ベッセント米財務長官は15日、中国が発表したレアアース(希土類)輸出規制の先送りを条件に、高水準の対中関税について適用を長期間停止することを提案した。

  米中両国は今年、最高で145%に上る高関税を90日間適用停止とすることで合意しており、次回の期限は11月に迫っている。トランプ政権は中国のレアアース輸出規制強化の阻止を交渉の最優先課題に据えており、中国に対して規制撤回の見返りをちらつかせる一方、応じなかった場合の厳しい制裁措置を警告して圧力をかけている。

Key Speakers At The Federal Reserve Board Community Bank Conference

ベッセント財務長官

Photographer: Eric Lee/Bloomberg

  ベッセント長官は「見返りとして長期の適用停止は可能か? おそらく可能だろう。だが、それは今後数週間の協議次第だ」と、ワシントンで開いた記者会見で述べた。

  また、グリア通商代表部(USTR)代表は、中国のレアアース規制が実際に実行できるか懐疑的な見方を示した。規制が発動されれば、「微量のレアアースを含むさまざまな消費財の貿易が途絶えかねない」と指摘。その上で「その規模と範囲は想像を絶しており、実行不可能だ」と主張した。

  ベッセント長官の発言後、クリティカル・メタルズやUSAレア・アース、MPマテリアルズなど、米上場のレアアース関連株は下落した。

記者会見するベッセント氏(動画)

Source: Bloomberg

協調対応

  ベッセント氏は中国のレアアース規制強化を巡り、複数の同盟国およびパートナー国が協調して対応に乗り出す考えを表明した。

  「われわれはこの問題に対して十分かつ組織的な対応を取る。中国の官僚が世界全体のサプライチェーンや製造プロセスを管理することはできないからだ」と述べた。

  今週ワシントンで開催の国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会に「私のカウンターパート(各国の財務当局者)が一堂に会している」と同氏は指摘し、「欧州の同盟国やオーストラリア、カナダ、インド、アジアの民主主義諸国と協議するつもりだ」と話した。

  中国政府は先週、一部のレアアースを含む製品や関連技術に関する新たな規制を発表。中国産レアアースが使用された製品を輸出する外国企業は中国政府から輸出ライセンスを取得する必要があるとしている。

  これに反発し、トランプ大統領は11月1日から中国からの輸入品に100%の追加関税を課すと表明。習近平国家主席との首脳会談を中止する可能性も示唆した。14日には、中国からの食用油輸入停止を検討していると明らかにした。

  ベッセント氏はこの日、現時点での認識として「トランプ氏は今月下旬、韓国での習主席との会談に出席する意向だ」と発言。その上で、自身がトランプ氏に先立ってアジアを訪問し、中国の何立峰副首相と会談する可能性が高いとの見方を示した。

アジア歴訪

  ベッセント長官は、トランプ氏のアジア歴訪中に通商関連で複数の発表が行われるとの見通しを示した。トランプ氏はマレーシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に出席した後、日本とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地である韓国を訪れる予定。

  ベッセント氏はまた、米韓の通商交渉について「最終段階にある」と述べた。最近の協議では、大型の投資プログラムの枠組みを巡る議論が中心となっているという。さらにカナダとの協議も「軌道に戻りつつある」とし、インドとも交渉で進展がみられると語った。

原題:Bessent Floats Longer Tariff Truce for China Rare Earth Delay(抜粋)

 

(ベッセント氏の発言の詳細を追加して全体を更新します)

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