ドイツのメルツ首相(写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 ドイツ経済が3年連続でマイナス成長となる可能性が高まっている。

 ドイツのライヒェ経済相は10月8日「ドイツ経済は2019年以降、足踏み状態だ」と危機感を露わにした。

 ドイツ経済は昨年まで2年連続でマイナス成長に陥っている。ドイツ政府は秋の経済見通しで「今年の実質成長率は0.2%増」と4月時点のゼロ%から小幅に上方修正したが、達成できる見込みは低いと言わざるを得ない。

 ドイツの8月の鉱工業生産指数は前月比4.3%減少し、ロシアのウクライナ侵攻開始直後の2022年3月以来、3年超ぶりの大幅な落ち込みとなった。

 ドイツの8月の輸出も市場予想(0.3%増)に反して前月比0.5%減少した。トランプ関税が災いして対米輸出は前月比2.5%、前年比20.1%減少した。ドイツ卸売・貿易業連合会は「今年のドイツの輸出は前年比2.5%減少する」とみている。

 ドイツの企業倒産件数は増加する一方だ。ドイツ政府によれば、今年上半期に地方裁判所に登録されたドイツ企業の倒産件数は前年比12.2%増の1万2009件だった。

 8月の失業者数は10年ぶりに300万人の大台を超えた。

 8月の小売売上高は前月比0.2%減少し、市場予想(0.6%増)を大きく下回った。

 ドイツ経済は第2四半期に続き第3四半期も縮小する可能性が高い。中でも深刻なのが自動車産業だ。8月の生産は前月比18.5%減だった。

 工場の年次休業や生産ラインの切り替えが影響したとされているが、三重苦とも言える構造的な要因に直面しているのは明白だ。

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