香ばしさ。一杯のお茶の中に、日本人が大切にしてきた季節感や、丁寧な暮らしの精神が息づいています。
「日本で、お茶を作っているところも見学しました」というフィリッポさん。お茶への興味はさらに深まったようで、帰国時にはさまざまな種類のお茶を買い込みました。今でも、お茶は生活に欠かせないものになっているようです。
「残念ながら、新鮮で高級な緑茶はもうなくなってしまいました。今残っているのは二番茶だったと思います……。でも、それでもとてもおいしいです。どれが一番好きかはわかりません。そのときの気分によりますね」
近年、訪日外国人の間では、日本茶への関心が高まっています。とくに抹茶スイーツは大人気。苦味の中にも甘味を感じられる、日本ならではの独特な味わいが世界的にも評価されています。
フィリッポさんにとっても、日本のお茶は、単なる飲み物以上の意味を持つものとなったようです。一杯のお茶に込められた日本人の美意識や、季節を感じる繊細さ。それらを日常に取り入れることで、遠く離れたイタリアでも、日本とのつながりを感じられるのかもしれませんね。
(Hint-Pot編集部)
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